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10・ゴブリンキングを換金した

「これです」


 俺は薬草の時と同じように、魔法で収納していたゴブリンキングの死体を目の前に出現させた。


「…………」


 ん? なんか思ってた反応と違うな。

 あ、もしかしたら、やっぱりアリエルの言ってたゴブリンキングというのはただの勘違いで、ただのゴブリンだったんだろうか。


 ゴブリンごときで、こんなにもったいつけやがって! ……とか。


 しかしその心配は無用だった。



「こ、これは……ゴ、ゴブリンキング!? なんでこんなもの持ってきてるんですかああああああ!」



 シエラさんはギルドに響き渡る声量で絶叫した。


 ギルドにいる他の冒険者も「なんだ、なんだ?」と俺達の方に注目が集まる。


「なんで……って、ノワールの森にいたから倒したんですが……」

「アリエルさんと二人でですか!? いくらアリエルさんがSランク冒険者でも、ゴブリンキングをこんなに倒せないですよ! それにどうやってこれだけ多くのゴブリンキングをここに!?」

「収納魔法です」

「だから……今はそういう冗談いらないですってばああああああ!」


 シエラさんが取り乱している。


「わ、私ではちょっと対応難しいんで、他の職員も呼んできますね!」


 シエラさんはそう言うが、既に他の職員も「なにごとだ!?」と俺達のところに集まってきた。

 そのせいで職員、そして冒険者の両方からジロジロと見られた。


「……やはりアリエルの見立て通り、ゴブリンキングで間違いなかったようだな」

「まだそんなこと言ってたんですか? これがゴブリンなわけありませんよ」


 アリエルはシエラさんの反応が大体予想ついていたのか、あまり表情を変えていなかった。


 シエラさん含むギルド職員が集まってきて、ゴブリンキングの死体を検査し出す。



「おいおい……これってマジでゴブリンキングじゃないのか?」

「それにしても、どうしてこれだけのゴブリンキングが? 森……ってノワールの森のことだよな? 確か報告にあったのは一体いったいだけだったはずなのに……」

「それにアリエルさん一人だけで、これだけのゴブリンキングを? えっ、あの少年も?」

「ますます訳が分からんな。収納魔法で持ってきたとか戯言たわごとを言ってるし」



 どうやらシエラさんだけではなく、他の職員も困惑しているようであった。


 声を上げているのは職員達だけではない。



「さすがアリエルさんだな! ってあの少年も?」

「あいつって確か新人冒険者だったよな?」

「し、新人!? 新人がゴブリンキングを倒せるわけないだろ! Bランク以上の冒険者が四人くらいのパーティーを組んで、やっと一体倒せるってくらいだぞ……」

「どうやらアリエルさん以来のDランクスタートだったらしい」

「しかもアリエルさんとつるんでいるなんて……あいつ、何者なのだ!?」



 ギルドにいた冒険者も、ゴブリンキングの死体を見て戸惑いを隠せない様子であった。


 やがて。


「お待たせしました……」


 疲れきった表情でシエラさんが、改めて俺達に話し出した。


「ゴブリンキング……全十二体、確認しました。確かに全てゴブリンキングで間違いないようです」

「そうですか」

「どうしてこれだけ森にゴブリンキングがいたのか……改めて調査しなければならないですね。近いうちに調査隊を形成したいと思います」

「それが良いと思います」


 隣のアリエルさんも見ると同じことを思っているのか、彼女も頷いた。


「それで……ゴブリンキング一体50万イェンで買い取らせてもらいます」

「ご、50万イェン?」


 せいぜい一体1万イェンで買い取ってもらえれば十分だと思っていたのに……破格の値段を提示されて、俺は驚きを隠せなかった。


「十二体分なので……合わせて600万イェンですね。さらに本来のゴブリンキングの依頼達成金、それに色を付けて100万イェンも追加いたします。計700万イェン。これでご納得していただけるでしょうか?」

「うーん……アリエル」


 相場も分からない俺では判断つきかねたので、アリエルに助けを求めた。


「ええ。700万イェンなら妥当なところだと思いますわよ。シエラさんは信頼出来る方ですし、問題ないと思います」

「そうか……じゃあシエラさん。700万イェンでお願い出来ますでしょうか?」

「しょ、承知いたしました!」


 その後俺はシエラさんから、袋に入れられた700万イェンを受け取った。


 袋がずっしりと重い……。

 魔王城から出て、この先やっていけるだろうか……と心配だったが、これだけあれば当面の間大丈夫そうだ。


 700万イェンといったら、四人家族がそこそこ裕福に一年は暮らせたはずである。

 四天王のヤツ等……あれだけ俺のことを「無能」と言ってたくせに……。

 俺だってやれば出来るのだ。


 とはいえ。


「ほら、これ。アリエル」

「?」


 袋を渡すと、アリエルはきょとんとした表情になった。


「なんでしょうか?」

「山分けだ。アリエルも戦ったんだしな。取り分は……そうだな。色々教えてくれたし、仲良く半々というのはどうだ?」


 いくらなんでも俺が700万イェンを総取り、というわけにはいかないだろう。


 なのでアリエルにそう提案したら、


「と、とんでもありません! わたくし、なにもしていませんから! 貰えるものだとも思っていませんでした。それはブリスが全て貰ってください!」


 と袋を俺に押し戻した。


「しかし……」

「それが当然のことだと思いますわ! これは受け取れません!」


 アリエルも強情だ。俺とアリエルの二人が袋を押しやっている形になっている。


「しかし……いくらなんでも気が引ける。だったら100万イェンだけでも受け取ってくれよ」

「わたくしの方が、気が引けるのですが……そうだ!」


 なにか良い案が閃いたのか。

 アリエルがパンと手を叩いた。


「やはりわたくしは受け取れません」

「だが……」

「代わりに……わたくしにあなたの剣術を教えてくれませんか?」

「アリエルに?」


 思いもしなかった提案に、思わず聞き返してしまう。


「はい。ゴブリンキングをあれだけ華麗に倒した剣術。是非、わたくしも()()にしたいのです。わたくしが受け取る報酬は、その授業料ということで……一つどうですか?」

「まあそれでアリエルが納得してくれるなら……」

「決まりですわね」


 アリエルがパチンと指を鳴らす。


「しかし人様に教えられるほど、立派なものじゃないぞ。教えるのも初めてだし。それでも良かったら……」

「もちろん、それで結構ですわ! ありがとうございます」


 アリエルが目を輝かせて、俺の両手に自分の手を重ねた。


 今まで俺が四天王のカミラ姉から教えてもらう立場だった。それがヤツ等と絶縁したら、いきなり教える側になるとは……。

 人生なにが起こるか分からないものだ。


 俺は嬉しそうなアリエルの顔を見ながら、頭をいた。

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