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第16話 村での事

オルフェとディーパの最初の記憶は村に初めて来た日の記憶だ。

歓迎されてない雰囲気をヒシヒシと感じてた。


長髪金髪の長身、目つきが悪くてでかい弓を持ってる方がオルフェ。

チビで黒髪おかっぱ、腰に2本の短剣を差している方がディーパ。


年は十代後半って雰囲気だが本人に聞いたことないから知らない。

あの二人が兄弟と知ったときはさすがに笑ってしまった。

似ても似つかないとはよくいったものだ。


ある日、ブラウンが大物を仕留めたって事でアンナと見に行こうって事になった。

ブラウンの店につくとすでに人だかりができていて混雑してる状態だった。

でもその混雑を通り越すほどの大きさの獲物がそこにはあった。


まさに巨大な鹿とでもいうのだろうか、日本のよりシベリアとか寒い所にいる鹿の方が近いか。

多分大きさは軽く5mを超えていた。胴周りはそこら辺の木より大きかったかもしれない。


弓が効かないから最後は殴って倒したとブラウンは言ってたけど本当かどうかはわからない。

多分嘘だ。


木を一本使って、それに鹿の両手足を縛り吊るした状態で披露されていた。



「すごいですね、救世主様。こーんな大きいベルング、わたし初めて見ました!」


「ベルング?」



はしゃぐアンナのベルングという聞きなれない言葉。

この鹿の事なんだろうな。



「ベルングはここから北へずっと行った山脈に住む頭に角を持った草食獣です。草食なのですが気性が荒く、人を見ると襲い掛かってきます。ですので大変危険なんですが、さすがブラウンさんですね。あんな大物を仕留めてくるなんて。」


「すごい角だな。あんなのが襲ってきたら.....」



ブルルッっと身震いが出た。


しばらくするとブラウンがベルングと人だかりの間に出てきて


「この獲物は俺だけじゃなくそこにいるオルフェとディーパの3人で狩ったものだ。あいつらはこんな大物初めてだろう。だから今日はこいつらのお祝いも込めて、このベルングの肉を使ってみんなで宴会としけこもうじゃねぇーか!!」



「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」



村の皆の声が一つになる。

俺は酒を持ってくる! とか 魚は任せろ! とか 料理は任せて! とか方々で一気に騒がしくなってしまった。

ほんとこの村は仲がいいな。

お金とかの付き合いじゃなくて生きるために手を取り合ってるってのが見てて伝わる。


だからこういう宴みたいなのが楽しくてしょうがないんだろうな。



ブラウンの声に合わせてオルフェとディーパが前に出てくる。

ディーパはベルングが縛られている木の部分に ピョン とジャンプし、腰の短剣でスパッと手足の拘束を切っていった。

ドスンと重量感のある音を出し、地面に落ちたベルングを今度はオルフェが腰の剣で一気に腹に突き刺し目の前で解体を始めてしまった。すぐにディーパも加わり、手際よく二人でどんどんベルングを解体していく。



「うわーすごい。さすがあの二人、あっという間に解体されていきますよ。うわっ、あのレバーの色見てください。おいしそー。」



今まさに内臓を処理しているのだが思ったよりもグロくてやばい。

苦い顔をしながら後ずさってしまった。

アンナはさすがになれているという感じでおいしそーという顔で目をキラキラさせている。


わたわたと村人たちが宴の準備をし始めて、今までベルングを取り囲んでいた人だかりは消え、いつの間にか広場には俺とアンナ、解体をしているオルフェとディーパの4人になっていた。


あっという間に足を切り離し、内臓を分け、肉を部位ごとに解体していく。

もう生き物だった時の原型はなく俺の知っている食用の "肉" が目の前に並んでいた。


血まみれのディーパが顔を服で拭いながらこちらへ近づいてきた。

拭ってはいるが血は服にもついているので全く取れていない。



「ようアンナ。いつもこぶ付きで大変だな。」



悪意のある笑顔であんなに話しかける。

いや、これは俺に言ってるのか?



「オルフェ、失礼な言葉は慎みなさい。この方は村の客人、救世主様という肩書を無しにしても失礼かと思いますよ。」



毅然と話しているが完全に起こっているアンナの声。

目つきが怖い。



「ふん。あんたらが勝手に客人ともてなしてるだけだろ。俺には関係ない。俺にとってはあんたはよそもんだ。面倒ごとを起こす前に早くでってくれよ。」


「いい加減にしなさいオルフェ。」



てかオルフェってのは俺のこと相当嫌いなのかな。

ろくに話したこともないのにえらい言われようだ。



「ちっ、うるせぇな。とりあえず俺はあんたを認めてない。俺は強いやつしか認めない。だからあんまでかい顔してんなよな。」


「オルフェ!!!!!!」


アンナの怒声が響く。

俺はアンナの急な声に ビクッ と体をビクつかせてしまった。


しかしこんな声も出せるんだな。

アンナは怒らせないようにしよう。


当のオルフェはアンナの声にひるむことなく睨み返している。

なにこれ? 俺のせい?

認めてないって言われても、俺だって自覚してないからな......



「全くうるせぇのが多いとくたびれちまうなディーパ。」


「.......」


「ちっ! つまんねぇやつだぜ。なんもしゃべりゃしねぇ。思う所がないのかって聞いてんだよ。」


「.......特に。」


「はぁ、おたくもさ聖典使いさん。救世主とかそんなふうな事、自覚ないんだろ?顔に出てるぜ。」


「へっ? えーと、まぁ......」


「救世主様!!」



またまた ビクッ と体が反応してしまった。

情けないけど怖いんだもん。


そんな俺の姿を見てオルフェが



「当の本人が自覚ないって言ってんだ。アンナ、無理に押し付けてくるんじゃねぇよ。俺たちは俺たちのやり方があんだよ。いくぞディーパ。」


「......」



オルフェは不機嫌にドスドス足を踏み鳴らしてディーパと一緒にどこかへ歩いていってしまった。



なんかわからんが怖かったな。久々に絡まれた気がする。



「まぁ急に来た俺みたいな訳の分からん奴を救世主だって崇めてることの方が異常なんだよな。

あいつらがまともだよ。」



へらへらと苦笑いしながら俺はアンナ話しかける。

気にしなくていいよ。俺そんなに気にしてないよ。

そういう意味で言った言葉だったのだが、横でアンナが グッ と唇をかみしめながら目に涙を浮かべていた。



「どうしたんだよアンナ!? あいつらに言われて怖かったのか?」



その言葉にアンナは俺の目を キッ と睨み



「あなたは自分が考えているよりもずっとすごいお方です。そこの自覚がない事は仕方ない事ですが、ああもいい様に言われたとあっては、私は......悔しいです.....」



なにも答えてあげられない。重苦しい空気が流れる。

俺の自信のない言葉がアンナを傷つけている。



「申し訳ありません。これは私の問題ですね。救世主様は必死で強くなろうと修行をなされているのに......」



何も言えないまま俺たちは家に戻りそのまま部屋を分かれた。

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