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第15話 警笛

すでに正確に位置はつかんでる。

このスピードならあと数十秒で視界に入るだろう。


後ろをついてきていないヨーハの事は気づくはずもなく俺は全速力かつ最短距離で標的に迫る。

自分が今どれほど不用意に行動してるかなんて気づく余裕もなく、俺は真っすぐに相手に向かっていった。


自分が予想した通り、それはすぐに視界に入った。

そしてすぐに後悔した。



それは言葉では形容しがたかった。

目で見た姿形の話ではなく、見える形が本当の姿じゃないって事をまざまざと実感してしまった。

それを見た時に感じ取った事は、まさに悪意の塊であり、もはや人にとっては害以外の何者でもないという事だった。


人が産まれて何百万年という歴史の中で、どんな列強な生物相手でも人の知恵は勝利を重ね、ついにはその地位を星の頂点にまで導いた。個体の力でははるかに下回っていたとしても偉大な人間の知恵はすべての強靭さを打ち砕き支配してきた。生物の支配構造より外にいる者が人間だと思っていた。だが俺自身出会ってしまったのだろう。そういったものではあらがえない、まるで必ず蛇がカエルを食べるような図式。自分たちより完全なる生物的上位に当たる生き物。人もまたその支配構造の一部に組み込まれているただの存在という事を。



本能よりもっと原始的な意思が、遺伝子レベルで俺に警笛を鳴らす。




殺される......と





まだ距離は100mはあったはずだ。

その距離から俺の体は脱力し、徐々に走るのをやめ、そして歩みを止め、ついにはその場に立ち止まってしまった。



「なんだ......あれ......?」



理解に苦しむ、あんな生物がいるなんて。

もし人間に天敵がいたとしたら、そしてあれがもしそれなのなら、それを見た時に俺がこうなることも必然なのだろうか?


もし目の端にあれが見え的ないなかったら俺は急いでその場を引き返し何もかもをかなぐり捨ててでも逃げ出していただろう。



「あれは......?」



悪意の進行方向、その先に何かが見えた。

木から木へ飛び移り必死に距離を取りながら交戦していた。



「オルフェ......ディーパ......?」



戦っているのか? なんで?

あんなものと対峙して正気でいられるものなのか?

勝てるわけがない。逃げろ! 逃げろよ!


しかし二人は逃げない。

なんで?

そして俺はある異変にも同時に気づいてしまった。


ブラウンがいない。


あいつら二人の師匠であり保護者のような存在であるブラウン。

彼らの危機にブラウンがそばにいないわけはない。

まさかどこかに隠れているのか?


俺は一気に魔力感知を広域に広げる。

いない、いない。どこにいるんだ。


どんどんと魔力を広げていく。

その時、何かが俺の魔力探知に引っかかった。


数キロ先ではあるがなぜかそれがなんであるかわかった。

あの怪物を見て命の危機が増してしまったせいだろうか?


今ではそれが何であるか、どういう状態であるかも事細かくわかってしまう。



「ブラウン......そんな......」



それを見た瞬間、俺は腹の底から大きな雄たけびを上げた。



「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」



自分を奮い立たせたかったのか、情けない自分を鼓舞したのか。

いろんな意味があったと思うんだけど、とにかく俺は吠えた。

消えたはずの炎が再び心に熱く灯っていた。

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