2話
坂口 剣斗
状態:呪い(身体能力弱化/魔的能力弱化/醜悪化)
ポイント:2000
HP:10(30)
MP:16(50)
攻撃力:4(15)
頑丈さ:3(20)
筋力 :5(15)
敏捷 :9(25)
知力 :12(32)
精神力:10(30)
・魔術書
・スキル
ステータスを表示し、長年の疑問が解消された。
(やはりそうだったのか……。あの時、呪いを…………)
あの事件のあとから成績が落ち始めていた。事件のショックが原因かと思っていた成績の低下は、それだけが原因ではなかったようだ。
(でも醜悪化……? 俺は自分で言うのもなんだが中の中、その中でも上ぐらいな顔だし、醜悪ってほどじゃないと思うけど……)
──まぁ、何らかの理由であまり効いてなかったんだろう。
そう結論づけた。
(なんであれ苦しい日々も今日で終わりだッ!)
あるアプリを選択して開く。
──回復。
(これを使えば……!)
アプリを開くと、二つの選択肢とそれにかかる必要ポイント数が表示された。
完全回復(10000)
部分回復(1000)
【現在の所有ポイントは2000です。】
完全回復というのは、部位欠損から何から何までどんな状態であっても完璧な状態にまで回復できてしまう、チートであるらしい。
部分回復も十分と言っていいほど、チートである。効果は、各項目を一つだけ完全に回復させるというものだ。だがこれはステータスが回復するだけ。傷などはふさがるが失われた手足が再び生えてくるといったことはない。
しかし今回は部分回復でいい。
(魔法を覚えて、いつかとは思っていたけど……)
これを選択したら長年の悩みを解消できるとあって色々な思いが込み上げてきて、念じることによる選択が難しくなっているようだ。
(収納した状態で操作すると、こんなデメリットがあるのか……)
深呼吸をし、気持ちを落ち着ける
【どの項目を回復いたしますか?】
坂口 剣斗
状態:呪い(身体能力弱化/魔的能力弱化/醜悪化)
ポイント:2000
HP:10(20)
MP:16(50)
攻撃力:4(15)
頑丈さ:3(20)
筋力 :5(15)
敏捷 :9(25)
知力 :10(32)
精神力:12(30)
・魔術書
・スキル
状態の項目を選ぶと、【1000ポイントを使って、「呪い」の項目を回復します。よろしいですか? はい/いいえ】と表示されたので、もちろん、はいを選択する。
(ようやくか……)
自分の体が光を発し、温かいものに包まれたような感覚に襲われた。春を彷彿とさせるぽかぽかとした温かさだ。
それにあわせて、抗えないような眠さがやってき、そこで意識を手放すこととなった。
・ ・ ・
(んん……。よく眠ったなあ……)
背伸びをしながら体を起こすと、とある違和感に気づく。
(妙に頭がスッキリしてるし、それに……体が軽い??)
体を見下ろすと、服がワンサイズ小さく──いや、体が大きくなっていた。服をめくって確認したところ、今までは贅肉がついていて太ってはいなかったもののプニプニしていたお腹は、筋肉がつき引き締まった体へと変貌を遂げていた。
そこでようやく寝る前の行動を思い出した。
(そうか、そういえば妙なスマホを拾って……)
どうやら無事に、呪いは解けたようである。
ステータスを確認しても状態は健康と示されていた。
今までの苦労──どんなに勉強していい点数を取ろうとしても全然結果が反映されなかったり──のことを考えると、とても感慨深いものがあり泣きそうになるがあることに気づく。
(今何時だろう……)
未だ眠気が取れきっておらず、ぼやけた視界を頼りに、時計に手を伸ばす。
(え!? 朝ッ!? やべっ寝坊だ、急いで学校に行かな──)
学校に行かないと。その考えに至り、問題が発生していることを察した。
(体型とか1日で変わりすぎてもはや別人じゃね!?)
醜悪化の呪いが解けた今、幾人が剣斗を、誰が剣斗だと認識できるだろうか。
(どうしようか……。魔法があればなんとかなるかもしれないけど…………)
悩んだ末に、スマホに頼ることにした。
その中でも問題を解消してくれる可能性があるアプリを見つけた。
──ストアアプリ。
このアプリのすごいところは家ですら買えてしまうところだ。
(家って……。買ったら目の前に出てくるのかな……?)
ストアのアイテムジャンルの欄を見ていくと、たくさんの道具名が羅列しており少し時間はかかったが目当てのものを発見できた。
・変身のネックレス(1000ポイント)
一つだけ、思うがままの容姿を設定し、その容姿へと変身することが出来る。なお、質量も増減する。ただし、能力は変化しない。
というものだ。
(なんとも都合のいいことに残りのポイントでピッタリだ……)
すぐさま購入すると目の前に魔法陣が出現しネックレスが魔法陣から降ってきた。
それを手で慌ててつかむ。
ネックレスをどんな角度で見ようと、どこを触ろうと、変哲なところなどありはしない。真ん中に小さな赤色の透き通った宝石があしらわれただけのネックレスにしか見えない。
(うぅむ……使い方がわからない)
そこで俺はスマホの存在を思い出した。
脳内で仮想スマホを起動し、使えそうなアプリを選択する。
アプリを開くと使い方が頭に流れ込んできた。
(これは……)
──鑑定アプリ。
カメラでうつしたものや、仮想スマホ時に目で見たものの詳細を見ることができるアプリだ。
無の魔術に似たようなものがあるが、相当高位のものだ。
このアプリはバックグラウンドで実行していればいつでも鑑定したいときに使えるらしいので常にバックグラウンドで実行しておくことにする。
・変身のネックレス(ランクA)
一つだけ、思うがままの容姿を設定し、その容姿へと変身することが出来る。なお、質量も増減する。ただし、能力は変化しない。
変身したい姿を想いながら魔力をこめて真ん中の宝石が光れば設定完了。再設定も同様に行う。設定した姿へは念じるだけで変身可能。
想像が不完全でもネックレスが使用者の想いをくみ上げ補正をかけてくれるため、使用者のイメージ通りの姿を設定することができる。
鑑定を実行した結果、こういった情報が手に入った。
「ランクA」とはアイテムの、ゲームとかで言うレアリティのようなもので、ランクが高いほど──アルファベットがAに近いほど──単純に言えば良いものということらしい。ランクA以上でSやSS、SSSがあるがあるにはあるが、それはもはや都市伝説や神話に登場する眉唾レベルの代物のようだ。
実質的な最高位アイテムの入手に薄ら寒いものを覚えた。
(こんなものがたったの一万円で……。狂っている……。なぜこんなものが道端にあったんだ。俺に全くデメリットがなくかつ、強大な力をノーリスクで手に入れれるなんて──)
──こんなのチートじゃないか。
スマホの異常性を再確認するがそんなの関係なかった。
(まぁ後でどんなリスクがあろうとも、このままの俺だったら道がなかったわけだし、喜んでチートさせていただくんだけどね──たとえこれが、悪魔との契約であろうとも)
早速、鑑定で得た情報をもとに変身することに。
前の醜かったころの姿を想像する。
(そういえば成長した本当の自分の顔確認してないけど、学校から帰ってきてからでいいか。時間ないしな)
魔力をこめると、宝石が淡く光を放った。
無事に設定できたようだ。できなくても困るが。
変身するように念じると、周りに靄が生じ徐々に視界の高さが低くなっていった。
(前みたいに重たくないし頭もすっきりしている……。本当に能力は変わらないみたいだ)
ネックレスの力に不具合がないことを確かめ、必要なものを乱暴につかむと大急ぎで家を飛び出した。