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異世界狩人物語!  作者: 隣の家の団子屋
1/2

マルイ村の専属狩人です。

少し前に書いたやつを手直したものです。以前よりも見れる作品になっていると思いますので最後まで見ていただければ幸いです。

・・・・ーーーサアァァァ...

沢の水音が心地よい。木々のざわめきと鳥の鳴き声が絶え間なく聞こえてくる。その沢の近くの茂みに人影が一つあった。彼の名前はケイ、マルイ村の狩人だ。


息を潜めてじっと獲物が来るのを待つ。右手に握っている石つぶてが汗で濡れているのがわかる。自分を自然に溶け込むように意識を持っていこうと考える。そうこうしていると一羽鳥が沢へと降り立った。その鳥は全長80センチ近くはあるだろうか。足と首が発達しており沢を泳いでいる魚を捉えようとしている。ケイはその鳥の名前を知っていた。


「(来たっ・・・!”水鳥”だっ・・!)」


一度大きく深呼吸をする。狙うはあの小さな頭。石つぶてを握る手にさらに力が入る。周りの音が全て消え、自分の心臓の音しか聞こえない。


「ッシュ...!」


短く息を吐き石つぶてを放った。まるで水鳥とケイの手元に糸でつながっているのではないかと錯覚しそうになる。放った石つぶてが水鳥の頭を撃ち抜いた。鈍い破裂音があたりに響いた。その直後に水鳥はその場に倒れ込む。


「やった!上手くいったぞ!」


ジャバジャバと水を足で切りながら自分が倒した獲物に近づき、水鳥の頭を上から覗き込む。石つぶてをぶつけた場所がうごめいており、潰れた箇所が再生しようとしていた。この世界では人間以外のすべての動物に魔素が含まれており、たった一つの例外を除いてどんな事があっても絶命しない。その例外は魔素を流し込んだ武器で絶命たらしめることだけなのだった。


ケイはなれた手付きで首を落とし水鳥の解体をする。使える部分、食べられる部分を回収し残りを廃棄する。穴を掘り不要なものを埋めたあと沢の方へ目をやるとゼラチン状のキノコが沢の中で揺れていた。これは水茸という名前なのだが実は菌類ではなく水草の一種で滋養強壮など様々な効果がある。


「丁度いいし、いくつか摘んでいこっかな」


手で摘んで袋の中に放り込んでゆく。水茸の水分が漏れ袋が湿っていくのがわかる。いくつか残しておき、その場を立ち去るのであった。


ーーーー・・・


「っふぅ...」


村の近くまで戻ってくると見知った風景が目の前に広がっていく。あたりの森と見た目は大して変わらないが安心感からか肩の力が抜けていく。日が傾き周りが茜色に染まっていく。しばらく歩いていると村の入口にたどり着いた。質素な出入り口に小さなカウンターが有りそこに初老の男性が座っているのが見える。


「・・・ん?・・おぉ!ケイいま戻ったのか!」

「ただいま!ジイちゃん!またサボって酒でも飲んでたのか?」

「いやぁ...カミさんにバレて怒られたからなぁ...しばらくは我慢するさ」


どこかバツが悪いような感じで歯切れ悪く答える。その話題をそらすように言葉を発する。


「そんなことよりケイ~。今日はうまくいったのか?」

「おう!これ見ろよ!」


満面の笑みで今日狩った水鳥を右手で持って、顔の前に突き出す。それを見て門番をしている初老の男性は目を見開きわざとらしく驚いてみせる。


「おお!すごいじゃないか!立派な獲物じゃないか!」

「へへっだろ?」

「いやぁここに来て二ヶ月だがもう大丈夫そうだな!」


そのまましばらく軽口を交わし、軽い挨拶を終えると歩みを再開し始めた。マルイ村は開拓地で狩人を募集していた。こういう開拓地には経験に乏しいもの、いわゆる狩人になりたての”新米”が開拓地での専属狩人になるのだ。狩人が経験を積み新しい場所へ移りたくなる頃には村もある程度開拓され、他の狩人も訪れるようになるという仕組みだ。ケイもいわゆる新米と言われる部類で偶然マルイ村を知り志願したのだった。


しばらく歩いていると村の中央についた。村の中央にはカウンターがあり、そのとなりにはクエストボードと呼ばれるものがあり、張り紙が貼り付けられている。その張り紙には住民の仕事の依頼やギルドの納品依頼などが書かれていた。カウンターの周りにはテーブルが置かれているがケイはそれが使われているところを見たことがなかった。さらにはクエストボードやカウンターの上に屋根がついているだけでほぼ雨ざらしのような状態だった。ここがマルイ村のギルドだ。あたりを見渡しているとカウンター越しから話しかけられる。


「ケイさん!おかえりなさい!無事だったんですね!」

「ただいまメイルさん」


彼女はメイル。ギルド職員で開拓地に派遣されてここにやってきたらしい。最近では親しくなって愚痴をよく聞かされるようになったが都市から開拓地に移った等の愚痴はない。気を使っているのかそれとも開拓地に不満を持っていないかはわからないが頼れる人だとケイは思っていた。


「今日は水鳥の納品に来たんだけど・・・」

「はい。お預かりしますね。えぇっと・・・」

しばらく水鳥を様々な角度から見てチェックを済ませてから口を開いた。

「とても丁寧に解体していただいてありがとうございます!くちばしや爪はこちらで買取するとして肝はいかがされますか?」

「肝は持って帰ろうかな?あとはお願いします。」

「はいかしこまりました!・・・っはぁ・・」


メイルが大きなため息をつく。メイルが愚痴をこぼす時は決まって大きな溜息をつくのだ。


「ケイさんは狩人になったばかりなのに堅実にやってくれてこっちはほんとに助かってるんですよ?」

「は、はぁ...」


このあとの愚痴はやれ新米のくせに大型動物を狩りに行きたがるだとか、ギルド職員は狩人に過干渉ができないからクエスト受注は止められないだとか、クエスト失敗したらギルド側の不手際だと文句をつけられるだとかの内容だった。


「聞いてます?ケイさん?」

「は、はい。(これは過干渉にならないのだろうか...?)」


喉から出かかった言葉を飲み込む。


「それよりもそろそろクエストを受注されてはどうでしょう?大分このあたりにも慣れてきたでしょうし。」


ケイはここ二ヶ月クエストを受けず地形把握に努めていた。その日に取れたものを売るその日暮らし。というのも訳があり、クエストを失敗すると違約金が発生してしまう。これが馬鹿にできない。なので確実にクエストが完了できるように今まで受けてこなかった。だが今ではこのあたりの地形にも大分詳しくなった。そろそろ専属狩人としてクエストを受けるべきだろう。


「わかりました。明日クエストを受けたいと思います。」

「ホントですか!?がんばってくださいね!」


ギルド職員は過干渉しないということを忘れているような元気な言葉使いにクスッときつつ水鳥の買取金を受け取り帰路につくのであった。

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