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いつもの様に授業を受け、今は4時間目の授業の最中である。


ちなみに、4時間目の授業は五十嵐先生が担当の英語の授業で、いつも授業中に寝ているような人も、この時ばかりは先生の言葉を一言も聞き逃さんと熱心に授業に取り組んでいて、改めて先生の人気の高さを感じた。


そして、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生は授業をキリのいいところで止め、

授業を終了する。


それと同時に先生の周りには質問のある生徒が集まり、先生は質問に丁寧に答え、その他の生徒は教科書などを机または机の横にかけてあるカバンになおし、机の上に教科書の代わりに弁当を広げ、近くの席の友達と他愛もない話に花を咲かせて束の間の休息を楽しんでいた。


もちろん俺も例外ではなく、自分の席で弁当を広げ、翔太が部活の仲間と食べているので、一人で昼食を取ろうとしていると、一人の女子生徒が近づいてきた。


「ねぇ、よかったら一緒に食べない?」


「えっ.....えーっとー...」


玲奈だった。


今までの人生の中で一度もなかったであろう女子からの、しかもクラス1の美少女からの急なお誘いに戸惑っていると、俺が玲奈に昼食に誘われたことが気にくわなかったのか、石田がちょっかいをかけにきた。


「おいおい橘さん、そんな根暗な奴よりも俺達と一緒に食べようぜ」


「そんな言い方ないよ、私は三上君と『ガタン!ガタン!ドンドンドン!』」


そこまで言ったところで玲奈の声は教室の前方から聞こえる大きな音に遮られた。


それは突然のことだった。


昼食を食べ終え、他クラスの友達に会いに行こうとしたのか、廊下に出ようとした生徒がいつまでたっても開かないドアにイライラしたのか、ドアを無理矢理こじ開けようとしたり、強く叩いたりしていた。


「なんだこれ、鍵もかかっていねーのにドアがあかねぇ、ってかビクともしねぇぞ!どうなってんだよこれ!」


その生徒の発言にクラス一部が少しざわつく。


「開かねえ筈がねぇだろ、何言ってんだよ。ちょっと変わってみろ」


と言いながら石田がドアを開けようとドアに手をかける。

石田はああ見えてもバスケ部で、クラスの中でもトップクラスに体格が良いので、特に心配は無いと思っていた。だが


「こんなのすぐに....ってマジでビクともしねーじゃん!どうなんってんだよ!」


今度はクラスのほぼ全員がざわつき始め、さらに追い討ちをかけるかのように教室の床にいくつかの円とこの世界のどの文字とも違うものが一緒になった、魔法陣の様なものが描かれていく。


「うわぁぁ!なんだこれぇ!」


ひとりでに描かれる魔法陣を見て、だんだんとパニックになっていくクラスメイト。

このままではいけないと思ったのか、先生がクラスメイトを落ち着かせるために


「みなさん落ち着いて下さい!今外部と連絡を取りますから!」


そう言って先生は職員用の携帯を取り出し他のクラスの担任に電話をかける、が


「どうして?どうして電話が繋がらない!」


「嘘だろ、電話が繋がらないって」


「つまり、俺たちはここからでられないってことなのか!」


「早くここから出して!」


などと、先生の声にクラス達はとうとうあれこれと騒ぎ出す


それを収めるために拓也が


「みんな大丈夫だ、落ち着いてくれ!まだ何か出来るかもしれないから冷静になって話を聞いてくれ!」


などと声をかけるが、その声は、教室の床に描かれた巨大な魔法陣の発する強い光に驚いた生徒達の悲鳴によってかき消され、クラスメイトの耳に届くことは無く、俺達は気を失った。

そうして、生徒30人と教師1人がこの世界から消え、別の世界へと送られた。


教室には、誰もおらず、ただ机や椅子など

そして、生徒の荷物だけを残して、

人だけが消えていた。


後にこの事が、高校生集団失踪事件として日本中を騒がせたことを彼等は知る由もない。








〈Side???〉


「ああ、とうとうしてしまいおったか....」


その人物は辺り一面が真っ黒な空間にたたずみながら、虚空に浮かぶ、ある世界の映像を眺め、なにかを悲しむかのように呟く。


ひとつ違和感をあげるとすれば、その空間には、本来存在するはずの地面も壁も地平線すら見えないという点だろう。


「あの子も含まれているとは、ますます嫌な予感しかしないのぉ。それに、あの世界は奴の管轄下.....気づかれるかもしれんが少し干渉しなければならんか.....」


そう言ってその人物は、手に神々しい光を纏わせると、先程見ていた映像とは異なる映像虚空に現れた。


「不本意じゃが、あの子が奴の世界で十分な加護を受けられる気がせんからのぉ。仕方がない、か」


その人物は未だ神々しく輝く手を、新たに呼び出した映像にかざした。


「このままいけば、間違いなくアレが起こる。ならばそこに隠しておこう。あの子ならば必ず見つけるはずじゃ」


手から輝きが消えると、その人物は映像を消した。


そして小さく、「すまんのぉ....」と呟いた。


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