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幻想郷 ~泰平録~  作者: ザ・ディル
妖夢and咲夜の奔走録
4/19

4話 奇怪


 向かったある場所とは八百屋だ。

 

 咲夜は、八百屋を経営している人に足早に近づく。

 その八百屋を経営している人は四十路を越えたような容姿、いわゆるおっさんと呼ばれる部類の容姿だ。

 

 「いらっしゃい! お客さん、今日は何を買いに来たんですか?」

 

 商売だから当然、ものを売る。

 ここは八百屋だから果物や野菜など新鮮な食べ物が置かれていた。

 

 咲夜は躊躇いなく口を開き、

 

 「全部よ」

 

 「へっ……? 全部? それは果物か何かを一箱買うのか?」

 

 戸惑い。何か勘違いをしているのではないかと錯覚を起こすほどだ。だが、

 

 「そのままの意味よ。貴方が売っている商品、すべてを頂戴。値切りも何もしないし、お金はすでに用意してあるわ」

 

 そして差し出したものは、インゴット()だった。それも大量の金を一瞬で『無』から、否、『咲夜の空間』から取り出した。

 『咲夜の空間』は自身のみが繋げることが可能な次元だ。そこには大量の道具、財産などが収納されている。咲夜はそこからインゴットを複数取り出していたのだ。

 

 

 「これを換金でもすればお釣りさえ返ってくる金額のはずよ」

 

 「確かに……それはそうだが……しかし……」

 

 いきなり商品がなくなるということははっきり言って異常。

 さらにお金ではなくインゴット()、それも今いきなり手元に出された。はっきり言って、それが本当にインゴットなのか確信を得られないのだ。

 

 「これは本物よ。それ以上疑うならさらに貴方を苦しめることにするけど……」

 

 「俺を……苦しめる……だと……?」

 

 客人からいきなりそう言われれば戸惑う。それは当然咲夜もそれは分かっている。

 妖夢は少し困った様子で、

 

 「さ、咲夜さん……あまり人を困らせては……」

 

 「今は……困らせてもやらなければならないことがあるわ、妖夢。そして……私が消えたら北西三キロメートル先まで全力で来て……」

 

 「……分かりました」

 

 咲夜の瞳は本気そのもので、ふざけた様子は一切ない。

 

 「消える? ってことは逃げるってことか? やっぱり嬢ちゃんこのインゴットは偽物じゃないのか?」

 

 八百屋のおじさんは当然、それを疑問視する。

 それを分かっていたかのように、咲夜はすぐにおじさんの耳もとまで忍びよって、おじさんにしか聞こえない程度で話す。

 

 「貴方は……八百屋の奥にある居間に住んでいるわよね? それも家族で。そしてそこに貴方のへそくりがある、違う?」

 

 「――!?」

 

 「驚かなくてもいいわ。それがばらされたくなければ私の言うとおりにしなさい。本当にあの金塊は本物なのだから」

 

 もはや恐喝だ。

 

 咲夜は次元を操ったときに人魂がついた場所と、その回りを確認した。そして八百屋の奥にある居間に、へそくりが隠されていたことを知った。

 

 おじさんの鼓動は速まる。

 無理もない。

 へそくりの額が異常なのだ。咲夜の見立てでは軽く1000万は下らない額があったのだから。

 

 「…………分かった、信用する……。全部持っていくといい」

 

 男は呆然していた。すべてを見透かされ、相手はエスパーかなにかと勘違いしなければ今起こっていることは理解できない。

 

 「じゃあ遠慮なく貰っていくわね。ただし、最初はリンゴを一つしか貰わないけれどね」

 

 そうしてリンゴを手に持って、時を止めて、北西三キロメートルまで先に移動する。

 

 そしてリンゴを置く。

 咲夜は一呼吸し、

 

 「出てきなさい! スペルカード発動! メイド秘技『殺人ドール』!」

 

 時は正常化し、無数のナイフが現れて、すべてがリンゴに向けて放たれる。

 当然、リンゴは避けることがない。そう、普通のリンゴであれば……。

 

 「……!」

 

 しかしリンゴは避ける。サイコキネシスで物が移動するように、咲夜の攻撃を避けたのだ。

 

 「いや、まさかまさか、見破るなんて大したやつだなぁ」

 

 「やっぱり貴方が人魂ね」

 

 「正解。……にしてもなんでバレた? どんな手品を使った?」

 

 「手品……そうね、私はタネなし手品を使ったわ」

 

 「そりゃそうか、この世に手品なんて存在してるかなんて分かんねぇもんな」

 

 リンゴが喋っていた。

 否、リンゴを支配していた人魂が喋ったのだ。

 

 リンゴを媒介として、人魂は変化する。変化したその姿に咲夜は、

 

 「嘘……!?」

 

 驚く。なぜなら、人魂はすでに人間になっていたからだ。

 

 刀を二本所持し、まるで戦国時代の格好をした侍が咲夜の目の前に現れていた。

 

 「どれ、一つ稽古でもつけてやっか、えーと……咲夜、だっけか? よろしくな」

 

 男は既に刀を引き抜いて、戦闘体制に入っていた。

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