2話 事情説明
半霊なのに霊が苦手。それは同族嫌悪ならぬ同族畏怖。
それが咲夜にため息を溢させる起因となるが、切り替えて咲夜は聞き出す。
「それで、その霊はどこに行ったのかしら?」
「あっ……あっちの方です」
妖夢が指をさし示す場所、そこは住民が多く密集している八百屋などを経営しているところが多い場所だ。
しかし……、
「あっちの方なら他の人たちも見ているはずなのに、何故誰も霊に驚いた素振りさえ見せていないのかしら?」
妖夢への問いかけか、それとも一人事か、それほどの声の大きさで呟く。
「もしかしたら、私が半霊というのが関わっているのかもしれませんね……。ですが……霊をほっといた場合はマズイですね。あれは憑依体質の人魂でしたし……」
そんな新たな情報――霊が人魂だもいうことを喋る妖夢。それに咲夜は嘆息した。
「その情報を早くちょうだいよ……。
私たちはこれから人魂を捕獲する。それでいい?」
「はい」
「それなら、私はその用件を紅魔館の者、そして幽々子様に事情を話してこの件を解決するまで帰れない旨を伝えるから」
「……ありがとう、咲夜……」
その言葉を聞いて、咲夜は消える。
時を止めて人里を去ったのだ。最も、すぐに戻るが……。
*****
紅魔館の魔法図書館、その主であるパチュリー・ノーレッジは今日も本を読みふけっていた。そこに、
「パチュリー様」
「ひぁ!?」
突然咲夜が現れ、それに驚き椅子から転びそうになるが、なんとか転ばずにバランスをとった。
「突然驚かせてしまい申し訳ございませんパチュリー様」
「いいわよ。それより用件は? 貴方が扉さえノックしないときは火急のときぐらい。早く用件を言いなさい」
パチュリーの瞳は真剣な眼差しで物事を聞ける体勢になっている。先ほどの慌てようとは全く違う。そこに真剣さが無くしてなんだというのか。
だから咲夜は今からの内容を話すことができるのだ。
「……感謝します。実は今現在人里にて霊が――人魂が紛れ込んでいると妖夢が言っておりました。ですので早急に対処するために夕食を美鈴、もしくはパチュリー様にお願いしたいのです。可能でしょうか?」
「もちろんよ……。しかし人魂ね……。妖夢の半霊ではないならコントロールは効かないわよね。早く行きなさい。夕食の支度をして待っててあげるわ」
「……ありがとうございます、パチュリー様」
一礼し、その瞬間再び時を止めて移動する。
今度は幽々子のいる白玉楼だ。
*****
「幽々子様。少しお時間をいただいてもいいでしょうか?」
咲夜は一瞬もせずに白玉楼に着き、そう尋ねた。
「あらー、珍しいお客さんね。妖夢と遊びたいなら申し訳ないけど今はいないわよ」
「存じております。妖夢は現在、人里にて霊を確認したようです。そして、今現在は妖夢しか見えない……。急いでこの件を解決したいので夕食は先ほど私が紅魔館から持ってきた非常食で凌いでください。もしくは妖夢が先に買った食材で何か作ってください」
咲夜は紅魔館の食料倉庫から持ってきた非常食と、妖夢があらかじめ買った食料を置いていく。
しかし、幽々子は少し難色を示しながら話す。
「あらあら、私は何かを作るのが下手だからあの子を待つしかないわね」
幽々子が寛容であったことに感謝して咲夜はすぐさま、
「ありがとうございます。では――」
「――ところでその霊は人魂…………あら、もう行っちゃったわね……」
幽々子は少し困っているような声で、そう言った。