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幻想郷 ~泰平録~  作者: ザ・ディル
非日常の日常
18/19

3話 アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス


 朝7時。

 アリス・マーガトロイドの家。

 今、そこにいるのはアリス・マーガトロイドのみ。

 ――二人のアリス・マーガトロイドのみ。

 鏡から飛び出てきたアリスと、幻想郷の――魔法使いのアリス。この二人が、アリスの家に存在していた。

 

「もう一人の……私……!?」

 

 異常。異質。異色。異、異、異。

 埒外。おかしい。常識を超え、非常識をも超えてしまうかのような、理論でさえ語ることのできない異常が、アリスの目の前に現れた。

 目の前にいたのは、もう一人のアリス。

 

「あら? そんなに驚くこと?」

 

 鏡から出てきたアリスはそう言った。全身が影色で、表情が読み取れない。

 

「鏡の中に人がいない。そんな常識は幻想郷には通じない。でしょう? アリス・マーガトロイドの偽物」

 

「なっ……、あ……貴方のほうが偽物よ……!」

 

「いやいや、いやいやいやいや、よくよく考えても見てよ、幻想郷のアリス・マーガトロイド。貴方は『魔法の国のアリス』、私は『鏡の国のアリス』。どちらが偽物なんて、一般人から聞けば、答えは明白でしょう?」

 

 魔法の国のアリスは固まる。

 魔法の国のアリスと鏡の国のアリス、どちらが本物か定義するならば、鏡の国のアリスだからだ。魔法の国のアリスよりも有名である、鏡の国のアリスのほうが、本物――魔法の国のアリスはそう思ってしまった。

 

「そうそう、その表情が欲しかったのよ。そして、自身が偽物かどうかということを、再検討した方がいいんじゃないかしら?

 といっても、もう理解しているようにも見えるけど」

 

「私は……本物の……」

 

「いやいや、違う。自覚あるわよね?

 鏡の相反対、対極――裏の逆――しかしながら、本物と偽物の区別が簡単につくように、鏡と魔法なんて相反する。その程度のことを知らないなんて、まったく、傑作よね。今の状況が把握できていないのは滑稽、驚きはするもこの状況が分からないのは愚の骨頂。

 本物だと思っていたなら、自分が本物だと思っていたなら、それくらいは知らないといけないんじゃないかしら? アリスさん?」

 

「…………」

 

 あまりの勢いに、あまりの豪胆さに、幻想郷のアリスは、自身を本物かどうか、見分けがつかなくなってきた。

 

「うんうん、だんだんと自覚してきたわね。偽物のアリスさん。可哀想で、だからこそ可愛いと思うわ。でも私の言ってることは寸分違わず本当のことなの。

 本物のアリスは私。だから、交換しよっか」

 

 鏡の鏡面部分から、腕が飛び出す。

 それも一、二本ではない。

 あまりに異常な数――千手。

 それを見た幻想郷のアリスは反撃することなく、抵抗することもなく、足を掴まれ腕を掴まれ頭を掴まれ胴体を掴まれ肩を掴まれ。

 ――鏡から出た腕は、物理現象を崩壊させる――

 瞳を掴まれ内臓を掴まれ血管を掴まれ脳を掴まれ記憶を掴まれ、そして鏡の中に囚われた(保管された)

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 霊夢たちが帰ったことを確認して、かつて鏡の国に囚われていたアリスは、幻想郷のアリスがいる場所――鏡に話しかける。

 

「ほらみて、誰も私を偽物だとは思わない。貴方はやっぱり偽物。理解したかしら?」

 

 幻想郷のアリスは答えない。

 絶望したからか?

 否、違う。

 既に、鏡の国のアリスに騙されたときから、アリスは心が死んでいた。

 泣くこともできず喚くこともできず怒ることできず、自身を韜晦(とうかい)してしまった。もはや、幻想郷のアリスはいなくなろうとしている。

 

 これこそが、鏡の国のアリスの目論み。

 幻想郷のアリスはその真意には気づかない。

 幻想郷のアリスはさきほどの状況が、自分がいなくても成り立つ場面を見て、精神がさらに削られていた。

 もう、立ち直ることはできないのだろうか?

 もう、霊夢たちと話せる機会はなくなるのだろうか?

 もう、幻想郷のアリスが笑顔を見せるときはこないのだろうか?

 もう、幻想郷のアリスは消えてしまうのだろうか?

 

 「スペルカード発動! 霊符『夢想封印』!」

 

 窓が破壊され、そこから七色の光が鏡の国のアリスを襲った。

 アリスは即断、すぐにアリスの家から飛び出した。

 

「あんたら……騙されてなかったのね。『力』を使ったはずなのに……!!」

 

 アリスの家から飛び出した鏡の国のアリスが見た相手は、霊夢と咲夜だった。

 

「私は騙された――というよりも鏡にいたアリスを見た――そのことを忘却させられただけなんだけどね。でも、咲夜が思い出させてくれたのよ」

 

「霊夢がおかしかったから、私があの時――アリスと二人きりのときの記憶を思い出させたら、案の定のようだったわ」

 

 鏡の国のアリスは驚いていた。

 

「なによそれ、チートみたいな能力ね」

 

「ええ。でも、貴方が『相手が意識したことを現実にできる』――それに近しい能力があるほうが十二分にチートよ」

 

 会話は――戯言(ざれごと)はそれで終わり。

 すぐに戦闘に移る。

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