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幻想郷 ~泰平録~  作者: ザ・ディル
紅魔館アクシデント
15/19

7話 後日談


 後日談。

 

 『あの事件』の三日後、妖夢は再び紅魔館へと赴いた。

 紅魔館の中で、妖夢は目的の場所――咲夜がいる部屋に入る。

 

 「失礼します。咲夜さん」

 

 「おっ! 妖夢がきたぜ!」

 

 「きたぜ!」などという咲夜とかけ離れた声の主は魔理沙だった。

 部屋にいたのは、魔理沙、咲夜、そして……元人間――元吸血鬼狩り吸血鬼――現人間となった、幼く紅き髪の持ち主となった名もなき人間だった。その人間が咲夜の膝の上に頭を乗せて寝ていた。

 

 「魔理沙さんもいらしてたんですね」

 

 「ああ! 本を盗もうとしたが失敗して咲夜に捕まったからな!」

 

 「はぁ、懲りないですね、魔理沙さんは……」

 

 「そうよね。そろそろ処刑して差し上げても問題ないですよね。

 火炙りの刑、ナイフ串刺しの刑……どちらがよろしいですか?」

 

 「おい! 私そこまでのことはしてないのぜ!?」

 

 咲夜の珍しい冗談を見れたところで、会話は移行する。

 

 「咲夜さん。それで、名前はまだ……」

 

 「決まってないわよ」

 

 妖夢の新たな能力によって"元の姿に戻った人間"には、未だに名前が付けられずにいた。

 

 「それにしても聞いてはいましたが、随分幼いんですね……。…………その年代で……飢餓しかけた……」

 

 それはそれは、想像しただけで恐ろしい。

 子どもにもかかわらず空腹が身体を支配し、思考が纏まらずに育ってしまった彼女。

 

 「でも、」と妖夢は話し始め、

 「おかしいですよね?

 戦闘したときは、口調的にも、身体的にも子どもとはとても思えなかったですし……」

 

 「それは貴方の能力が問題でしょうね、妖夢。多分、貴方の能力によって吸血鬼になる前の人間に戻ったのよ。

 彼女には起きているときに訊いたけれど、吸血鬼のときの記憶は無し。さらには戻ったときには死にそうだったのを妖夢は見たでしょう?」

 

 「ええ……そうですけど」

 

 あの事件を解決した直後

 彼女を人間へと戻させた直後、疲弊というレベルを超えるほど、疲弊していた。だから、部外者である妖夢たちは一度帰った。

 そして今日、体調が落ち着いたということで、紅魔館に戻ったのだ。

 

 「んで、名前どうするのぜ?」

 

 「…………」

 「…………」

 

 急な話題転換によって黙る二人。

 

 「ん? なんか可笑しいこと言ってしまったのぜ?」

 

 「いえ、そんなことないわ。

 では、改めて彼女の名前を決めましょう」

 

 「本当に私たちで決めてもいいんですよね?」

 

 「ええ、お嬢様がそれでいいと言っていたわ」

 

 「そうか。ならもう決めていいのぜ?」

 

 「当然ですわ」

 

 「決めたぜ! こいつの名前はポチって痛ぇ!?」

 

 「魔理沙。真面目に考えなさい。でないと、火炙りの刑ですわ」

 

 「悪かったぜ……」

 

 「――レイミ、というのはどうでしょう? 咲夜さん」

 

 先ほどまで黙っていた妖夢は、どうやら彼女の名前を真剣に考えて、そして決めた。

 

 「レイミ……、まぁいいでしょう。お嬢様と若干ばかり名前が被さっていますけれど、支障はないでしょうし……。

 それに――いい名前……ですわね」

 

 「……私が付けてよかったんでしょうか?」

 

 「当然。でなければ、お嬢様はそのような命令を下すことなどありませんわ」

 

 元人間――元吸血鬼――現人間である嘗ての吸血鬼狩り吸血鬼の名はレイミとなった。

 彼女はそれ以来、紅魔館で過ごすことになるのだが、それはまた別章で記録されることになろう。

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