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能力値リセット能力者の倒し方


「ぐっ……はぁ、はぁ、はぁ。」


 血だらけで足を引きずりながら逃げるリリベル。

 [収縮の勇者 ユウヤ]はゆっくり追い詰める。


「いやすっごい避けられる。当たんないなぁ。

回避性能までは下げられないんですよね。

でも近づくのはコスパ悪いしアドは取れてるから……」


 また何かをぶつくさ言ってる勇者。

 たまに首をかしげている。


 それを見ている俺は、空から落ちていた。

 光の道を抜けると、摩天楼の塔8層の上空だった。

 ステータス画面に乗り、ゆっくり降り立つ。


「よっと。おまたせリリベル。」


「タカトぉ!」


 ちょっと泣きそうな声で叫ぶリリベル。

 俺を心配してたのか?

 いや、理不尽な攻撃に泣きそうになってるだけか。


「あ、もう一人来たか。

うーんどうしよう、ちょっと長考してもいいですか?」


 何言ってるんだこいつ。

 よしわかった、乗ってやる。


「いや、長考の必要無いです。

たぶんゲームエンドまで持っていけると思います。」


「え、何? どゆこと?」


 自分の口調を真似され、動揺する勇者。


「えー、まずステータスオープンします。

フレームは『カニ』タイプを使用します。」


 俺の目の前にカニ型のステータス画面を表示。

 水平に表示する。



カニッ! カニッ!



 カニのハサミと足がぴょこぴょこ動いている。


「次にカニのハサミを軸にして、画面を追加します。」


 俺のステータス画面は自由に動かせる。

 だが、何かと一緒に動かすためのベースを指定することも出来る。

 今回はカニのハサミを追従するような形にした。

 これでカニがハサミを動かすたび、上のカニも動く。


「次もカニのハサミを軸にして、またカニのハサミを……」



カニカニカニカニッ!



 水平に展開したカニ型ステータス画面の斜め上にカニ。

 その斜め上にカニ、とつなげていく。

 これを繰り返し、俺と勇者の間くらいまで連なった。

 じっと見ていた勇者が、腕を組みながら忠告。


「いやそれカニのハサミ攻撃、俺には効かないですよ?

知ってますよね。遅延行為ですか?」



カニッ!



ザンッ!



 ――――勇者の頸が飛ぶ。



ドスン、ボタッ……



 首なしの体と、飛び上がっていた生首が地面に落ちる。

 対戦ありがとうございました。


「は? はあああ? ちょっとまって何が起こったの!?

あっけなさすぎる! 死んだの? あれ!」


 ボロボロだったはずのリリベルが起き上がる。

 大声をあげながら俺を揺さぶる。


「甲冑の中の死体も消えたから、死んだんじゃないかな。」


「どういう事、説明して!?」


「説明してわかるかなぁ。」


「なによそれ! 私にも分かるように説明して!」


「簡単に言うと……『タイミングを逃す』。」


「……は?」


 勇者のチートスキルの効果。

 "相手の能力や効果を計算した後の攻守"をゼロにする。

 これは行動が終わったタイミングで発動するスキルだ。

 攻撃した。魔法を使った。チートを使った。

 その、勇者に当たる直前に全てをゼロにしてしまう。

 攻撃力1万で百回連続攻撃した。

 当たる直前、それぞれ1万がゼロになるだけだ。


 ではここでカニさんの出番だ。

 カニ型ステータス画面は、常時ハサミを動かし続ける。

 そのハサミが軸なら、上にあるステータスも一緒に動く。

 そのカニステータスもハサミが動く。

 上のステータスが動く。

 この繰り返しだ。


 この

 『ハサミが動く→ステータス画面が動く』

 は、複数回連続で行われる。

 途切れ目が無い。

 そして全てのカニのハサミが開ききる直前。

 マジックハンドのようにステータスが勇者の首に届く。

 勇者はスキルを発動したい。

 しかしすぐ『ハサミが動く→ステータスが動く』。

 まだ"計算した後"のタイミングではない。

 タイミングではないので殺傷力ゼロにはならない。

 鋭いカニ型ステータス画面が、首を切ってしまう。

 勇者はスキルを発動するタイミングを逃し、死亡する。

 と、言う流れ。


「ごめん、全く理解できない。」


「大丈夫、俺も納得はしてないから。」


「そんなんでよく倒せると思ったわね。」


「あの黒幕創造神の性格的にね。

どうせこんなルールが世界に適用されてると思ったからね。」


「?? なによそれ。」


 リリベルの頭の上にハテナがたくさん見える。

 でもこれ以上の説明は長くなるから後にして頂きたい。

 こうして、収縮の勇者の討伐は達成された。




「それで、これからどうする?」


「それはボロボロのリリベルに聞きたい。」


「すでに満身創痍なんだけど、大した手柄もなく帰るのもねぇ。」


「いや、手柄はあるんだ。」


「え! いつの間に。」


「まあ、色々あってね。この世界にかなり詳しくなってしまった。」


「何それ! 聞きたい!」


「いいけど、単行本三巻分くらいは覚悟してね。」


「……お手柔らかに。」


 俺はリリベルと塔を下りながら、今日出会った奴の話をした。

 この機密情報を開示できるのは、この人と魔王様くらいだ。

 他の人には重たすぎる。胃もたれする。

 ま、時が来たら話すかもしれないが。


 ちなみに帰りはすんなり王都第六・貧民エリアから脱出成功。

 厳戒態勢かと思われたが、貧民エリアはセキュリティが何もない。

 貧民エリアだから復興が後回しにされていたか?

 まだ過去に行ったリリベルの王都破壊ダメージが残っていたようだ。

VS 収縮の勇者 おわり



攻守リセット能力者の倒し方:

リセットのタイミングを無くす

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