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緊急クエスト

「相変わらず、貴様の周囲は面白きことよ。」



カッ!! バジジジジジジシュゥゥゥ……



 後ろから渋い声がして振り向こうとしたが、古代竜の口から光線を放たれる。

 しかし後ろからも似たような光線が照射され、相殺される。

 あの光線とやりあえるとは、あの方しかいない。


「竜人様!!」

「マグレッド=エンド、来ていたのか!」


 俺とリリベルが後ろを振り向くと、赤い甲冑の人型竜。

 山吹色の10枚の羽根で宙に浮く、四天王[マグレッド=エンド]がいた。


「あれは我々の祖先である古代竜。

フッ……まさか古の神龍と戦えるとは夢にも思わんだ……」


 竜人が拳を握り、構える。

 すると周囲に赤いエネルギー球が発生する。

 そのタイミングで古代竜が複数本のビームを発射。

 竜人のエネルギー球からは赤いビームが出て、応戦する。



バリバリバリバリバリバリバリ!!!



 いくつものエネルギーがぶつかる音。

 眩しい。


『ええ、なんだよそいつ。強いな。

よし、やっとテューポーンの本気の戦いが見られるって訳だね!』


 ワクワクした口調で話す勇者。

 正直マジで死ぬかと思ったので助かった。

 竜人様がいればなんとかなるだろ。


「タカト……これはマズいわね。」


「え、何で?」


 リリベルが眉間にしわを寄せ説明する。


「マグレッド=エンドの攻撃属性は"火"よ。

現魔王軍最強の火属性攻撃――つまり弱点を突いても互角って事。」


「あっ……なるほどそういう事か。

確かにこんな良い相性は他に無いはずなのに……」


 まさか。

 つまりあの竜人様ですら圧されている事になる。

 マジでどうやったら倒せるのあのドラゴン。


「ステータスオープン!」


【[古の轟風魔竜 テューポーン](死)】

耐性:

火・水・土・風・聖・魔・それに準ずる全ての属性攻撃

打撃斬撃等の物理的な攻撃

竜特攻・神聖特攻・風属性特攻などの特化対象

下記におけるデバフ魔法

 毒・火傷・呪い・体力吸収などのHP下降状態

 麻痺・睡眠・石化・拘束などの行動不能状態

 混乱・心変わり・狂化・幻覚などの精神異常状態

 即死などの魂操作

ステータス強制開示

不安定生存環境

心身反応速度増減


「うーーーんモリモリ! 盛り込みすぎだよこのドラゴン!」


 確かに、考えられる耐性はすべて持ってるっぽい。

 唯一ステータス開示体制は俺のバグで何とかなってるが。

 こんなやつ、神々の戦争で神はどうやって倒したんだろう。

 しかしここで、リリベルが何かに気が付く。


「タカト、あいつは魔法の耐性だけじゃない?」


「そうだね。物理攻撃にも強いけどあらゆる魔法に耐えるみたいだ。」


「じゃあ薬品とか使って弱らせるのはどうかな!」


 なるほど!

 魔法での弱体耐性があるだけで、薬は効く。

 ってか酒で眠らせて討伐なんてのも神話の世界ではよくある話だ。


「……あ、でも有効な量の毒薬、今から用意できる?」


「うーんシロ団長なら……無理か。」


 こうして話をしてる間も、竜人と古代竜がバチバチにやりあってる。

 古代竜は風の刃みたいな技まで出し、こっちまで届いている。

 竜人は"炎竜モード"になり高速移動、隙を見て攻撃を打ち込む。

 この炎竜モードは炎の龍(シェンロン的な形)になるモード。

 超高速移動が出来るので、リリベルと同様単独でワープが出来る。


「ん? 魔法以外の手で弱体化……」


「どうしたのタカト。何か閃いた? 何でも手伝うよ!」


 魔法以外を使ってのデバフ。

 今回の敵はずっとゲーム的なノリで戦っている。

 ならばゲーム的な対抗策が……やってみる価値はある。


「リリベル。残りの四天王を呼べる?」


「うーーーんさすがの私も魔力的にギリね。

あと呼びかけに答えてくれるかにもよるわ。お風呂とか任務中とか。」


 なんでも手伝うって言ったじゃん。

 まあそうだよね。四天王クラスを召喚するとなると魔力がキツイか。

 それでもなんとかお願いしてみた。

 古代最強戦力には、魔王軍最高戦力で応戦だ。



◆◆◆



「――――って感じで集中的に攻撃してほしいんです。

どうでしょう、行けそうですか?」


 古代竜の激戦地から少し離れた地上。

 俺の目の前には爬虫類型忍者と高身長の全身黒甲冑がいる。

 一人は四天王の[辞世の忍(ラストニンジャ) カゲヌイ]。

 もう一人も四天王[暗黒聖騎士(セイントネスナイト) ジオウ]だ。


「拙者は初めてでござるよ。正面からあんな巨大なものと戦うのは。」


 忍者が腕を組みながら古代竜を見上げる。


「別に倒してしまっても構わないんだろ? 腕が鳴るぜ。」


 甲冑の男が拳と拳をぶつける。

 ジオウさんそのセリフはあんま良くない……

 ちなみにリリベルは魔力切れでぐったりしている。


「ありがとうございます。補助は自分がやります。

では……ひと狩り行こうぜ!」


 なんとなく右拳を上げる俺。

 つられて他の四天王も手を挙げる。


 古代竜の近くまでは俺のステータス画面に乗って移動。

 そこからは古代竜目掛けて、二人とも飛び立つ。


「うおおおおお!! らあっ!!!」



ガイイイイイイン!!



 ジオウが古代竜の頭部に切りかかる。

 しかし分厚い鱗の前では傷をつけることは出来ず。

 大剣から響く音だけが聞こえる。


「ハッ! ハァッ!!」



カカカン! ドドドオオオオオン!!



 カゲヌイが起爆札を付けたクナイを古代竜の頭部に投げる。

 刺さりはしなかったものの、クナイから複数回爆発が起こる。


『お? なんだ新しい挑戦者かい?

いいよいいよ頑張って挑戦してくれ。無駄な攻撃だけどね。』


 確かに、全く効いていない。

 だが、これでいい。


「タカトォ!」


「はい!」


 ジオウの声に合わせて、俺が足場を用意。

 それを踏み台にしてまた古代竜に切りかかる。


「うおおおお!! オラオラオラああああ!!」


 空中で何度も切りかかるジオウ。

 しかしただ壁を殴ってるようになってしまう。

 古代竜が顔を動かすと、ジオウは吹き飛ばされる。


「近接攻撃の邪魔にならないようにしなくてはな。

まるで餅つきのようでござる。《水遁:濁流圧殺の術》!!」


 カゲヌイが手で印を結ぶと、水の球が高速発射される。

 水の球は鈍い音を立てて古代竜の頭にヒット。

 古代竜は水属性耐性があるが、水圧で物理攻撃のようになっている。


「グウウウアアアア!!!」


 古代竜が吼える。

 そして空気の刃のようなものが大量にばら撒かれた。


「おっと危ないでござる。」

「隙間だらけの攻撃なんざ効かねーぜ!」


 軽々と避ける二人。

 しかし避けた先は古代竜の口の前だった。

 口が赤く光り――


「覇ァッ!!!」


 そこに竜人が割り込む。

 古代竜と竜人のエネルギーはぶつかり、相殺され爆発する。


「ほう……おぬしらもこの祭りに来ていたか。」


 爆発から後退しながら竜人が話しかけた。

 爆発で後ろに飛ばされながら答える二人。


「祭り……でござるか。確かに四天王が揃うなど祭りと言えますな。」

「ああ! 楽しい楽しい殺し合い祭りだ!」


 そう言う二人の背後にステータス画面の壁を用意。

 二人は壁を蹴ってまた古代竜に立ち向かう。


「貴様が呼んだのか?」


 竜人様が話しかけてきた。


「はい、すみません邪魔でしたか?

でもとある作戦のためにご協力をお願いしたかったんです。」


「ほう。あの巨竜を倒す策があると?」


「はい。あります。とにかく頭を狙うんです(・・・・・・・・)!」


「ふむ……まあ良い。好きにしろ。」


 そう言いながら竜人は炎龍になり、古代竜に近づいていく。

 先ほどまではビームや風の刃で近づけなかった。

 しかしジオウとカゲヌイの攻撃に気を取られ、接近出来るようになる。


「オオオオ!!」



キュイン! キュイン! ドドドォン!!



『うわ、危ないなぁ。本体に当ててくるとは。

まあ傷一つ付いてないんだけどね。』


 竜人の攻撃が古代竜に当たり始める。

 ただ無傷なのは変わらず。

 せっかくだから勇者に当たればよかったのに。


「オラアアアアア!!」



ドゴオオォォン!!



「ヤッ! セイッ!!」



カカカドドドドォォォォン!!



 それぞれのやり方で、頭部を狙う四天王。

 しかし全く動じない古代竜。

 やはり無駄な攻撃なのか。

 いや、もう少し粘ろう。


「私を入れないで何が四天王勢ぞろいよ……」


 リリベルがフラフラとこちらへ飛んできた。


「大丈夫なのか? リリベル。」


「ええ。もう大型魔法くらいは余裕よ。見てなさい。」


 そういうといつもの七色の光球を……

 いや違う。今回は緑色と赤色の球だ。


「母なる大地よ。空を蹂躙する巨悪に薫陶を!

その憤怒を解き放て! 《ガイアヴォルケイノ》!!」



ゴゴゴゴゴドバァァァァアア!!



 地震が起こり、何もない地面がいきなり隆起。

 軽い山ができ、さらに勢いよくマグマが噴火する。

 直径百メートルはある噴火口から発射されるマグマと岩石。

 それはちょうど古代竜の頭の下に位置した。



ドッガァァァァン!!



「グゥゥゥゥ!!!」


 古代竜の顎にヒット。

 さすがの古代竜も頭が上に動く。


「今だ! タカト! カゲヌイ!」

「はい!」

「応ッ!」


 ジオウの合図で、俺は古代竜の頭上に水平にステータス画面を配置。

 カゲヌイがその下に大量の起爆札を投げる。

 ステータス画面の直下、起爆札のところにジオウが飛ぶ。



ドゴオオォォォォォッ!!



「――ォォォォォオオオオオ!!!」


 ステータス画面の下側を蹴り、勢いを付けて落下。

 さらに起爆札の爆発の勢いも上乗せ。



ガイイイイィィィィン!!



「グォァァァ……」


 頭上からジオウが突進し、ぶち当たる。

 古代竜の頭が今度は下に動く。


「良かろう人間よ。こうするのだな。」


 下方に動いた古代竜の頭の横に、いつのまにか竜人がいた。

 そして。


「覇ァッ!!」



……ガォンッ!!



 竜人の短い正拳突き。

 一瞬古代竜と竜人の動きが止まる。

 しかし轟音と衝撃波が後から訪れ、古代竜の頭が左へと動いた。


『お~、すごい連携攻撃だね。

耐性の上からでも少しずつダメージは通ってるんじゃないかな?

これを続けていけばもしかしたら勝てるかもしれないよ。

でもね。まだまだなんだよなぁ。

こんなんじゃ古代竜テューポーンは倒れな――――』


 そう勇者が説明している時だった。

 古代竜の頭が急に回りだす。

 そして……



ズドォォォオオオオン!!!



 古代竜が地面に墜ちる。

 墜ちた衝撃で大地が揺れ、砂塵が舞い上がる。

 俺と四天王は空中に退避した。


『――――は? え? なに!?

何が起こった!? どうして倒れてるんだよ!

なんだこの……いつからそこにいた? この黄色い鳥達は!』


 古代竜の頭の上を、円を描くようにして飛び回る謎の鳥。

 なんかピヨピヨ聞こえてくる。

 作戦はうまくいった。

 じゃあ最後はこれで!


「ステータス! オープーーーン! からのオラぁぁぁ!!」



ズバンッ!!



 俺は超ロングステータス画面を頭上に表示。

 今度こそ動かない古代竜をぶった切った。

 古代竜は、今までの耐性は何だったのかと思うくらい真っ二つ。

 地響きと共に死体は土へと変化し、崩れていった。

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