表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/58

セレクトBB


「――――は? 何だこいつぅぅーー!!」


 はっ!

 男の声で意識を取り戻した。

 急げ。俺の体動け。


 ここはさっきまでいた、チート勇者の無限収納空間ではない。

 ってことは付属品作戦は成功したのか?

 まずは周囲の状況確認だ。


「ステータスオープン!!」


「きゃっ!」


 ベクストの服を切らせてもらう。

 彼女の前がはだけるが、見たら判断鈍りそうなので見ないようにする。

 後ろを振り返ると、数人の半裸おじさんと女性たちがいた。


「おまえは――」


 いた。

 勇者だ。

 顔はそこまで覚えていないが、貴族の中で明らかに整ってない顔立ちだ。

 くそ、まだ服を着ている。無防備ではなかったか。

 他の男性数人が手を前に掲げる。魔法を撃つ準備か?

 この世界の住人は半裸でも攻撃手段を持っていてズルい。


「ステータス!!!」


 ステータス画面の板を複数展開し、男性陣の後頭部にぶつける。

 男性陣は気を失った。


「き……きゃあああああ!!!」


 部屋の隅に逃げるエルフの女性たち。

 ベクストも俺から逃げて、奴の近くに行った。

 今はあいつの奴隷になっているからだろうがナイス判断。


「全員殺してやる!!」


 俺はそんなことを口走ってみた。

 恐怖で泣いている子もいる。


「おいおいやめてくれよ君。」



シュゥゥゥゥ……



 部屋の隅にいた女性たちが一斉にいなくなる。

 残ったのは声の主、一人だけ。

 よし、巻き添えさせないよう計画通り。


「いったいどんな手を使ったんだ?

俺のスキル《金銀結界紋》から出てきて俺の支配を受けないなんて。」


 さっきステータス板で頭を殴ったはずだが、案の定当たっていない。

 俺のステータス板をスキルで「収納」してしまったのだろう。


「さあね。お前のその能力が、万能じゃあないって事だろ。」


 余裕のある返答をしてみたが、俺の中では緊張が走る。

 ステータスを見たところ、彼の収納スキルの射程範囲は1メートル程。

 貴族の乱れる的なパーティ部屋は広いが、ベッドも多いため距離を取るのも簡単じゃない。


「あ、そう。じゃあこのスキルで死にたいってわけね。」


 ゆっくりとこちらに歩いてくる勇者。

 俺は身構える。


「解放せよ《銀角》。伝説の剣、《マスターブレード》。」


 彼の左手にある紋が銀色に輝く。

 彼の目の前に、伝説の剣が現れた――。


「この剣は勇者の剣だ。『使用者を必ず勝利に導く』という因果があれええ!?」


 思わず変な声を上げる勇者。

 彼の手に握られた伝説の剣が――ポッキリ折れていた。


「なんだこれ!? ありえない!!

この世のあらゆるものを切っても絶対に刃こぼれしない剣がぁ!!」


 この世のあらゆるもの、か。

 俺のステータス画面はこの世のものじゃないしな。


「へー、それで俺を倒すって?」


「何が起こってるんだ!

くそ、《ハーミットマスターロッド》!!」


 勇者が賢者の杖っぽいのを召喚する。

 が、杖が面白い形にひん曲がっていた。

 あれを曲げるのは苦労した。


「どういうことだよこれは! 《勇気のガム》《知恵の缶詰》!!

……なんで出てこないんだ! ステータスオープン!!」


 彼は自分の目の前に、ステータスを表示させた。


【[無限アイテム庫 ベニヒサゴ] 内容詳細】

・《ぼチへぴゾの4ぽレ》

・《イ゛マ゛み》

・《プチキャプテン》

・《わざマシン59》

・《けつばん》

・《ゾオ゛ぼ8ノ゛ご8》

・《??????》

……


「な……中身がバグってる!?」


 アイテムの一覧を見て固まる彼。

 そんな彼に助言をする。


「君さぁ、添付ファイルとか怪しいURLとか開いちゃうタイプでしょ。

危ないよそういうの。

だから俺みたいな奴(マルウェア)に引っかかるんだよ。」


 全てではないが。

 長期間の監禁生活中、一番頑張ったのがこれ。

 アイテムの破壊や作り直し。

 あるアイテムは使えないレベルまで「ステータスカッター」で切り刻む。

 あるアイテムは穴を空け別のアイテムを通したりして合体させる。

 合体させたアイテムは俺が命名することで新たなアイテムになる。

 館の周りにあったアイテムをかき集めてたのはこれが理由だ。


「つ、使えるアイテムは……いや、兵士なら……これはどうだ!

出てこい、茜国軍暗殺部隊『滅』!!」


「ステータスオープン!!」



ザクザクザクッ!!



「うっ……あ……」


 出てきた瞬間、俺のスタータスカッターで再起不能にする。

 目の前に現れる暗殺部隊とか何も怖くない。


「そんな兵士じゃあ怖くないね。もっとほら、魔王軍の強いやつとか……」


「ふっ、だったらこいつを出してやるよ!」


 お、乗ってくれたか。


「出でよ!! 魔王軍四天王の一人!

[絶望の七色(ディスペアレインボウ) リリベル]!!!」


 はい一人目。


「ハーッハッハッハ! あたしを呼んだわね、空間の勇者よ!」


 いつも以上のノリノリでリリベルが出てきた。


「安心しなさい! 私が来たからにはこの世全てを絶望に染めて上げるわ!

手始めにどこの街を消せば良いのかしら?

そこの虫けらごとすべてを破壊してキャン!!!」


 後頭部を思いっきりステータスで殴る。

 もうちょっと見て動画に残したい気分だったがすまんリリベル。


「違うなぁ、もっとこう魔王軍の幹部でこう……」


「ぐぬぬぬ……だったらこいつはどうだ!」


 左手を上に上げる勇者。

 銀色に輝き、目の前に現れたのは。


「行け! [轟風魔団 幹部 ルナ]!!」


 はい、二人目。これでいざという時の保険は確保。

 館の周りで見つけられなくてどうしようかと思っていた。

 俺の作戦が失敗しても、最悪彼女のチートがあれば何とかなりそう。


「だ、だめです勇者様……体が動かない……」


 ルナさんが縮こまって震えている。

 そりゃそうだ。

 魔王軍である俺に危害を加えようとすると、死ぬ呪いがかかってるんだから。


「ど、どういうことなんだよ!

なんで何もうまくいかないんだ! 邪魔だお前!!」


「うっ!」


 一応少女の姿であるルナさんを蹴飛ばす彼。

 女性にしかも子供に手を出すとか、思った以上に最悪なやつだ。


「あーもうお前なんなんだよ! 俺のスキルに何したんだよ!」


 相手はかなりイライラしたのか、頭をかきむしってる。


「別に。アイテムに手を加えただけだよ。

流石に生き物には手を加えなかったけどね。

でもその貯蔵庫に入ってるアイテムはほとんど使えない。

アイテムが使えないお前なんて――」


 相手の手が止まる。

 もしかして気がついたか。


「アイテムに……だって? ああそうか、お前は勘違いしている。」


 腰に手を当て、余裕そうな感じが戻ってきた。


「俺のスキルは貯蔵庫なんかじゃない。すべてを喰らい尽くすブラックホールだ!」


 何言ってるんだこいつ。

 ブラックホールなら出てこれないじゃん。

 と思いつつもいつものセリフを。


「な、なんだって!?」


「教えてやるよ、俺のスキルが喰らった『技』でなぁ!」


「まさか! 相手の技すら吸収してしまうのか!?

ってことはダンジョンボス級の技もその手から放つことが出来るのか!」


「ああ。この技は俺が"収納"した中で一番威力のある技だ。

身をもって味わいやがれ!」


 左手を前に出す勇者。

 しかしこちらには手の甲、銀色に輝く紋を見せている。


「くらえ! 《邪竜終焉滅殺弾ワールドエンド・ブラック》!!!」



グオッ



 一瞬だけの轟音。

 しかし彼の左手から出てきた黒竜みたいな物体は静止している。


「ん?」


「ステータスオープン!!!」



カッ!!!

ドッォオオオオオオオン!!!



 一瞬の静止のあと、黒竜みたいな物体はその場で大爆発した。

 俺は倒れていたリリベル、ルナさんと自分をステータス画面の箱で覆う。

 あたりが爆風で吹っ飛ぶ。

 パーティ部屋も、その建物ごと跡形もなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ