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氷雪系最強


バダン!!



「たたた、大変です! 団長様!!」


 奥の棚から新しい酒を勝手に開けようとしていた時。

 見張りのオーク兵が、店のドアを勢いよく開けて入ってきた。


「あー? どうした残党でもいたか?」


「ゆゆ、勇者が現れましたーー!!」


「勇者だとォ!?」


 狼男が毛を逆立てて反応する。

 勇者。

 もしかしたら異世界転生勇者かもしれない。

 この近辺で見かけたという情報は得ていた。

 俺達は冷たい水を一気飲みして酔いを覚まし、現地に向かった。



◆◆◆



「むううん!!」


 屈強な人間の戦士が、オーク兵とミノタウロス兵を切り払う。

 そこらじゅうに転がる人豚と人牛の死体。


「これはひどいわね……」

「なんと残忍な、魔王軍!」


 女の子魔法使い、おじいちゃん魔法使いが石像を見て話す。


「これ、石化解除の魔法でどうにかならないのか?」


 若い男性が石像に触りながら魔法使いに問いかける。

 彼だけ装備が軽く、腰に下げた短剣以外に武器がない。


「あいつか? 勇者ってやつは。」


 噴水のある広場にいる、勇者パーティ。

 それを物陰から偵察する俺。

 早速ステータスを見てみる。


【[氷結の勇者 ヒョウタ]】

 レベル:39

 スキル:《アイス》Lv999


「何だ、レベル999ってふざけた数字は。……あ! ガイアーさん!!」


 敵の情報を探る前に、姿を見せてしまう魔獣兵団の団長。

 さすが脳まで筋肉で出来ているだけで団長に登りつめた男。

 腰に手を当てて自身ありげだ。


「てめーか! 俺の部下を殺したのは!」


「かかってきたから殺したまでだ。誰だお前。」


 獣人の巨体が出てきても、ふてぶてしく話す勇者。


「俺は魔王軍 魔獣兵団 団長、覇狼のガイアーだ!

今からてめーをぶち殺す!!」


「やれるもんなら……やってみろよ。」


 勇者がそう言った途端、彼の後ろにおびただしい数の氷柱(ツララ)が浮かぶ。

 空中で向きを変え、鋭いツララがガイアーを襲う。



ドドドドバリバリバリ!!



 しかし、ガイアーは微動だにせず。

 突き刺さることなくツララのほうが破壊されてしまう。

 何なら一本キャッチしてバリボリ食い始める始末。


「で、これがどうしたって!?」



ガキィィィン!



 屈強な戦士がバトルアックスを振り下ろす。

 それを拳で応戦するガイアー。

 拳に当たったのに金属音がした。


「勇者様、ここは私が。」


「勇者じゃないっての。まあ頼んだよ。」


「了……解ッ!!」


 あの筋肉獣人であるガイアーが少し押される。


「ほう、やるじゃねぇか。」


「精霊よ、彼に力を!」

「沼へ沈むのじゃ! 《ポイズンスワンプ》!!」


 女の子魔法使いは相手の戦士に補助魔法。

 おじいちゃん魔法使いはガイアーの足元に沼を召喚する。

 しかし。


「フン!!!」



ダンッ!!



 ガイアーがその場で地団駄を踏むと、沼は蒸発しただの土になった。

 そのまま戦士に突撃し、戦士は吹き飛ばされてしまった。


「ぐぅぅ……」

「大丈夫ですかな!」


 おじいちゃんが戦士に回復魔法をかける。


「まだまだ行くぜッ!!」


 ガイアーがもう一度踏ん張り、女の子のほうへ突撃しようとする。


「やれやれ、もうちょっと静かにやれないのかね……」



パキィ……!



 男性がそうつぶやいた瞬間。

 ガイアーは巨大な氷の柱に飲み込まれてしまった。

 広場を覆い、近くの噴水まで凍るほどの広範囲・高さ。

 遠くで様子を見ている俺にすら冷気が届く。

 これは……


【スキル詳細】

 スキル:《アイス》Lv999

 詳細:氷属性の基本魔法であるアイス。

 彼が使うとレベルが限界突破し、この世のすべてを凍らす事が出来る。

 エターナルフォース。相手は死ぬ。

 そして――――


 つまり氷雪系最強の能力ってことか。

 空気中の水分とか関係なく無限に凍らせる能力、まさにチート。



バキィィィィン!!



「うおああああああ!!!」


「何……だと……?」


 巨大な氷の柱が粉々に砕け、中から魔獣兵団長が叫びながら飛び出す。

 魔法無効化? 違う違う。

 あれはただの「気合」。

 団長のスキル:覇王闘気だ。

 どんな魔法も「気合」だけでぶち破る。

 これがガイアーさんのかっこいいところ。


「効かねぇんだよそんな攻撃!

俺を殺すならこの百倍の氷を持って来いってんだ!」


 百倍って、国が凍るぞ。

 それでもこのワーウルフが止まるとは思えないが。


「ふーん、そう。じゃあ……」


「ふえっ!?」


 氷結の勇者がいきなり女の子と手をつなぐ。

 どうして急にイチャイチャし出す?

 その微妙な容姿で可愛い魔法使いと見つめあうのは若干嫉妬。


「何やってん――――」



 目を疑った。



 気が付くとガイアーの頭部が、無い。



「ガッ……」


 いや、頭部は空中に放り出されていた。

 体と頭部が地面に落ちる。

 あまりにも突然で、何が起こったのかわからない。

 ん!?

 まさか!


【スキル詳細・続き】

 そして――――最近大きなピンチを乗り越え、覚醒する。

 世界の"時間"を凍らせる事が出来るようになった。


「じ、時間停止能力者か!!」


 しまった。

 最後まで読んでいなかった。


「うわ、痛ぇ!!」

「勇者様!!」


 え!?

 ガイアーが首だけで動き、勇者の足にかぶりついていた。


「痛ぇよバカ!!」


 勇者は足を振り、ガイアーの首を蹴飛ばした。

 地面に落ちた首は凍り始める。


「ふふ……俺の牙は痛かろう……」


「消えろ」



バリィン!



「ガイアーさあああああん!!」


 ガイアーの頭部は踏みつけられ、粉々に砕けた。

 それでもまだ踏みつける勇者。


「くそっくそっ、狂犬病になったらどうすんだよ!

それと俺は勇者じゃないってば。」


 ああ。

 もっと早く忠告していれば。

 俺が殺したも同然じゃないか。


 ――よし、やってやろう。

 喧嘩すらしたことない現代っ子の俺だが、ここで出ないでどうする。

 時間停止能力者の攻略だ。

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