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真実は……いつもひとぉつ!(映画版)


「ん? 何か思いついたのタカトちゃん?」


 魔王様――いや、今はピエロさんが俺の顔を覗く。

 俺は目の前に展開したステータス画面を確認する。

 これは誰かのステータスを見ているわけではない。


【魔王城 王の間】

 魔界で唯一、魔王とコンタクトが取れる空間。

 魔王は奥の玉座に座っているが、姿を隠蔽している。

 不定期だが、四天王がこの場所に集められ魔王からの指示を受ける。


「この部屋、この空間の情報を見てるんです。

敵が自分に対する不利な経歴を偽装しているとします。

でも場所の記録までは偽装される事も無いかと思いまして。」


【王の間 四天王召集履歴】

 第11回 議題:勇者討伐団結成について

 第11回 参加者:

 ジオウ、カゲヌイ、リリベル、マグレッド=エンド、ルナ、タカト


「いや……でも駄目みたいです。

自分が召集された、第11回の時も四天王が五人表示されています。

確かに記憶の中でも皆さんいましたからね。

でもあの時、引っかかる会話をしていた気がするんです。

ステータスオープン、クローズ。ステータスオープン、クローズ……」


 頼む、ステータス画面。会話内容まで表示してくれ。

 俺は祈りながら、ステータス画面を更新し続けた。

 表示内容が若干変わっていく。


 ステータス画面は、俺の知りたいと思う気持ちに反応するよう出来ている。

 意識を集中し、あのときの会話を思い出す。

 何度か更新しているうちに、ついに詳細が記載された。


【王の間 第11回四天王召集会話内容】

ジオウ「久しぶりだな、俺ら四天王が揃うなんてよ。」

カゲヌイ「何か良からぬことでも起きたでござるか。」

竜神「我を呼ぶ時……破滅へと導こう。」

リリベル「ふふ……破滅が近いのには間違いないわね……」

タカト「本日はよろしくお願いします。」

ジオウ「一人多いじゃねぇか! 誰だてめー!」

カゲヌイ「人間!? 曲者でござるか!?」


「あった! ありましたよこの会話です!」


 見つけて嬉しくなり、ピエロさんに見せる。


「そうなの? 私には何が書いてあるかわからないわ。

でもよかったじゃな~い。

これで誰が偽者か絞りだせるって事かしら?」


「はい。この時、自分は四天王の会話に参加してみました。

すると、四天王以外が入れない部屋に五人目がいることを指摘されたんです。

この会話に参加してなく『ただそこにいた記憶』だけが不自然にある人。

四天王の五人目はきっと――――」


【王の間 四天王召集履歴】

 第12回 議題:人間界侵略第二フェーズ移行について

 第12回 参加者:

 ジオウ、カゲヌイ、リリベル、マグレッド=エンド、ルナ、タカト


【★ネタバレ★】

 四天王 ルナは偽物。

 記憶を操作する異世界転生の能力者。


「うっそマジかよネタバレ出てるじゃん!! 最初からしてくれよ!!」


「ど、どうしたのよタカトちゃん。」


「いや、ちょっと女神に弄ばれたというか……

とにかく、色々とありがとうございました!」


 俺は急いで王の間を出る。

 ピエロさんは、いつも見守ってるわよ~とか言ってくれた。

 ……よく考えたらそれも恐ろしいことだが。

 あれ? 王の間は四天王以外は魔王の許可無く入れない――

 うん、考えるのをやめよう。

 とにかく、一旦自室に戻り作戦を練る事にした。

 記憶操作系能力者への対策だ。



◆◆◆



「なにかなー、今日は改まって私とお茶したいって。」


 白いテーブルを挟んで俺の向かいの椅子に座り、四天王・ルナが質問する。

 ここは妖精の森、とある泉のほとり。

 二人きりで話がしたいと彼女をここに呼んだ。

 魔界にしては珍しく空も安定し、心地よい風が吹いている。

 周りには妖精もいなく、石柱のオブジェが並んでいるだけだった。


「ルナさんに、どうしても伝えておきたいことがありまして。」


「んー?」


 無邪気な顔でこちらを見てくる幼い少女。

 目が大きく、まつ毛が長い。

 透き通るような白い肌でじっとされると、人形のように見えてくる


「ルナさん。実はその……」


 俺は椅子から立ち上がり、彼女の近くへ行く。

 そして手に触れる。


「あの……言い出しにくいんですが……」


 手を握っても意外と嫌がらない。

 じっと目を見つめる。

 彼女が照れて目線を外す。


「な、なにかなー? あたしでよければ聞いてあげるケド……」


 ぐいっと俺の胸元まで手を引っ張る。

 驚いた彼女は思わず立ち上がる。


「あわわ……えっと、どうしたんだいタカトくん?」


 落ち着こうとしているようだが、耳が赤い。

 だんだん後ずさりしている。

 俺はじりじり距離を詰める。


「俺は……前から……」


「ま、前から……?」


 二人は少しずつ移動する。

 ついに石柱のオブジェがあり後ずさり出来ない位置に着いた。

 俺は石柱に片手をついた。

 壁ドン……石柱ドンだ。


「わわわ、タカトくん、近いょ……」


 顔が赤くなり、目をそらす彼女。


「前から……ルナさんの事が……」


「あたしの……事が……」


「ステータスオープン。」


「ステータスはいィ!?」



ピシッ!



 彼女の首周りを、ステータスのカッターが取り囲む。

 追加で胴回り、手、足首にもステータスのカッターを配置した。

 背後の石柱にもヒビが入る。


「……どういう事か説明してくれる? タカトくん。」


 彼女の目が冷たくなる。

 もっと暴れるかと思っていたが、意外と落ち着いていた。


「ルナさん、もう全て分かってるんです。

貴女が四天王じゃないことも、異世界から来た人間だということも。」


「そう……」


 少しがっかりした顔をする彼女。

 異世界から来た人間というのは確証無かったが、否定してこない。

 これは認めたという事か。


「アナタ、精神攻撃を受けているわね。」


「は?」


 突然、俺を睨む。


「アナタの精神を司る精霊が疲れているわ。

精霊はアナタを守ろうとしたけど、攻撃に耐えられなかったみたい。」


「ステータス・オープン。」


 俺は目の前にステータスを展開する。

 自分の情報を表示する。


「俺のステータス画面はあらゆる情報を表示してしまうチート能力だ。

そのステータスが精神の精霊なんていないと言ってるが?」


 彼女が苦虫を潰したような顔をする。

 図星を突かれたのか。

 俺がチート能力者だと知ったからか。

 実際は女神から貰ったチート能力では無い。

 しかしこの言葉を知っていると言うことはやはり。


「わかったわ。少し頭を冷やす必要がありそうね。」



ゴゴゴゴゴ……



 地響きが起こり、近くの木々から鳥が羽ばたく。

 彼女の周りに赤と青の妖精が現れた。

 俺は彼女に手をかざす。


「動くな! 今すぐ能力を解除しないと首を落とすぞ!」


「首を落とす? やれるものなら――」


 彼女が背後の石柱に飲み込まれる。

 しまった、石の精霊と対話し、石柱を操られてしまった。

 石柱の上に現れる彼女。


「――やってみなさいよ。ほらぁ!」


「ステータス!」



ガキン!!



 赤と青の精霊をステータスのキューブに閉じ込める。

 事前の調査で精霊は斬撃が効かず、細切れにしても復活する事を知った。

 だったら異次元の壁で封じ込めたほうが早い。


「ステータスカッター!」


「わっと!」


 ステータスのカッターを彼女の足元に飛ばす。

 彼女は石柱からジャンプし、他の石柱へ着地する。


「そろそろか……」


 俺は腰にあるポーチからアイテムを取り出す。

 この日のために、四次元ポーチに魔道具をたくさん入れてきた。

 今着ている服の下には、体力が上昇する魔法インナーも着けている。


 取り出したアイテムは、片側しかないヘッドフォンのような形。

 耳部分から伸びているアームに、小さなモニターが付いている。

 名前はまだ無いので、とりあえず某漫画のようにスカウターと呼んでいる。

 それを右耳に装着、モニターは右目の前に来るように。

 小さな画面には、こう表示されている。


 ▼ ENEMY


 さらに小型のステータス画面を耳元に展開し、アイテムに読み込ませる。

 こうして、三角マークが敵を追従する表示になった。

 バグったステータス画面から情報を得ているので正確だ。


「本気であたしと戦おうとしてるの?

アナタの実力をあたしが知らないとでも思った?」


 石柱の上から彼女が話しかけてきた。


「ああそうだよ。俺の能力を甘く見てるだろうからね!」


「ふーん……」



シュバッ!



 彼女が石柱から高速で移動する。

 スカウターのマークが彼女を追い、位置を示してくれる。


「そのアイテムが無いとあたしの動きも追えないじゃない。

考え直したほうがいいんじゃないの~?」


「こっちのセリフだよ! 泣いて許しを叫んでも容赦しないからな!

ステータスオープン!」


 俺は周りに大量の小型ステータス画面を展開する。

 彼女の方へ腕を向け、発射しようとする。


 ――その時だった。


「残念ね。ちょっと期待したのに。」


 彼女も俺に両手を向けていた。

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