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容疑者X


「そういえば……四天王なのに(・・・・・・)五人いる(・・・・)……」


 どこぞのギャグ漫画じゃないんだ。

 割と真面目な魔王軍、五人いるのに四天王なんて名前は付けないだろう。

 ってかよくよく思い出せば。

 俺が王の間に行った時「四天王なのに五人いる!」と突っ込まれた記憶が。

 やっぱり四天王は四人だ。


「じゃあ誰が……裏切り者……まさか異世界勇者?」


 しかしリリベルは俺が魔王軍に入るきっかけとなった人だ。

 竜神様とカゲヌイさんは勇者を倒すときに手伝ってくれた。

 ルナさんは勇者に初見殺しされそうになったところを助けられた。

 ジオウさんだってよく修行に付き合わされる。


「確かめに……行くしか無いな。」


 俺は部屋を出て、まずは一番近い四天王の元へ向かった。



◆◆◆



コンコン



「俺だけど。ちょっといい?」


「はーい。どうぞー?」


 同じ階のリリベルの部屋。

 まずは彼女から調査してみる。

 ノックして返事があったので、部屋の中にはいるみたいだ。

 開けて確認する。


「失礼しまーす……失礼しました―。」


「え!? ちょっと何で閉めるの!」


「何で全裸仁王立ちで飲み物飲んでる最中の返事が『どうぞー』なんだよ!」


「風呂上がりに裸で何が悪いのよ!」


 違う今はそういうのじゃない。

 まあいいや、このドアの向こうにいる事を認識できた。


「ステータス・オープン。」


【魔王軍 四天王[絶望の七色(ディスペアレインボウ) リリベル]】

 詳細:最近のマイブームは新色のルージュを開発すること。

 魔族の女性から高い支持を得ている。

 自身も実は現場と気分によって、口紅の色を若干変えている。


 この距離だとステータス取得の範囲に入る。

 俺が認識するかしないかが重要だ。

 そしてどうでもいい情報が手に入ってしまったが、彼女はシロだ。

 今度発色についてコメントでもしてあげるか。


「で、なんか用なの? タカトー。」


「いや、なんでもないよ。ちょっと外を散歩してくるわー。」


「散歩? ……ええ、いってらっしゃい?」


 疑問形で返事が返ってくる。

 俺がこの時間に散歩するのは珍しいんだろう。

 早く確かめたくて足早になる。

 俺は廊下の突き当りにある窓から外に出る。


「ステータス・オープン!」


 三階の窓から落ちないようにステータスの足場を作る。

 そこに乗り、スケボーのようにして魔界の空を行く。

 目指すは妖精の森、ルナさんのところだ。



◆◆◆



「それにしてもどーしたの? こんな時間に。」


 四天王・ルナは妖精の森にある館に住んでいる。

 訪ねたところ、中に案内されて客間へ通された。

 小さな妖精がお茶を運んでくる。


「ちょっと聞きたいことがあって。

ルナさんって、どうして四天王になれたんですか?」


「あたし? そんなのもうなるべくしてなったようなもんじゃない。

妖精の女王、精霊界の重鎮、八百万の精霊を従えるのがあたしだもん。

気がついたら勝手に四天王として魔王軍の勝利の女神になってたわ!」


 自信満々に話すルナさん。

 ちょっと乗ってあげよう。


「ですよねー、俺も四天王に憧れてて。

ルナさんみたいになりたいなと思っていたんです。

ルナさん、例えばどんな街を攻略したことありますか?」


「ふふふー、聞きたい? あたしの素晴らしい作戦を!」


 興味ありそうな顔をしながら、話を聞くように見せかける。

 目の前のティーカップに隠した小さなステータス画面に気づかれないよう。


【魔王軍 四天王[精霊の母(スピリットメイク) ルナ]】

 詳細:こう見えて自分の体型をすごく気にしている。

 女王らしからぬ幼いボディだが、せめて胸が大きくなるよう努力している。

 努力の成果は今の所無い。


 とても悲しい情報が見えてしまったが、ルナさんもシロだ。

 自分の武勇伝を話し続けるルナさんにブレーキをかけ、適当に切り上げる。

 また聞きに来ます、と妖精の森の屋敷を出る。

 名残惜しむルナさんにサヨナラを告げ、次の目的地へ向かった。



◆◆◆



カン! ガキィィン!!



 魔王城地下、トレーニング室から鳴り響く重たい金属音。

 四天王・ジオウはいつもこの扉の向こうでトレーニングをしている。

 本人を認識しないと俺のステータス確認は有効ではない。

 開けようか、迷う。


 見つかったらトレーニングに巻き込まれるのもある。

 しかしそうではない。

 もし彼が異世界勇者だったら勝てるのか。

 俺のステータス画面すら割ってしまう規格外の現地人。

 対策を練ってからのほうがいいのではないか。


 いや、むしろ違った場合はどうだ。

 残るは爬虫類型の忍者と巨大な人型竜だ。

 あんなのが異世界人であるはずがない。

 だからジオウさんの確率が高いと予想したが……

 俺とは違う世界の異世界人という可能性も考えられる。

 現にこの世界には、俺の世界から若干ズレた異世界人もいた。


 考えがまとまらない。

 一旦引こう。

 俺は足音を立てないように、地下室の階段をゆっくり登った。



「はぁ……どうしよう。」


 無意識にたどり着いたのは王の間。

 普段は固く閉ざされているはずなのに空いていた。

 誰もいないこの部屋の真ん中でボーっと考える。


 幻覚、精神操作。

 今回の勇者はそういったチート能力かもしれない。

 その場合どう対処したらいいんだったか。

 過去の文献(漫画)を思い出し、対策を考える。

 すると。


「あらぁ~、タカトちゃんじゃない。どうしたのこんなところで。」


「うわぁびっくりした!! すみません勝手に入って!!」


 柱の陰から、赤と青の衣装、白塗りの顔をした人物が近づいてきた。

 [謎の道化師 アヴァーヤ]、通称ピエロだった。


「えっと……アヴァーヤさん……?」


「なによう、みんなと同じくピエロって呼んでもいいのよっ?

それよりもな~に~、悩み事?」


「あっ、ええと……はい。」


 ピエロとか呼べないし。

 彼の正体は魔物の頂点に君臨する魔王軍のトップ、魔王様本人だ。

 しかしオネェ口調になぜか親近感と頼り味を感じる。

 結局、悩みを相談してしまった。

 四天王が五人いること。

 もし偽物だとしたら戦う必要があること。

 もし仲間が信じてくれなかったら魔王軍を敵に回すこと。


「――そうねぇ、確かに五人いるのはおかしいわよねぇ。

魔王のやつも気が付かなかったのかしら?」


 ネタバレしてるのに、どうしても別人扱いしたいらしい。


「もしかしたら、このステータス画面すら誤魔化してるかもしれないんです。

そうすると何を信じていいのか。」


「情報をどう活用するかなんて、アナタ次第よ~?

今までもいろんな情報から、打開策を見つけて来たじゃない。」


「そ、そうですね。」


 確かに。情報源は一つじゃない。

 相手のステータスに留まらず、自分の足で見つけることも大事だ。

 きっとどこかに痕跡があるはずだ。


「情報ねぇ、時間帯やアナタの気分次第で見る内容が変わるのかしら。

その不思議なステータスの魔法は。」


「変わると……思います。

相手のステータスを見たいときはレベルや能力が。

詳細を見たいと思ったら生い立ちや趣味まで出ますし。

見る相手がいなくても、辞典みたいに言葉を調べることもあります。

この世界の歴史や、ダンジョンの情報なども……」


 ここまで言って気がつく。

 今のところ本人のステータスしか覗き見してないじゃないか。

 どこかに痕跡、どころか情報はそこら中に散らばっているものだ。

 そう、例えば今この場所の情報からでも。


「ステータス・オープン!」

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