フェアリー娘と不思議なダンジョン
ぬるーん
ぬるーん
「どうですか? 気持ちいいですか?」
森の妖精たちが俺の背中をマッサージする。
「おおー、これは癒される……」
ここは魔界・妖精の森のエステ。
羊皮紙パンツ一丁でうつ伏せに寝る俺に、とろっとした蜜が塗られる。
その蜜を全身にまとった小さな妖精たちが、俺の体の上を滑っていく。
妖精の身長は約20センチほど、女の子用おもちゃの着せ替え人形くらい。
他にも10センチほどの、赤い屋根の大きな家に住む動物人形サイズのやつもいる。
「えーい、滑り台~」
「あー、わたしもやるー」
「こらこら、遊びじゃないんですよ。」
大人型から子供型まで、数人の妖精があらゆる部位をマッサージする。
蜜から甘い匂いが漂う。
「この蜜いい匂いだね。花か何かの蜜なの?」
「はい、そうです。フラワータイプのフェアリーが集めた蜜です。
疲労にも効きますし、美容にいいんですよ?」
大人型の妖精が答えてくれた。
「そうなのか、俺は美容には興味ないけど暖かくて安らぐね。」
「ですから、このマッサージに参加したいという妖精は多いんです。
自分にも蜜が付きますからね。だからみんな服を脱いでるんです。」
「え、君たち全裸だったの?」
「はい。全身で団長様を癒やしてゆきますよ。」
俺の背中にくっついてる妖精達。
背後だから見えなかったが、全裸だと言われると意識してしまう。
何か違う意味で気持ちいいような。
「では団長様、仰向けになってください。」
「え、仰向け!?」
「そうです。背中だけではバランスが……」
ヌルヌルでベッドから落ちないように俺を固定していた、植物のツルが動いた。
ツルが器用にくるんと俺を回転させる。
仰向けにされて再び体を固定。羊皮紙パンツが恥ずかしい。
「それでは行きますよ。えい。」
俺の上を全裸で滑る妖精たち。エロいかと思ったらちょっと滑稽だ。
虫や花びらのような個性豊かな羽を推進力に使い、カーリングのように滑っていく。
「それートンネル~」
「私もやるー」
腹の上からパンツに入り、太ももへ抜けていく小型妖精。
妖精の羽が俺のデリケートな部分を刺激する。
「おうふ、ちょっと。」
「こらあなた達、そこは入っちゃだめよ! ……え?」
「あー! これテントになるよ!」
「ポールをたてろー」
子供型妖精がパンツの中で遊び始める。
妖精たちはしがみついたり隠れたり、自由だ。
「あっ……すごいことに……どうしましょう……」
何故か大人型妖精が、遊ぶ子どもたちに釘づけだ。
動揺して俺の胸元でオロオロし、一部分だけのマッサージになってしまう。
みんな元気だ。
「できたー、テントだ~」
「私ここに住むー」
「えっと、これを静めるには、えっと……きゃあ!」
「ふごっ!」
慌てた大人型妖精が後ろに下がると、俺の口にお尻がすっぽり。
ハマって取れなくなってしまった。
「ふが、ふが!」
「ご、ごめんなさい! よいしょっと、取れな……ひゃうん!
だ、団長様そこは、ひゃん、んん!」
口の中に甘い蜜があふれる。
花びらのような大人型妖精の羽が鼻をくすぐる。
子供型妖精はパンツの中で支柱を触りながらグルグルと追いかけっこを始めた。
「まて~」
「きゃー」
「あん、ごめんなさい団長様、だめ、蜜が溢れちゃう、んん、あんっ!」
俺は植物のツルで動けない。
股間は妖精が暴れてるし、口には妖精が詰まっている。
天国か? 地獄か?
そんな事を考えているときだった。
バダン!
「こらぁ! 妖精娘ども!!」
「「リ、リリベル様ー!!」」
エステルームに突然入ってくるリリベル。
驚いた妖精たちはピューッと何処かへ消えてしまった。
頑張れば俺の口から脱出できたんじゃん。
「はぁ、はぁ、リリベル、今日はグッジョブだ……ひゃうん!」
何故か俺の胸元を舐めるリリベル。
「うーん……甘い! 後で奴らに納品させようかしら。」
「そうだね。取りすぎない程度には。」
リリベルが俺を縛っていたツルを解き、小脇に抱え込む。
「んで、今日はどこ行くの?」
「この前ね、魔王軍未到達のダンジョンが見つかったのよ。そこに行きましょう。」
「おお。いいね。」
蜜でヌルヌルになってる羊皮紙パンツの俺を抱え、妖精の森をふよふよ飛ぶリリベル。
一度魔女の森に帰って準備をすることにした。
◆◆◆
「ここが最近発見されたダンジョンよ。砂浜のダンジョンってところかしら。」
ここは南海の孤島。
無人島で魔物も住んでいない。
魔力を帯びていない小動物が若干暮らしている程度だ。
何もない島だと思っていたが最近、ある術式に反応してダンジョンが出現。
人間共に気づかれる前に宝をゲットし、逆に利用してやろうという作戦だ。
「四天王様団長様、お気をつけください。」
そう話すのは半魚人モンスター[ギルマン]だ。
「私達ギルマン調査隊が中に入ったところ、かなり入り組んでいました。
多くの犠牲者も出ています。また、すでに人間の冒険者も数名立ち入ったとか。」
「人間共め。鼻の効く。」
リリベルがダンジョンの入口を睨む。
入った冒険者は数名だが、出てこないということは世間に知られていないという事。
やはり早めに調査をした方がいい。
「私どもも本格的な調査に乗り出しますが、やはり先に行かれるのですか?
このような雑用は私どもが……」
「いやいやいいんだよ。軽く調べてくるだけだから。」
とは言ってみたものの、実際は彼らの仕事を奪うことになるんだろうか。
でも俺らもぶっちゃけ暇だからなぁ。
この異世界に来てダンジョンを作ることはあっても攻略した事は無いし。
そうこうしているうちに、リリベルが入口に向かう。
「では行ってくる。」
「はっ! お気をつけて!」
俺とリリベルは、ギルマンに見送られながらダンジョンに入っていった。
◆◆◆
「ステータス・オープン!」
【魔術のダンジョン】
難易度:A
詳細:古代魔術師が作ったダンジョン。その歴史は古く――――
「ちょっとタカト、先に情報を見ちゃったらつまらないじゃない。」
ダンジョンのステータスを見てたらリリベルに突っ込まれた。
「でも突然の罠とか怖いじゃん。ほらここ、魔法陣描いてあるし。」
俺が指を指したところに、うっすらと魔法陣が描かれていた。
ただの模様なら良いが、ここはダンジョンだ。何か仕掛けがあるはず。
内部は基本的に青い岩石で出来た鍾乳洞が続いてる。
ところどころ青く光っているので、そこまで暗くない。
足場はガタガタで水たまりがあり整備されていないが、不自然に切れた岩もある。
誰かが戦ったか、トラップがあるのか。
「これは何かしらね。えい。」
壁から飛び出た直方体を押すリリベル。
一瞬光り輝くと……
ビュビュビュビュン!!
針がたくさん飛んできた。
俺の方にも来たのでステータス画面でガード。
「不用意に触るなよ!」
「だって気になるじゃん。」
幸先不安だ。
その後もトラップに自らハマりに行くリリベル。
慣れた俺は遠目から見守り、今後のダンジョン開発へ向けて参考にした。
「おお! なにこいつら。」
歩いていると突然、壁に魔法陣が浮かぶ。
そこから青い鬼が大量に現れた。
「モンスター? 話通じないの?」
「ダメね。このダンジョンから生み出されたモンスターだもの。」
【[青魔術の青鬼]】
レベル:41
詳細:どこまでも追いかけてくる怖い鬼。
「レベル高けーな。このレベルを大量召喚するなんて。」
俺はステータスでモンスターの詳細を見つつ、さらに複数枚開いた。
リリベルは七色に光る球体を展開する。
「邪魔よ」
「あとで調べたげるからな」
七色の球体から放たれる様々な魔法が鬼を焼き、凍らせ、切り裂く。
レベル差関係なく、俺のステータス画面が鬼の首を飛ばす。
鬼たちは召喚され殺されるをひたすら繰り返すだけになってしまった。
青鬼たちを瞬殺しながらのんびりと、俺らは前へ進んだ。




