②鈴
猫達のフードがきれていたが、午前中は体が熱っぽく外に出られなかった。
結局午前中ずっと眠りこんでいた ら、昼過ぎに目覚めた時に少し楽になっていた。
猫達には「待たせてごめんね、今、ごはん買ってくるから」と言って玄関を開けた。
外の空気は私にまるで違う気分を与えてくれて気持ちが良かった。冷たい空気ではあるが、新鮮さがいい。その事に私は感謝した。
1月は今日で終わり、明日からは早、2月。歳を重ねる毎に月日が経つのが早く感じ、そしてその2月には又誕生日がやってくる。
よくここまで生き続けているなぁなどと思うことがある。まだ50代だし、第一、命に対して失礼だとも思っている、それなのに、どうしてもそう思う時が少なからずあるのだ。
こんな事を考える人間は、多分命を失う間際はやっぱり生きたいとあがくのではないか...
自分の中にある矛盾を考えながら、キャットフードを買い、冬の空気を頬に感じ家へ帰る道の途中、頭の中でシャンシャンと鈴が鳴った。
薬が切れてますよという合図。いわゆるシャンビリってやつだ。抗うつ薬が無くなっているのはわかっていた。
頭の中で鈴が鳴る。嫌な音だ。その鈴はなんだか生き物のようだ。頭をちょっと振ってみたが、もちろん止まない。薬が切れている間は鳴り続ける嫌な奴。
いつ、クリニックへ行けるだろう。私は頭の中に鈴をかかえながら玄関を開け、「ただいまぁ!ご飯買ってきたよ!」と明るく猫達に向かって笑顔をつくった。