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《我の中の我》  作者: 柊木野 紘深
1/2

①薬

眉間に手のひらを当て、フローリングに倒れこむように横になった途端、突然涙が溢れだし、

「もうこんなのは嫌だ、もうこんなのは嫌だ」と言いながら両手で目を押さえ大声で泣いた。

ほんの直前まで普通にテレビを見たり、スマホをいじったりしていたのに、自分でも突然の感情に驚きながら、

「薬を飲まなきゃ、薬を飲まなきゃ、薬を...」と言っている。

焦っている。

慌てて手がふるえている。

それでも私は「すぐ良くなるから、すぐ良くなるから、すぐ良くなるから」という言葉を唱えるように何度も何度も言い続ける。全ては自分に言い聞かせているだけなので、発する言葉に抑揚がないのは仕方がなく聞こえる。

キッチンから水を持ってきて、薬の棚の前で手をつき、又、泣いていた。

処方薬の安定剤は二種類あったが、こうなった時はいつもどちらを飲もうと言うことをさほど考えもせず掴んだほうの薬を、そして量も瞬間的に掴んだだけを一度に飲み込む。OD.したらどうするんだろうと考える時もあるが、そこまでは飲まないだろうと自分を信じている。「すぐに良くなる、すぐに良くなる」と相変わらず唱え続けていた。

さみしいせいか、連日胃が痛かった。とりあえずトイレに行き、ここ何日かと同じような状態でなんとか済ませ、洗面所に行って手を洗っていると猫達が覗きにきていた。

「あ、ありがとう、ママ大丈夫よ、お薬飲んだから」と言うと、猫達も一緒にリビングにもどってきた。

テーブルに肘をつき、体から抜けた力とボンヤリとしてきた精神で、

「ママはお薬飲んだら大丈夫なのよ」と何度か猫達に言った気がする。

皆、安心したのかそれぞれの定位置へ戻って行った。


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