自転車
ああ、なんて不幸なんだ。
私は左側の路側帯の中を自転車で走っている。
なのに前から来る女性も、私と同じ路側帯の中を通って向かってくるのだ。
最近、といってももう大分時間が経ったが、最近法の改正があり、自転車は路側帯は左側の路側帯を通るようにということになった。
なのに彼女は、法を犯して私に向かってくるのである。
避ける素振りもない。つまりは私が避けなければならない。
ああ、なんて私は不幸なんだ。
私のほうが正しいのに、私が避けなければならないなんて。
いや、ここは一つ考え直してみよう。
彼女はこの法改正を知らないのかもしれない。
知らないからこそ、自分の過ちに気づくことさえできないのかもしれない。
ならば、私などより彼女のほうがよっぽど不幸だろう。
ここはひとつ、私が身をもって彼女に法改正のことを伝えなければなるまい。
そう思って私は、彼女に衝突した。
私は正しいのだ。