27-02 【不器用な休日】 Ⅱ
男性の仲良くなる方法は一緒に食い歩きかなぁとなんとなく想像しつつ書きました。
もしくは浜辺で殴りあって夕日…何時の時代(何
男の外出の基本は買い食いからと言う事でまずは色々な所の出店を片っ端から食べ歩いていく。安価なハウンド肉を焼いたハウンド串の屋台が至る所にあるし、普通の焼き鳥や豚串、豪華に牛串なんてのも置いている屋台もある。
なんとわたあめとかもあるし、くじ引きや型抜きなどここが日本のお祭り会場か!? と言いたくなるラインナップだ。店員さんは殆どが冒険者で小さな子供におっかなびっくりわたあめを渡す姿に少し苦笑していまう。
「おぢちゃん! ありあとぉ!」
「おじ…あぁ、ありがとうな嬢ちゃん」
そんな様子を見ながら僕達は雑談しながら周囲を巡っていた。
「おぉっ! これ美味しいです!」
今食べているのは塩ダレがメインのハウンド串だ。焼きたてホヤホヤの肉に絡む塩ダレがとても美味しい、ピリっと来るのは胡椒だろう。それがアクセントとなって飽きをこさせない。咀嚼すると肉汁と肉の味、それに塩が3重に交わり口の中が幸せを叫んでいるのが分かる。
ごくりと飲み込み水を一口…あぁ、美味い。
「こういう露店で食う食い物も美味いもんだよな。雰囲気が追加されてるって言うかさ」
「男の遊びはまず食うことから始まるっ! こいつは俺のおごりだ、どんどん食えっ!」
「はいっ! 頂きます!」
こういう時変に遠慮すると相手の好意を無にする事になる。ここは寧ろ沢山奢って貰っておいしく食べる方が正解だ、と教えてもらった。僕だったら普通に遠慮してしまう性格なので、色々教えてもらってよかったよ…ありがとうアルスさん。ほんとありがとう。
「おーい二人共! あっちに美味そうなのがあるぜっ! 行ってみようよっ!」
「でかしたフィルっ! 行くぞヤスオっ!!」
「わかりましたっ!」
終始ハイテンションな僕達。二人はいつもの通りだけど僕はこうやって男友達と一緒に遊んだ事がないから今がとても楽しいのだ。自然と元気になってしまう。
フィル君が指し示した屋台は肉の他に野菜などを焼いている串家さんだった。美味しそうな匂いがここからでも伝わってくる。
「いらっしゃい! 焼き鳥、豚串、ネギまに野菜串! 美味しい茸串もあるよ!」
「おっ! おっちゃんその茸串3人分くれよっ!」
「まいどありっ! 熱いから気をつけてくれよっ!」
「茸なのにいい匂いだなぁ、これっ!」
フィル君から手渡されたのはTVなどで見たことのある松茸みたいな大きさの串だ、とても美味しそうな匂いとこれは醤油かな? この世界普通に醤油もあったのでいまさら驚く事はないとして…茸と醤油を焼いた香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。うん、凄く食欲をそそる匂いだ。
笠の部分をパクリとかぶりつくとじゅわっとした熱さの中に醤油と…これ塩だ、隠し味の様に塩の塩辛さが美味しさを引き立ててる…! やばい凄く美味しいぞこれ…身も肉厚で歯ごたえもあって凄く美味しい。これが1個300Rだなんて、フィル君の目利きは凄いな。
「こいつはイケるぜっ! 今日ははじめから当たりが多いな、オヤジもう3つほどくれっ!!」
「まいどありっ! いい食べっぷりだね兄さんたち。ウォレスあれも頼むよ、彼等へのおまけにね」
「わかったよ兄さん。……はいどうぞ、出来立ての茸スープだよ。その茸から出汁を取ったやつで味わいに深みがあってね、結構人気なんだ」
「あ、どうもです。………美味しい!」
甘みもあるし茸の風味もしっかりと感じられる。どうしようパンが食べたくなってきた。
「さんきゅーおっちゃん達。そう言えば見ない屋台だけど最近来たのかい?」
「あぁ、つい2日ほど前にね、この町は賑いがあっていい。暫くはここを拠点にするから宜しく頼む、一応冒険者でもあるからね。何かあれば掲示板に依頼を載せてくれると嬉しいよ」
「おぉ、貴方達も冒険者なんですか? ぼ……自分も冒険者なんですよ。お互い頑張りましょう!」
見た目からして強そうな雰囲気があったからもしかしてと思ったけど、やっぱり冒険者だったんだ。かなり強そうだなぁ…武器を持つタイプにはあまり見えないしカトル君と同じ格闘系かもしれないな。となれば一緒に組む事が出来たら前衛として頼りになりそうな人達だ。
「(…隙がありそうで見えない…かなり優秀な子の様だ)うん、ありがとう。もしダンジョンアタックする時があれば臨時パーティを組みたいものだね」
「おーいヤスオ! 次行こうぜ次っ!」
あっという間に茸スープを平らげて次の場所に行こうとしているフィル君達。僕も急いでスープを飲み干し挨拶をする。
「今いくよー! それじゃ失礼します。屋台頑張って下さいっ!」
頭を下げて僕はフィル君達を追った。
「いやぁ、美味かったなあれ。野菜も嫌いじゃないけどさ、いっつもは力のつくように肉をメインで食べてたから少し考えてみようかな」
「お? いい考えじゃねぇか。食わず嫌いになっちまったら後で困るからな、沢山食って沢山でかくなれよ二人共」
「……せ、成長したいですねぇ…」
この年齢になるまでこの身長だったからもう最近諦めてます…最近子供に身長抜かれてたのでもう…ね…もう…。ちなみにフィル君とは団栗の背比べ状態です、でも彼はまだ15歳…わかってる、わかってるんだ抜かされるなんて。
「団長、ヤスオがダメージ受けてるんだけど」
「す、すまん…」
「ええんです、きっと牛乳飲めば成長する……といいなぁ」
「ほら! あれだよあれ! トランスブーストならすげぇ背が高くなってたじゃないか!!」
「ほんの数分だけ背が伸びて何が嬉しいかな?」
「申し訳ありませんでした」
びしっと直角に頭を下げるフィル君。
多分今の僕の目は絶対零度になっている事でしょう。
「んー、結構食ったし次は……風呂でも行くか!!」
「おっ! いいね団長!!」
「お、お風呂ですか」
物心ついてから他の人と一緒にお風呂なんて入ったこと無いから緊張するな……
「男同士仲を深めるなら裸の付き合いが一番よ! よし俺についてこいっ!」
「おう!」
「わ、わかりました…やべぇ…緊張してきた」
見た目に自信が無いから笑われそうで怖いんだよな………
「ええぃ! なるようになれっ!!」
「?? どうした気合なんか入れて?」
「なんでもないよ、さぁ行こう!」
頑張れ僕、超頑張れ…!!




