SP-05 【ヤスオ君アクティブスキル披露会(ほぼ強制)】 Ⅰ
昨日交通事故にあいまして、大怪我はしなかったのですが
2トントラックにバックから踏み潰されました(汗 幸い背が小さいお陰か何かで比較的軽症ですみましたが、痛みが残っていて文章を書くのが少し大変です。
もしかしたら日が空いてしまう可能性がありますがどうかご容赦ください。
―翌日
超豪華で大繁栄していて住民が10万人を超えている(という町長の空想99%込み)ホープタウンの中心、名物の巨大噴水の元に沢山の人間達が集まっていた。何か大きなイベントがある訳ではないが、これからある催し物が始まるのだ。
ヤスオの事をよく知っている自警団の面々や、知り合いの冒険者達、日頃世話になっている人達や妹のような存在がこぞって此処に集まっている。
そして今回の主役であるヤスオはこの状況に戦慄していた―
「どうして…どうしたこうなったんだ…? 仕事で来れない人以外殆ど来てるんですが…なにこれ…」
どうしてかと言えば、ヤスオが気軽に【変身系】のスキルを覚えたと皆に言ってしまったからだろう。冒険者達は様々な技、魔法、スキルを持ってモンスターと戦ったりダンジョンを探索したりするが、その中でも自身の姿を変えてしまう【変身系】スキルと言うのはそこそこ数が少なく、人気が高い。
皆変身ヒーローが大好きなのだ。
「それにしても気絶しててレベル10になったの気づいてなかったってなんて言うか凄いヤスオらしいよなぁ」
「あ、あははは、そ、そうだよねぇ…」
アルス達と念話で話し合った結果、ステータス的にはレベル10でも十分通用すると言われたので説明したのは良いが、元来小心者のヤスオはズキズキと心が痛くなってしまう。どうして自分も皆と同じレベルアップ式じゃなかったんだろうと、そんな事を考えてしまっていた。
「それもおめでたいですけど、何より変身スキルに凄い興味があります! やっぱり冒険者はこう言う特殊スキルを覚えた時が一番盛り上がりますよねっ!」
昨日より知り合いとなったカトルが興奮気味に言う、彼もまたヒーロー物が大好きだった。そしてその隣でシーフのコリーがニマニマ笑顔で同意する。
「だよねぇ♪ こう「必殺技」!! って感じがするし。窮地に使って大どんでん返し! とか魅力的だよ羨ましいねっ!」
「【マジックフォージ】や【ストラグルアタック】【必殺必中】【スティール】【ワイドヒーラー】基本的なクラスのアクティブスキルですが、これ以外にもそれぞれが固有のスキルを覚えたりします」
カトルのパーティでアコライトをしているスノゥがスキルの基本について詳しく説明する。容姿も然ることながら、男性達が目が行く所はそのはちきれんばかりの胸だろうか、腰にまで届きそうな黒髪に白いアコライトの正装が清楚さを醸し出しているが、どうしてもそこに目が行ってしまうらしい。スノゥ自身この無駄に大きな胸がコンプレックスだったりする。
「いつまで見てんのよっ!」
「ほげっ!?」
ファッツの頭部をカリーナがどつく。小声で見るなら私を見なさいよとか言っていたが、いい感じにふらついているので聞こえてないだろう。
「こ、こほん。流石に私達のレベルでそれらの特殊覚えるのは難しいですが、それでも低レベルで覚える人も居ますね。私は基本的なアコスキル【ワイドヒーラー】を使用可能です【運】が低いので2回だけですが」
クラス依存スキルは自身の【運】の数値によって使用回数が変わる。最低1回で、最大が5回だ。基本的に【運】が5を超える人間やモンスターは殆ど確認sれていないので、その最大使用回数にすら届かない者も多い。
「ほんとびっくり箱みたいな子よねヤスオって。今からどんなバフになるのか楽しみだわ♪」
「ヤスオの事だしどーせ見た目が更に白くなるとかそんなのでしょ。白大福、ふふ、おいしそうじゃん♪ 食べられないけどな♪ それにしてもどさくさに仕事休めてラッキー♪ グッジョブヤスオ」
今日はここにセイルも来ているので店は自動的に閉店になっている…が、人生そこまで甘くない。
「何考えてるかまるわかりだぞお前? 言っとくがこれ終わったら搬入の仕事があるから休めると思ったら大間違いだぞ」
「畜生! 神は死んだっ」
この半月で見慣れた光景に誰もが笑っていた。その近くでは同じく一緒に探索に出ることの多いマリーが面白そうにヤスオ達を見ている。
「ヤスオさんなんだか凄く途方にくれてるなぁ…小さな町だからレベル10とアクティブスキルなんて覚えた身内が居たら大騒ぎになるのは当たり前だよね、私も凄く興味あるし。どんなスキルなのかなぁ? でもこういう場合って大抵、オーラとか纏うだけで地味っぽいけどそれはそれで皆おもしろいって騒ぎそう」
見た目は人の良さそうな少女だが、その実態は母親の血を受け継ぎ、面白い事と賑やかな事が凄まじく大好きなマリーだった。
「しかしまぁ、よくもこれだけ集まったもんだ。私を含めて皆暇人+お祭り好きなんだろう。さぁヤスオ愉快な姿になるといい。オーラっぽいの纏うだけだったら罰ゲームとして私に奢れ」
「なにかぼそっととんでも無いこと言いませんでしたかっ!?」
こちらはこちらでナナが普通に無茶振りし、その隣ではセリナが笑顔でヤスオの事を見ていた。
初めの内は笑い方もぎこちなく、よく泣いていた姿を見たことがある彼女にとって今の自然な笑顔を見せてくれるヤスオがとても好ましい。新しく出来た家族の様な、兄の様な人だから、ここまで皆と打ち解け仲良くなっている姿を見るのが嬉しかった。
「スキルとかはよくわからないですけど、ヤスオお兄さんにこんなに知り合いが出来て嬉しいです」
「何だ此処に天使がいるぞ」
「あ、わわ…」
ナナの真顔のツッコミにわたわたしてしまうセリナ。
「はいはい、そこまでにしてくださいね。所で…【トランスブースト】…意思の鎧を身に纏う―だったわね。効果は魅力的だけど、デメリットが激しすぎるのがネックね。そうそう使えるスキルではないから、今回発動して様子を見てみましょう。回復役にスノゥさんも来ているし問題はないわね」
【―のーないかのん― ヤスオさんがレベル10! レベル10よっ! もう少し頑張れば私と一緒に中級クラスに! これは更に信頼関係が深まるフラグ!! それにしても流石ヤスオさんのコミュニティ力……10人を超えるような知り合いが来ているなんてすさまじいわっ!! あれね! 夜拝んだら私にもご利益がありそうだわっ!】
表は完璧超人と言って差し支えないカノンではあるが中身は結構こんなものである。
「………ぉー……」
「何この子きゃわゆい…そしてなして服がボロボロなんでせう? 更に言えば誰も指摘しないのが不思議」
「あー…アリアちゃんだしねぇ」
「……??」
あいも変わらず無表情を固定したまま拍手をしているアリアオロに若干驚いているコリー達だが、彼女の姿はもはや見慣れてしまったので、誰も何も言わないのが現状である、そんな中でもセレナだけは「せめてフード」だの「ケープでも羽織りませんか」だのと甲斐甲斐しく世話している。どちらが年上かわからなくなるシーンだった。
「兎にも角にも…なんか大事になった気がするけど、ぶっつけ本番じゃ怖くて使えないしここでスキルの能力を確かめるのが妥当だよね」
「はよ、ネタ提供はよ。笑ってやるからさ♪ 頭だけ光るとかだったら一日中笑う自信があるわ」
「おめー本気であとで覚えておけよ、坂から転がしてやる」
目が割りとマジだった。
「それじゃやってみます。スノウちゃん終わった後回復お願いするよ。いくぞっ! 【トランスブースト】!!」
気合を入れ、初めての変身スキルを使用した―
―ヤスオの【トランスブースト】!!
―意思の鎧が形成される!!




