SP-04 【お久しぶりです(爆笑)】
誤字指摘はとても助かります、返信を返せないのでこの場で皆さんにお礼申し上げます。今回ものんびりした感じですね。本格的なイベントはもう少し先でしょうか。
「なんだろう、この十数話位放置食らってた感じは」
夜の宿屋、今日も今日とてアタックを終え身体を休めている。
アリーは今日は我等が鈍感人間、アルスと深夜のデート…という名前の飲み会に行っている、姉としてはいい加減に進展してもらいたい二人の仲という事で参加は遠慮しておいた、さらに言えば日課になっているヤスオとの念話の方がもっと大事だからとも言う。今も今日あったことや昔のことなど色々なネタを話題に話し合っていた。
【でさー、アルスのお馬鹿がうっかりトラップ踏んじゃってねぇ…】
【んなっ!? だ、大丈夫なんですかっ!?】
切羽詰まったようなヤスオの声。トラップに引っかかれば大ダメージやそれに近い被害は免れない、下手すれば一瞬で死んでしまうこともあるから彼の心配する声も当然だろう。
【アラームって言うトラップだったから直ぐに何かあったわけじゃないけどね。1時間位わんさか出てくるモンスター退治してたお。更に言えばそいつら経験もドロップもないスカモンスターときたもんだ。勿論アルスは〆ました、アリーが物理的にね】
あの右は世界を狙える、ティルは確信を持って言える。
かなり心配してた所に、あっけらかんとしていたのでこう、カチンと来たようだ。ティル自身もちょっとばかり頭に怒りマークが出たのは内緒である。
【いやでも、無事で何よりです。アルスさんはご愁傷様というかなんというか……そう言えばシーフが居ないんですよ、ダンジョンは毎回シーフ雇ってるんですか?】
【いんや、そこそこ大きい町だし即席でいけてるお。たまーにハズレもいるけどね、大体はこなせてる感じかな。50ターンじゃ最近足りなくてねぇ…早く上級になって良いダンジョンに行きたいもんだよ】
ティル達がメインとしているこの町では中級ダンジョンが複数ある為か様々な冒険者が一攫千金を夢見てやってきているので、わざわざシーフを探して契約する必要はなく、そのへんに居る使えそうなシーフに臨時パーティを申しこんだり、逆に申し込まれたりしていた。レベル15~17ともなればほとんどがまともなシーフばかりなので、苦戦したり仲違いすることも少ない。
少ないだけど何度かハズレは引いてるが―
【それにしてもパーティとはいえもうブラウンベアーに勝てたとは流石ボク等が見込んだ子だおっ! お姉さんも鼻が高いってなもんさ♪ これなら直ぐボク達と行けるようになるね。早くこいこーい】
【勝てたと言っても、8割~9割カノンがどうにかしてくれたからですし。今の僕じゃ、削り合いで負けちゃいそうです。まだまだ修練が足りないですよ】
ヤスオも鍛錬や戦闘は欠かしていないが、どうにも一撃が軽い為、熊に安定してダメージを与える事が出来ない、小剣ではダメージが入りにくい上に射程が短い為急接近しなければならない、それ故に攻撃を回避しにくいという弱点もある。スピードタイプのヤスオではあるが、攻撃を回避するほどの技術はまだまだ身についていない。大きく避けてしまえば攻撃を避けられても此方の攻撃を当てるのが難しくなるのだ。
魔法で攻めれば安定して攻撃できるが、あくまでもヤスオはスイッチタイプ。魔法だけに傾注する訳にはいかず、愛剣であるショートソードを使い続けることに拘っている。
そんなヤスオを知ってか知らずか、微妙な表情でティルは呟く。
「カノンって子を初め、アリア、ミキ、セレナ、ナナさん? なぜヤスオの回りに女の子ばかりが、むむむ……なんかムカつくお。これが姉心か……弟をとられてたまるかお」
フィルやファッツ、ハウルなどの方が彼女達より出会っている回数が多いし、ヤスオも自身の見た目があるので、用事がない限りは軽く話す程度に留めてたりするのだが、そんなことは彼女にとって忘却の彼方らしい。
【どうしたんですか?】
【とと、なんでもないお。とりあえずヤスオ? そのダンジョンは気をつけるんだよ? 無理は禁物、急がば回れだかんね?】
どうにも無茶をし過ぎるきらいのある弟分に再度指摘する。頑張っている姿を見たり、話を聞いたりするのは彼女としても嬉しいが、無茶をしてまた死にかける状況になるのは嫌なのだ。
出来ればこっちに連れて来て安全安心に見守って育ててやりたいが、それではヤスオの成長に繋がらないのはわかりきっているので、流石にそれは出来ない。最近はますます弟大好きを拗らせてきている気がする…というかアリーもアルスも思ってたりするが、姉パワーは誰にも止められないのだった。
【了解です! 無理して全滅したら終わりだし気をつけます!! って、カノンから【念話】? なんだろ次の休みの日のダンジョンアタックについてかな? あ、すいません知り合いから【念話】来たので、此方はそろそろ切りますね。ティルさんもゆっくり休んで下さいね、お休みなさい!】
―【念話】を終了した!!
【え? ちょ!? ヤスオ? ヤスオーーっ!?】
「切れたお…」
念話が終わり、ぽふっと音を立ててベッドに倒れこむ。特に何かあった訳ではないのに、なんとなく寂しいと感じてしまうのは何故なのだろうかと少しだけ物思いに耽る。
顔を枕に押し付けて意味もなくごろごろと転がったが、やはり何かが足りない気がした。
「なんだろうね、このよくわからんムカムカ感は。よーし多分アルスのせいだお」
胸に残るしこりの様なものを払拭するためにアルスを明日弄り回そうと画策する。アルスが明日倒れる事が決定した瞬間だった。
「んー……もう寝よっ! 明日だお明日! 明日は何を話そうかなぁ」
そのまま眠りにつくまでに大した時間はかからなかった―
―オマケ
【―のーないかのん― お、おおお、おちけつっ!? ね、念話よっ! ただの念話なんだから! そう! 次のダンジョンアタックについてた、ただ相談するだけなんだから! こ、これはぱーてーとして当然! 何の問題もないのよっ! 今日の念話の為に一週間頑張って内容も考えたんだから! さ、さぁ行くのよかのん! 負けるなかのん!】
ちなみにこの3時間後に漸く【念話】を使いヤスオと会話することに成功している。終了後悶え転がっていた姿を見ていたものは、人形しかいなかった。
―続く




