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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
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03-01 【無知の中の研鑽】 Ⅰ

もう少しの間彼一人の話が続きます。

先の見えない現状、もし自分がこうなったらと思うと怖いですね。

―翌日


 夜が過ぎ洞窟の外が少し明るくなってきた。

 夜中に眠れば殺されてしまう可能性があるから夜は必死に睡魔に耐えている。

朝の少しの間…ほんの数時間しか休む時間は無い。


 ほとんど眠れない生活は元々無い体力を更に奪うし、眠ることによっての身体の回復も行えないのが辛い。


 身体をゆっくり動かし今の調子を改めて調べていく―

 全身がだるいしまだあちこち鈍い痛みが走っているが、それでも動く分には問題は無かったようだ。骨が折れていたら熱が出るというし恐れていた骨折も無い。


「今日ゆっくり休めば明日からまた動けそうだ…腹は減ったけどこの状態でウサギやハウンドに出会ったら今度こそ殺されるだろうし、万全の時でもあぁなったんだから慎重にいかないとな…」


 身体が治ったらまずは食料を集めないといけない。

 食料…というか魚は今日の分、2匹程度しか残っていない。少しは魚を取れるようになったが、冷蔵庫などの保存する物がないから集め過ぎても腐らせてしまうだけなのでその辺考えなくてはいけない。


 干物にする手も考えたけど、普通に干せばいいのだろうか…魚の干し方なんて流石にやったことも調べたことも無かった。


「草とか食べられるものがわからないからなぁ…あ、後武器を探さないと…

昨日長い棒に牙を取り付ければ槍とか考えたけど、固定するものがないな…

下手に作ってダメな武器になったら、普通に殺されるよな。」


 簡単に想像してみたが、攻撃した瞬間に穂先が取れて慌ててる所を食い殺される―まで普通に予測できた。せめてイメージトレーニングでくらい勝てよ自分。


「持ちやすい棒状の物があればナイフで削って簡易な槍に出来るかもしれないけど、そんな槍に使えそうな棒は今の所見つかってない。ノコギリや斧があれば木を切って…ってか、それがあるならそれを武器にするよ、馬鹿か僕は。」


 そんな事をあーだこーだと考えながら時間を潰していく。

 洞窟から動けない現状やることがそれしかないのだけど…魔法の本は今読んでも意味ないしパソコンとかがある訳でも無い、色々これからの事を考え予定を立てていく事しか出来ない僕だった。


 ふとそんな時あるものを思い出し本がある場所まで移動する。


「そういえばこれ…何なんだろうな。」


 初めてウサギを倒した時に手に入れた少し大きめのカードを手に取る。

 薄さとかはトレーディングカード位で材質は何だかわからない。折り曲げ様としても曲がらない所を見ると金属か何かなのかもしれないけど羽のように軽かった。絵柄などは何もなく見た目は白い板っぽい。


「ファングラビットカード、【鑑定】で調べてわかったけどどうやって使えばいいんだろう?」


 効果は【速】+1。つまり素早さが上がる効果があるらしい。

 足が早くなればウサギの攻撃を避けられるかもしれないし、逃げる事も出来るかもしれない、たった1だとしても今漸く3しかない僕には十分な恩恵だ。


「使えれば…だけどね。ゲームとかなら武器とか防具にセット…ってこんな微妙に大きいカードをどうやってセット―…!?」


―情報が解禁されました!!

―【???】→【カードスロット:3】

―ファングラビットカードをセットしますか? 

―1度セットすると外せません。上書きは可能


 頭の中でもう慣れた文字が流れていく。

 なんとなく感じていたが自分の想像以上にここはゲームみたいな世界の様だ。

呆れとも驚愕ともつかない感情が自分を襲う、とりあえず調子に乗っていた時に分からなくてよかったと思う。もしあの時なら確実にはしゃいでいただろう、その先にあるのは死だ。


「もう、訳がわかんねぇよ……とりあえずセット…」


 頭の中でカードをセットしたいと望むと持っていたカードが白く発光しそのまま消えた。ステータスを覗いてみると確かに【速】が1点上昇している。


「上昇したんだからもう考えるのはやめよう、今考えても仕方ないし…そういうもんだと思っておくしかないな、便利なのには間違いないんだから。」


 可能性に賭けて武器や防具の鍛冶を想像したり空想したりしてみた。

 普段からそういう妄想だけは得意だったので、様々な事を思いだしながら想像してみる…が、やはりそこまで甘くないらしく何も起こることはなかった。


「ま、予想してたよ。人生そんなに甘くないよな。」


 もし覚えたらラッキー程度だったので何もなくても落ち込みはしなかった。

 先ほどのカードスロットはステータスを見る限り元々あったものが判明しただけなんだろうと思う。


 改めて頭の中でステータスを覗いていく。

 力や早さHPなどの他に、攻撃力や防御力に攻撃ランクなどというものまで見れた。防御ランクも表示されていたけど【G】ランクとなっている。


 攻撃ランクも同じく【G】だった。試しにショートソードを持ってみた所、

【D+】にまでランクが上がっている。このランクが何を示しているのかは知らないけど、確実に防御が低い事だけは理解できた。


「服は防具として認定されてないんだろうか…防御力が3しかないからなぁ。このステータス通りなら今の僕は攻撃力は高いけど防御力がカスレベルって事か。まぁ、身体なんて鍛えてなかったし防具も無いんだから当然か」


 ちゃんとした防具でもあればウサギの攻撃も防げるのだろう。

 あの死体がつけていた防具っぽいのは半分以上壊れてたしかなりスマートだったらしくデブな僕には装備できない筈だ…というか死体がつけていた防具を装備する勇気はあの時の僕にはなかった。


 今なら強制的なダイエットのお陰で多少痩せてきているし万が一があるかもしれない。死体の恐ろしさよりウサギのリアルな恐怖の方が何倍も怖い。


 装備できるなら拝借しようと思う。武器やら魔法の本やら色々奪っておいて、ついには防具まで剥ぎ取ろうしている僕は、どう考えても墓荒しにしか見えないな…


 洞窟の隅に移動させていた死体まで到着した。ここまで動くだけでかなり体力を使う、やはり今日は休んでよかったと思う。


「……うーん…」


 肉も何もない完全な白骨死体がそこにあった。まだ若干怖いけど、襲い掛かってくるわけでも無いのでまだ耐えられている。もしこれが襲ってきたら…流石に骨には勝てるかもしれないけど。


「スケルトンって流石にウサギより強いよな…骨だもんな…動き出さないでくださいお願いします。」


 十字を切ったりお経を適当に唱えつつおっかなびっくり死体が身につけている防具を確かめていく―


 まず身につけているのは胸当てのようだ。

 革か何かできているようだけどかなりボロボロで使い物にならない。腰の防具もこれまたどうしようもない状態だ。着ている服はあちこち破けているのでこれも着ることは出来ないだろう。


「………ダメか。いい考えだと思ったんだけどな。」


 結果は惨敗、使える装備は何一つなかった。

 アイテムなども他には持っていないし、死体を荒らして得たものといえば

死体を見てもあまり怖いと思わなくなった所だけ。ゾンビなどが居たら飛び跳ねて逃げる自信はあるけど。


「防具は無し…いつもどおりさ、いつもどおり」


 死体を片付けてまた横たわらせる。

 20歳のニートの中で一番死体を触っている人間としてギネスに…なんて馬鹿な事を考えつつ元の場所に戻ることにした。


 この後は特に何事も無く一日を過ごす事になった。モンスターにも会わず平和だったお陰で精神的には休めたんじゃないかと思う―



―続く




2015/09/01 ご指摘を受け修正しました…ウルフぇ…

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