24-07 【アタック開始】 Ⅴ
背中に弓を括りつけた少女が其処に居た。終始力の抜ける様なにこやかな笑顔ではしゃぎ回る子だが、この子も冒険者なんだろうか。
「ちょっとコリー! あんた先に行き過ぎ……!? 別の冒険者かしら…大丈夫…よね?」
奥の方から更に数人人がやってくる。目の前の彼女と同じく弓を背につけた少女…年齢的にはミキとかカノンと同年代だろうか、装備からしてアーチャー関連だとは思うが…
気の強そうな表情が僕等に気づくと一瞬で曇る。なんというか…そう、対人が苦手な僕みたいな状況だ。
「こ、こんにちは」
「あ……は、はい…こんにちは……」
かなりぎこちない表情で挨拶を返してくれた…がやっぱりというかなんというか目はこっちの方を見ておらず下とか右に泳いでいる。あぁ……昔の僕と同じで知り合い以外の人が怖いんだろう、こういう場合は下手に話しかけちゃいけない。こういう時に逆に親切に話しかけられると萎縮し申し訳ない気持ちになったり、心労が逆に増えてしまうから。
「あんたらも探索か? この奥に主がいる可能性がある進むなら気をつけて行け」
「は、ははははは、はひっ!?」
ハウルさんはハウルさんで他の冒険者の人に話しかけて……めっちゃビビってるな…あれ、ここから見えても怯えてるのがわかる。ま、まぁ…ハウルさんってイケメンで寡黙だから威圧感凄いしな…怒ってなくても怒ってるように見えるときあるし。
そんな中ただ一人の男性がハウルさんに頭を下げていた。
「情報ありがとうございます。実は僕達敵が強くて戻ってた所なんですよね…MPが回復すれば【帰還】で回復出来るんで安全地帯を探してて、まさかブラウンベアーが普通に出てくるなんて、必死に逃げないと死ぬところでしたよ」
「んっふっふ。私が囮になってなんとか逃げれたんだよね~。あ、私シーフね、コリーでいいよコリーで。所でさ~? 物は相談なんだけど魔力のポーション分けてくれない? こっちで拾ったアイテム渡すからさ、うちのアコのMP切れちゃって回復剤も無いんだよねぇ」
「面目ありません…回復で精一杯でして」
「どうするヤスオ? 俺等はヤスオがいるからまだ回復系のポーションとかも使ってないけど…?」
「物によるわね、流石にポーション複数でうだうだ言うつもりは無いけどゴミを渡されても困るわ」
僕の代わりにこういうのに慣れているであろうカノンが答える。
僕としてはまだ余裕はあるし渡しても問題ないが―
「こんな所でどうでしょう? この中から選んでもらえたら」
おそらくはリーダーであろう男性…女性4に男性1、羨ましいとか以前に気まずそうだな……が提示してきたのはハウンドカード5枚か黒鉱石5個、欠けているが綺麗なルビーを2個用意してきた。
ハウンドカードは魔力のポーションと大体1:1で交換できるし、黒鉱石は1個10万Rもする鉄より硬い鉱石で、僕がほしい位のアイテムで、ルビーはかけてても1個数十万は軽い。余程緊急…ってかMP回復したら戻れるんだから、それを踏まえてなんだろうな。
「あー…と、僕の魔力のポーション4個と黒鉱石2個で交換しますよ」
「え? そんな悪いですよ、これ5個とも貰って下さい。無理やりお願いしてるのはこっちですから」
「いえいえ、対価はこれで。後皆さんまだ怪我してるようですね、よかったら回復魔法使いましょうか? お代とかはいいので」
「そりゃありがたいね、やったじゃんミラっち、やっぱり人生紙風船じゃないよ。人情はあったんだよ」
語尾に(爆笑)とか付き添うな笑顔をしてる彼女が一番あちこちに怪我をしてる、どうやらシーフらしいがこっちのミキは全く怪我もなんもしてないんだよな…目の前の子はにこやかな様子だけど、きっと皆のために頑張ってるんだろう。気合を入れて回復してあげないと。
改めて一人一人に治癒をかけていくとアコライトの子がカナリ驚いていた。武器を持ってるから前衛タイプの回復低いアコだと思われてた様で、自分より回復力が高いと尊敬の眼差しで見られたのは気恥ずかしかった…
「ふぅ…これで大丈夫、と。気をつけて帰って下さいね」
「交換に応じてくれたばかりじゃなく無償で回復まで、この御礼は必ず。僕達暫くの間このダンジョンの近くの町、ホープタウンに逗留しますので何かあればいつでもどうぞ!」
リーダーの男性、名前はカトル君と言うのだが、彼が元気に言う。皆一様に頭を下げ、その後【帰還】で戻っていった。時空魔法…本当に便利だなぁ。僕も覚えられたら帰還の羽を誰かに渡せるんだけど。
「賑やかな奴らだったな、それにあの男、結構強そうだぜ」
「うん、武器を持ってなかった所を見ると素手タイプのファイターかもね。ボクと同じスピードで翻弄する感じかな」
「さて、探索を再開するぞ。ヤスオ、アイテムの消費を考えてそろそろ撤退も視野に入れておけよ?」
「わかりました!」
残りターンは20ターン位残ってるが、次戦闘があるかイベントがあったら帰ろう、気を引き締めて行かないとな。
「………ヤス…オ……行こ……?」
「うん、行こうか」
「……ぉー」
アリアちゃんが手を真上に上げてとことこ歩いて行く。
「って!? 前いっちゃあぶなあああああいっ!!」
彼女から目を離しちゃいけない、改めてそう思いました―




