24-03 【アタック開始】 ※長期ダンジョンアタックパート
ダンジョンアタック開始です。のんびりとお楽しみ下さい。
アタック系は長くなるので幾つかに切り分けます、どうかご了承下さい。
ダンジョンアタック時は題名もちょこちょこ変わりますがあまり気にしないでください。
―ダンジョン【ざわめく死者の通り道】
「全員居るな? 点呼を開始する、1だ」
「2です!」
「3よ」
「4だっ!!」
「………ごー……」
「お宝ザクザク楽しみよね、自警団員居ること除けば…あ、6ね、6」
薄暗い街道の様な場所、至る所に朽ちた廃屋や墓がありそれらが伸びきった草木で隠されている。普段感じる気温から数度下がったような肌寒さに黒っぽい霧が周囲に立ち込めている。
ダンジョン【ざわめく死者の通り道】それがここだ。今日は気心のある程度しれた皆でパーティを組み、初ダンジョンアタックを開始する。
今日の点呼は近場にあるダンジョンと言う事で色々よく知っているハウルさんにお願いしてもらっている、今は注意事項などを聞いている所だ。
「名前からして分かる通りここは低ランクのアンデッドが出てくる。力量的には異様にタフ力の強いヴァイパーと思っておけ。それよりも怖いのはブラウンベアーがよく出てくる所だ、後は見慣れたモンスターも居る。罠などもいくつかあるが宝箱もそこそこあるようだ。気を引き締めていけ」
「ブラウンベアーかぁ、今の俺で何処まで喰らいつけるかだな」
「あまり前に出過ぎないように、熊の攻撃力をなめちゃいけないわよ」
「わかったぜカノン」
フィル君がやる気を漲らせている。ダンジョンに誘ったら一瞬で了承されたし余程行きたかったんだろう。お金や財宝がほしいんじゃなくて単純に強くなりたいんだな、今日はやるぜとガッツポーズをし意欲十分だ。
「ダンジョンねぇ、私は入った事ないけど確か時間で追い出されるんだっけ? 目の前に宝があってでも帰還なんて私めっちゃ嫌なんだけど」
「貴様は宝箱より先に罠に警戒しろ、それが得意なのだからそれをやれ。後このダンジョンはターンが50だからな、覚えておけ。システムメッセージを見れば今が何ターンかわかる」
ハウルさんの言う通り脳内のシステムメッセージを読む。これにもいい加減なれたもんだ、初めは脳内に文字の羅列がばばばばばっと出てきて驚いたけどこれはこれで便利だし、その気になればメッセも消せる。戦闘中に流れるメッセは面倒だし邪魔だけどある程度の指針が出来るから敢えて残してる。普段の生活じゃ消してるけどね。
「50ターンかぁ。短くねぇか?」
「………普通……短…いの…もある……」
「アリアの言う通りだ。ダンジョンの中には10~20ターンしかない場所や逆に50以上やターン数が存在しない場所もまれにある」
「そうなのか、ターン数が無いってのはいいかもなぁ」
「戯け、50ターンもやすやすと潜れると思うな? 中級や上級者ですらたやすく死ぬダンジョンを簡単に踏破できるはずあるまい。様々な罠などが俺達を手くずね引いて待っているだろうさ」
ハウルさんの言う通りだな、確実にフィールドより強いモンスターが出てくる場所に瘴気の所為で出てくるトラップやフィールド効果…気をつけなきゃいけない事は沢山ある。パーティ全員で一丸になって行かないと待ってるのは…全員死亡っていう恐ろしい未来図だ。
「よし! それじゃ皆頑張ろう! 安全第一で!」
「ヤスオにさんせ~! 安全第一大事よね」
前衛にフィル君とハウルさんそして僕が立ち、後衛にミキ、アリアちゃん、カノンとスタンダードな割り振りでダンジョンを歩いて行く。
「この瘴気ってマジで黒いんだな…吸っても大丈夫なのか?」
「何日も大量に吸い込むと呼吸困難や体調不良になるわね、学者さんが調べた結果人体に有害な毒素が含まれているそうよ」
「うぇ…それやばいんじゃ…」
リアル天然毒ガスって訳か…さらにカノンの説明を聞くと。通常の人間なら1日1回数時間外の空気を吸えば瘴気は抜けて問題は無いらしい。致死性はそこまで高くないが、問題がいくつもある。
「瘴気はモンスターの空気、そう呼ばれるほどモンスターが体内に取り込んだり吐き出すの、強いモンスターほどこの瘴気の吸収量と排出量が異常なのよ。更に日によって瘴気は薄くなったり濃くなったりする、だから濃い瘴気で満たされている日のダンジョンは【ルナティック】と呼ばれるわ」
「ダンジョンの宝や罠もこの瘴気によって形作られるそうだ、どこまで信憑性があるか分からんが、罠に関しては合っているだろうな。現にフィールドや人の住む瘴気がほぼ視認出来ない場所に宝箱や罠はない」
「なるほど…瘴気の量がダンジョンの内部に作用してるんですね」
「えぇ、後瘴気はダンジョンの空間を歪める…一度入ったダンジョンにまた入っても同じ道を歩くことはほぼ稀よ」
「空間が…変わる…? それじゃ出られないんじゃ」
入る度に道や部屋が変わるってますますRPGだなぁ…問題はその場合どうやって帰還するかだけど…
「……方法……いく…つか……ある…」
「アリアちゃん?」
「……魔法……アコラ…イト…の……【帰還】……アイテ…ム…帰還……の羽………テレ……ポーター……フィー…ルド……タイプ……なら……普通…に……出れる……時…も……ある……」
「遺跡タイプや中に侵入するタイプでは一度入れば自力で出るのは厳しいな。だがターンは時間経過でも減る、だいたいは別空間に移動した時に消費されるがな。帰還アイテムや魔法がない場合にやり過ごす方法がこれだ」
「テレポーターって何よ?」
「ダンジョンは多くの冒険者が侵入する。奴等がこの状況で簡単に戻るために熟練の時空魔道士を雇い、ダンジョン内に【外に出るため】だけの移動魔法陣を設置することが多い。これがテレポーターだ。破壊されてれば使い物にならんが、だいたいはモンスターもこれを放置する」
色々良く出来てるんだなぁ……でもやばい時に直ぐ戻れるのは助かる。セイルさんから貰った帰還の羽は万が一の為に取っておかないと。
「んー……あんた達止まれ? なんかあそこにある」
額に手を当てて遠くを見ていたミキが僕達の足を止めた。
「……罠は…ないわね、これ飲水?」
不釣り合いなほど綺麗な噴水から綺麗な水が溢れていた、噴水の中に幾つかの葉っぱが浮いている以外は汚れも何も無いし、この周りだけは瘴気が消えているが……
「恐らく回復の泉ね。瘴気が吸われた出来た空間にこういうものがあれば稀に出来るのよ。飲めば体力、HPMPが回復するけど持ち運んだらただの水になるしここを起点にしてモンスターを倒すという感じなら使えるかしら」
「となると、潜ったばかりで探索予定の僕等じゃ」
「今出てきてもらっても困る施設よね…とりあえず進みましょう?」
はじめにHP回復する施設があってもなぁ…名残惜しいけど先に進んでいく。
ダンジョンを歩いていてわかったんだけど、ある程度進むと空間が微妙に歪んだのを視認出来た。そのタイミングの時に残りターンを見てみると48になっている…成程、これかなりのハイペースでターンが消えてくんだな。
「モンスター出てくるなよ~?」
「アホか、モンスター出てこなかったらレベル上がんねぇじゃねぇか」
「モンスターなんてフィールドにわんさか居るじゃん、それでも倒してれば?」
「わかってねぇなぁ…そんなんじゃレベルが上がらねぇんだよ。強いモンスターを倒し技を閃いて強くなる! 俺も団長やハウル、ヤスオの様に強くならねぇと」
基本戦いたくないミキと、レベルを上げたいフィル君。よく分かる対比だな。
ちなみに僕はそこまでモンスターと戦いたいって訳じゃないし、宝箱もそこまで思い入れはなかったりする。
ただ皆と一緒に行動するのが楽しいし、あの人達に追いつくためには経験も力も必要だから頑張ってるんだ。
強くなりたいけど出来れば年がら年中戦いたくはないなんて、ダメ人間な所は変わってないなぁ…こんなんじゃだめだだめだ。
「うしっ! やるぞっ!」
「うひゃっ!? な、何よいきなり、吃驚するじゃないのっ!」
気合を入れると驚かれる僕でした―




