24-02 【準備と合法ロリと防具屋】
ダンジョンアタックともなれば色々必要な物が出てくる。そういう訳で今日は1日買い物と準備に費やそうと外に出ていた。
既に俺の塩でミキのダンジョンアタックの取り付けとアイテムの補充をしてきた。運良く土魔法の書も売っていたので買っておいたから家に戻って準備が終わったら読む予定だ、土魔法といえばオッターさんが使っていた土の防御魔法がある…あれはすごく格好良かった、地面からせり上がる巨大な鋼の壁がモンスター達の進路や退路を塞ぐあの手際…僕もいつかは出来るようになりたい。
他には水筒に簡易食料、ティンダーボックスに丈夫な袋にポーションと必要な小道具は全て揃え終わった。セイルさんが言うには簡易食料は正直美味しくないから覚悟しておけとの事だ…大丈夫です、あの粗悪ポーションよりまずいものは無いと思います。あれに比べたらまずい程度の簡易食料なんてごちそうレベル。
ちなみにミキの分の道具も僕が揃えておいた。なんせあいつお金ほとんど持ってないし…ほら、スリだからさ。ここで稼ぐ予定だったらしくて持っているお金は必要最低限しかないそうなので、流石に手ぶらじゃシーフでもやばいだろうシーフツールや簡易食料、万が一のために毛布やテントなどはこっちで用意した。
それくらいなんとかして自分で出すとか叫んでたが、ダンジョン潜る前に自分のお金の心配をしろと言うに…スリとかで生きてきたからその辺の感覚抜けてるのかも…まぁ、お金はダンジョンアタックの後の報酬から引く予定だからこのままでいいさ。
「えーと……あった、ここだ」
次に目指した場所は防具を新調するために防具屋に向かっている。今つけている防具もまだまだ使えるし、防御力も結構高いがダンジョンに行くならもう少し防御力の高い装備を選ばないとなんでこの際だから買おうと考えたのだ。
武器屋はショートソードがあるし行く必要はない。寧ろ仕事がある日はほぼ毎日行ってるけど。
―防具屋【僕の店で売り子になってよ♪】
この町はこう……店名に不思議な名前をつけないとやっていけないんだろうか…親方の所の武器屋といい俺の塩といい…他の場所もだいたいこんな名前です。とりあえず中に入る。ここに来たのはほぼ三ヶ月ぶりだ、アルスさん達が僕の防具を見繕ってくれた時に来ている。
「あ、いらっしゃい。久し振りだね」
「ご無沙汰してますエリスさん。今日は防具を整えに来ました」
カウンターの所でちょこんと座る猫なのか犬なのかそれともウサギなのかよくわからない耳付きフードを被って顔を隠している少女、エリスさんが居た。
見た目はセレナちゃんより小さくて、声も少女というよりは舌っ足らずな感じのする子供みたいな感じだ、来ている服も白一色のワンピースに白い不思議なフードを装着してる、そして彼女こそこの店の店主だったりする。
決して子供ではない、年齢不詳だが……別段子供の振りをしてるわけでもなく純粋にこの服を着てるだけだ…ヘタすると幼じ……いや何でもない。
「そうなんだ、今のヤスオ君じゃ鉄装備は厳しいけどどれにする?」
力は結構上がってきたし体力もついてきたが、まだまだ重い鉄装備をつけて走り回るのは僕には無理だ、その辺見越して言うのだから凄いよな。フードつけてるから口の部分しか見えないけど。
「うーん……今の僕でも良さそうなの有りますか? 明日はダンジョンアタックなんです。戦い方はいつもどおりの速剣に魔法なんですが」
「なるほどね。となれば単純にバージョンアップで良いと思うよ? 今つけてるレザーをハードレザーに変えてみようか。今の君なら問題無く扱えるはずさ」
「ハードレザーですか、熊に出会ったら…大丈夫でしょうか?」
あのダンジョンはブラウンベアーが出ると聞いた。あいつの攻撃力はヴァイパーが1だとすると3~5位あると聞く。直撃したら今の僕じゃ一撃で戦闘不能、下手すりゃ即死だ。
「そこは速剣タイプなんだから当たる方向じゃなくて避ける方向で考えるべきだよ? 重装備で固める系ならそれこそ鉄とか鋼装備を推すし、それと大盾を持っていけば余程鍛えてない子じゃないかぎりは防げるさ」
「は、はい……」
「でもヤスオ君はそのタイプじゃない、速さが命の速剣使いはまず走り回って相手の攻撃を回避するのがメインだ。タンクと同じ考えでいちゃだめさ」
確かに…あたったらどうの以前に当たるほうが間違いって訳か……でも僕程度の実力じゃあ、避けても当たりそうで。
「ハードレザーは攻撃を受けるという前提じゃ確かに頼りないだろうね。でも十分な防御力はあると思うよ? 即死さえしなければ仲間が一緒にいる以上どうにかなるでしょ?」
「そうですね、今回はフィル君やカノンやアリアちゃん達が一緒なんで」
「あぁ、あの子達か。なら大丈夫だね、それじゃどうする? 勿論最終的に決めるのは君だからね。回避と高速移動を捨てて防御に走るのも手だよ?」
防御か機動性か………考えなくても答えは一つしか無いよな。僕の戦い方はスピード命の速剣術に魔法。今の時点じゃ重装備をして盾を担いでなんて役に立てなくなるだけだ。
「これとこれ、それとこれをお願いします」
「うん、これだね……全部で42万Rになるけど、2万おまけで40万でいいよ」
「え、良いんですか??」
「勿論、ダンジョンに行く子に餞別さ。頑張っておいで? あ、いらない素材とかあれば家に流してくれると嬉しいな♪」
にゅふふと笑いながら言うエリスさん、ここぞとばかりに突っ込んでくるんだから商売上手なんだろうなぁ。
「それじゃ、また来ます。素材とか持ってきたら」
「うむ、いい子だいい子だ。近い内に旦那と娘が帰ってくるんだけどね、娘の方が冒険者兼自警団員やってるから、今度連れて行くといいよ? そこそこ強いアーチャーだからね」
「え!? …あ、ありがとうございます…」
……驚愕の事実、結婚してたんですね…てか娘が居るんですね…旦那さんもしかしてロ……
「あー、言っとくけど僕は十分大人だからね? 旦那はロリじゃないよ?」
「はっ!? い、いやその…」
「あははははは♪ 若い若い♪」
凄い人だ…こう…なんというか……
何はともあれ防具の採寸も終わらせてから受け取り家に戻った。明日は本番だから出来ることは全てやっておかないとな。




