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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
64/216

20-01 【一人で万全等は無い】 Ⅰ

この世界の人は優しい人が多いようですが、この世界は優しくないようです。

―死線潜り抜け



―ヤスオは毒に犯されている。微小ダメージ!!

―ヤスオは軽い麻痺状態になっている。30%の確率で行動不能!!


「く、くそっ! このままじゃ…やばい…!」


 出血と毒、そして軽い麻痺に冒され満身創痍でその場に片足をついて座り込みかけるが気力を振り絞り気合だけで立ち上がる。


(逃げるんだっ! あの数を相手にするなんて自殺行為だ…! まだ鱗粉の麻痺はそこまで回ってない! 今のうちならまだ!)


―小さな太陽の指輪がきらめく! 

―HP6点回復 毒緩和中…麻痺緩和中…呼吸困難緩和中…

―ヤスオは逃げ出した………失敗!! 相手は追いかけてくる!!


「くそっ…! 全身の毒の所為で上手く身体が…!」


 今日もいつものようにモンスターを倒しに出かけていた。本当はフィル君を誘おうと思ったが、彼は彼で自警団の仕事で忙しい為今回はやめておいたのだ。装備も回復剤も整え、万が一のためのパライズモス対策【放水】で作った水をポーション瓶に入れ持ち歩く。油断はしないように、自分の力量を自覚して安定して倒せるモンスターをメインで戦っていたのだ。


(くそっ、【解毒】の魔法を使うには一度足を止めないと…! 今の僕じゃ走った状態だと集中出来ないっ)


 突如更に息苦しくなり咳き込むと同時に赤い血が溢れてくる。怖気と恐怖が走るがHPはまだ余裕がある、これは毒が身体を蝕んでいるんだろう…


「ごほっ! ごぼっ!! …やばい、口から血が出てきてる」


 後ろを見れば今自分を襲っているモンスターが嫌でも見える。


 パライズモスが2体、そしてヴァイパーが1体。どれも今の自分なら単体でならば倒せる相手だ。万が一、それぞれ1体ずつ現れたとしてもパライズモスの鱗粉さえどうにかすれば立ち回れる。しかし、今の自分ではまともに戦える数ではない。


 ハウンド3体を相手にしても苦戦している僕がそれ以上の強さと厄介さを持つこいつらに勝つのはかなり厳しい。


 勿論、馬鹿のようにこいつらに突撃した訳ではない。


 最初はヴァイパー1体だけだった。辺りにモンスターが居ないことを確認し魔法で攻めた。【蓮華】と【三散華】のコンボも考えたが、今の自分で確殺出来るか分からないため魔法での安全策をとったのだ。それがいけなかったのだろう。


 忘れていたのだ……絶対なんて無いという事を。森では死なないように細心の注意を払ってきたのに…町で平和に暮らしていたせいで忘れていたのだ。モンスターはただ狩られる存在ではなく、自分をあっさりと殺せる化け物だと言うことを。


 遠くから攻撃し、最後にとどめを刺そうと剣を構えて斬りかかった瞬間、後ろから衝撃と共に激痛が走ったのだ。そしてみっともなく転び、其処にヴァイパーの毒噛み付きがヤスオの防具が薄い部分を突き破った。混乱した頭で後ろを見れば、其処に居たのは今追いかけてきているパライズモス2体だったと言う訳だ。


 そして今の状態に至っている―――


「動けっ、動けよっ! 麻痺なんかしてる場合じゃ…ないんだ!! 逃げ切らなきゃ…! もしくは単体だけでもどうにかっ! ……!? まずいっ!?」


―ヤスオは麻痺している! 

―パライズモスAの攻撃!!

―麻痺しているので防御出来ない! 魔法を使えない!!


「ごぼっ!? う、うげぇぇぇぇぇっ!?」


―クリティカルヒット! ヤスオに中ダメージ!

―パライズモスBの攻撃!! 【鱗粉】発動! 

―ヤスオの【呼吸困難】が悪化!! 20%の確率で魔法使用不可能!


 後ろから体当たりを喰らい面白いレベルで飛ばされる。飛ばされた此方は溜まったものじゃないが。


 剣を杖代わりにして立ち上がる。HPはもう残り少ない、一手遅れたとしてもここで回復しなければ嬲り殺しにされるだけだ


―ヤスオは【治癒】を唱えた! HPが回復した! 残り8割

―ヤスオは逃げ出した! ……逃げ切れない!!

―毒がヤスオを蝕む! 微小ダメージ! 残り7割

―小さな太陽の指輪がきらめく! HP6点回復 残り8割


 戦いとは本来こういうものだ、どこかで自分はきっと腑抜けていたのだろう。自分が殺されるということ事を忘れていたのだろう。そのツケが今やってきてるだけだ。だが…だからと言って死ぬわけにはいかないのだ。


 前までは両親が誇れるために…そして今は彼等に追い付くために妹のような子にまた会うために、自分の様なダメ人間に良くしてくれる町の人のために。


「ごほっ…ごほっ……し、死ねるか……」


 絞りだすように叫び再び立ち上がる。


「こんな、こんな所で死ねるかぁぁぁっ! 戻るんだ! 僕は町に戻るんだっ!!」


 襲いかかってきたヴァイパーを剣で振り払い僕は脇目もふらず逃げ出す。鱗粉の呼吸困難が容赦なく体力を奪い、走る力を奪っていくが足を止めずに全力で駆け出していく。


(逃げろ! 逃げるんだ……! 逃げ切って回復するんだ!! 幸いアイツラからとの距離は徐々に離れてきてる! このまま行けばきっと! 苦しいのが何だ! この程度で諦めたら皆に笑われて……そして泣かれるんだぞ!)


 今日の夜はセレナちゃんが夕食を作ってくれると言っていた。朝出かける時は長屋のおじさんと軽い世間話ができた。


 それだけじゃない、セインさんが美味しい塩の話をしてくれたし自警団で医者のサイラスさんが僕のためにポーションを1個譲ってくれた。


 僕がここで死んだら、それだけの人を悲しませてしまうかもしれないんだ――


 ここでの僕は引きこもって誰も知り合いの居なかった僕じゃない…! 色んな人が、大切な友達が、守りたい人達が、追いつきたい人がいる!!


(両親にまだ土下座もしてないのに…! 死ねるかよおおおおおっ!!)



―ヤスオは逃げ出している………前方に何かを見つけた!!


「ごほっ! ……う、そだろ…!! 畜生おおおおおっ!」



―ハウンドAを見つけた!! 相手はまだ此方に気づいていない!

―ハウンドBを見つけた!! 相手はまだ此方に気づいていない!

―ハウンドCを見つけた!! 相手はまだ此方に気づいていない!

―ハウンドDを見つけた!! 相手はまだ此方に気づいていない!





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