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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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CP-09 【オッターの想い】

まさかの予約投稿を間違えて23日に2話同時にしてしまいました(汗

18時から書き上げてぎりぎり間に合わせました・・・原作には無い描きおろし(爆笑です

 攻撃魔法の使えないメイジなんて邪魔なだけだ―


 その見た目でそんな屑な魔法しか使えないでPTなんて組めるかよ。


 気持ち悪い、近寄らないでよデブ。








―【ホープタウン】フィールド



「ふむ…異常無しですな」


 一日中周囲のフィールドを見回り違和感はないか、もしくは襲われている一般人は居ないかを調べていた。今日も何事も無く終わりそうだとホッと胸を撫で下ろす。


 オッターがこうやってこの町のパトロールをボランティアで行ってから既に10日前後過ぎていた、事故やモンスターの襲撃もなさそうで安心している。


「明日も何事も無ければ良いのですがな」


「おや、オッターさんもしかして今日も見回りを?」


「おぉ、町長氏ではありませんか。えぇ、どうにも気になってしまう性分でして」


「いつもすいませんね、依頼ですらないボランティアに甘えてしまって」


「お気になさらず、これはいわば私の趣味の様なものですからな、ただの趣味でお金を頂く訳には参りませんとも」


 ニコリと笑いながら言うオッターに何度も町長のカーマインがお礼の言葉を述べる。実はこの前の大襲撃の後に町や自警団への寄付と言う名目で様々な物資やお金が送られてきたのだが、匿名で送られて来た為人を特定する事がその時は出来なかった。よくよくツテを使って調べてみた結果、どうやら…そう、目の前の彼、オッターに繋がって居たのだ。


「本当に有難う御座います」


「いえいえ、力無き一般の方々を脅威から護るのも冒険者の務めですからな、これ位なんでもありませんぞ」


「はは、貴方の様な冒険者の人も珍しいですよ」


「そうでもありませんぞ、この町には今、私などより立派になれる沢山の冒険者の卵達がおります、腐らせずに育てていけばきっと素晴らしい冒険者になるでしょうな」


 オッターが思い出すのはヤスオや前衛で戦っていた冒険者達。まだまだ駆け出しかもしれないが、それを導いていけば人を思いやれる立派な冒険者になれると信じている、その為にはかつて自分がそうしてもらったように、先輩冒険者として彼等の力添えをするのが使命だと考えていた。


 下級のメイジなりたての頃、相性が悪く攻撃魔法を一つも覚えられなかった時、ほぼすべての相手にパーティを断られた事があった。


 更に言えばお世辞にも格好良いなんて言えない見てくれの悪さ。衣服をまともに着ていなかったら浮浪者と間違えられそうな人相やどうしても痩せにくい身体の所為で常に人々から白い目で見られ続けていた。


 もしそのままで居続けたらオッターと言う人間は其処で死んでいたか外道に身をやつしていただろうと思っている。だがこの町は、この町でオッターは人の暖かさを知った、見た目など気にせず共に戦ってくれる存在が出来た。自分を導いてくれた、町の人や、先輩冒険者が居た―――


 だからこそ、自分が受けた恩を返すべく自らを鍛え邁進しつづけここまでたどり着いたのだ、いまだ頂点は見えず、攻撃魔法は使えないし見た目も変わりないが…それでも中級上位の冒険者として彼は完成した。


「私は、一人でも多くの冒険者が忌み嫌われずまっすぐに育つのを見てみたい。その為には苦労など苦痛とは思いません。よくよく変人と言われてしまいますがな」


「……いえ、素晴らしい考えだと思いますよ。この町はなんとか…冒険者の人とと町民が肩を並べて生きていける様になった…ですが、他の町や村、都市が全てそうだとは、残念ながら言い切れないですしね…」


「えぇ、これは私達冒険者の責任でもあります。我々は一般の人より強い存在……それを理解し、相手を思いやることが出来なければ溝は深まってしまうでしょう。町民にとって知らない冒険者と言うのは近くに居る恐ろしい化物にほかなりませんからな」


 モンスターは自警団が護ってくれる、勿論100%という訳ではないが外の脅威は自警団や都市なら軍隊が守ってくれる、だからこそモンスターは恐ろしいが彼等は安心もしていられる…が、冒険者はそのモンスターを簡単に縊り殺す恐ろしい存在にしか見えないのだ、冒険者も人間である以上まともに対応すれば問題はない…無いが、何の力も無い人が目の前に自分を一瞬で細切れに出来る様な存在が笑顔で近づいてきたらどうなるかなど、想像に難くないだろう。


「オッターさん……」


「だからこそ、我々もまたただの人であると皆さんにお見せしなければならないのです、そして有事の際は率先して皆を護る剣や盾、魔法になる。例え1回では無理だとしても、10回100回と誠意を見せていけばきっと…私は通じ合えると思うのです」


 だからこそ、冒険者達が悪しき道に落ちないよう、人に幻滅しないように手を貸し導いていきたいと考える、自分がそうしてもらったように。


「さて、お時間を取らせてしまいましたな。町長氏、私はこれで失礼を。夜道は何があるかわかりません、どうぞお気をつけ下さい」


「ははは、有難う御座いますそれではまたいずれ」


 お互い会釈を交わし反対方向に歩き始める。それでもこの瞬間二人の心は繋がっていただろう。


「私が感謝しているのは貴方にもですぞ、町長氏…このオッター、受けた御恩を漸くお返しできそうです」


 


―大丈夫かい? この町は悪人以外は全てを受け入れるよ?


―攻撃魔法が使えない? なら阻害魔法や補助魔法を極めてしまえばいいさ


―見た目? 私なんて最近生え際があれな位さ、気にしたものじゃあないよ




「……さぁ、明日も頑張りましょうか」


 熱い魂を持つメイジ、その熱は人を導く太陽の光の様に全てを照らしていく。



―20話に続く


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