19-01 【スリと魔法使いと世界の現実】 Ⅰ
沢山の閲覧有難う御座います。もう少しで総合評価3000が近づいてきました。
今年の目標が3000なので、頑張りたいです。来年は6月までに4000位目指したいですね。その為には楽しんでもらえるお話を書かなければ…(難題
―夕方 【ホープタウン】
きょ、今日の仕事はいつも以上にきつかった…鋼を打つってのがあんなにしんどかったなんて思わなかったよ。モンスターと戦ってるほうが疲労が少ないってのはどういう事なんだろうか、普段使ってない筋肉を槌打ちで使ってる気がする。そしてそれだけ忙しかった仕事で全然疲れてない親方は凄まじい…流石鍛冶屋って所か。
全身プルプルしながら歩いている様はどこからどう見ても老人とかに見えそうだ。てか鏡に映ってた自分をみてそう思いました、まる。
「だ、大丈夫ですか…? ふらふらしてますよ?」
「な、なんとかねっ! これ位でへばってちゃ親方に申し訳ないさっ! でも腕がめっちゃぷるぷるしてます、今は剣も握れそうにありません」
今の僕は幼稚園児にも負ける自信がある。とまぁ、そんなアホな事はともかく今日もなんとか仕事が終わり帰っている所だ、セレナちゃんが買い物があると言う事で途中まで付き添っているが、この辺は安全なので彼女が危ない目に会う事はないと思う。その辺を歩いている町の人も気さくに僕達に話しかけてきてくれるしね、皆良い人で家族のようなものだ。そしてめっちゃ生暖かい目で見られてます。すいません全身がぷるぷるいいますねん…
「今日の仕事は大変だったなぁ…でもそれだけ色々身に付ける事が出来たから、次回が楽しみだよ」
「…♪ 良かったですねヤスオさん」
仕事は大変なものだ、地球に居た頃はそれこそ「働いたら負け」とか言っていた口だが、いざこの世界に来て仕事をしてみるとこれが存外面白い。怒鳴られたり殴られる事も多々あるがそれでも自分はそれをバネにして毎日鍛冶屋で働かせてもらっている。でも、やはり慣れないことをすればあちこち痛くなってしまうのはどうしようもない。早く慣れたいと思う。
自分を含めた冒険者が何気なく使ってる武器一本一本がこんなに作るのが大変だなんて思わなかった。そりゃ乱雑に使われたら嫌な気分になるよな。鉄や銅を流し込むだけの量産品だってさじ加減間違えたら使い物にならなくなるし。だからこそ壊すにしても大事に扱ってもらいたいと思う、まじめに使い続けた壊れたなら、きっと武器も本望だろうから。
僕はまぁ……それを直して使い続けているけどね。
「まだまだ学ぶ事が沢山だよ、ほんと昔から勉強してればなぁって思うね」
「でもヤスオさんも凄く慣れてきたと思いますよ。初めの頃は色々ぎこちなかったですしお話もこんなに出来ませんでしたから。今はこうやって帰り道とかでお話出来て、私も嬉しいし楽しいです」
「有難う、そう言って貰えると嬉しいよ」
自分みたいなダメ人間筆頭にそう言ってもらえるのは純粋に嬉しい。だからこそ日々学び続けている、遅かった分の知識や経験を必死に身に付ける為に。
僕に足りないのは経験に一般常識、人と対話する勇気だ。この町でそれを身につけるのが僕の今の目標でもある。
「だから、期間限定って少しさみしいですね。ヤスオさんってなんだかお兄さんみたいだから…すこーし頼りないですけど、実はとっても強いお兄さんって感じで」
「は、はは…お兄さんか。うん、僕もセレナちゃんの様な妹なら大歓迎さ。確かに情けねーから、しっかりした妹が居るのは嬉しいよ」
期間限定…冒険者になった以上、最終的にはアルスさん達と固定パーティを組んでこの町を出て行く事になる。親方もそのへんの事情は組んでくれているので心配は無い。寧ろ忙しい仕事の中で冒険者としての時間を取らせてくれているのだ、此方が無茶を言っているのにそれを不満一つ漏らさず受け入れてくれる親方達には頭が上がらない。だからこそ忙しい時は必死に仕事を手伝うし、困ったことがあれば絶対に力になると決めている。
特にセレナちゃんについては親方から頼まれている。いくらこの町が安全だとしても、たまに来る冒険者が全て善人とは限らない。だから都合があう時だけでもいいから彼女を見守ってほしいと言われていた。勿論直ぐに了承している、こんな良い子に何か起こるなんて想像もしたくない。
「ふふっ♪ そこは「頼りにしてくれ」って言ってくれないと。 なら、今度からヤスオお兄さんって呼んじゃおうかな。なーんて、良いですか?」
僕の目の前に来て笑顔で言うセレナちゃん。小首をちょっとだけ傾げているその様子はとても可愛らしい。
「あはは、そりゃ嬉しいよ。可愛い妹が出来て僕は幸せもんだ」
自分が鍛冶屋で働く期間は、アルスさん達と一緒に冒険できるようになるまで。
それが何時になるかは分からないが、そう遠いことではないと思っている。だからこの短い期間だけだとしても、兄だと言ってくれる彼女のお兄さんになってあげたい。思えばこの世界で自分は天涯孤独なのだ、そんな事忘れてしまうほどこの町は暖かく、あの人達は優しかった。両親が誇れる様な人間になる為に、まずは彼女が自慢できるような兄になってみようと思う。
「それじゃ私はこれで、この奥の八百屋さんにいくので。ヤスオお兄さんは今日はゆっくりと体を休めてくださいね。また明日お仕事頑張ってください。あ、そうそう明日の料理は期待してていいですよ♪」
人差し指を唇に当てウインクしながら彼女は言う。頭を撫でたくなるレベルで愛くるしいが、今現在僕の腕はガクガクと面白いレベルで震えているので動かすのも辛いのです…情けない兄で申し訳ない。
「それは楽しみだっ! 明日の仕事もがんばらねーと! それじゃ僕は帰るけど、帰りは気をつけて帰るんだよっ!」
手を降って八百屋に向かうセレナちゃんに気合を入れて全力で手を振りながら見送る。全力なのはそうしないと動いてくれないからです。
「……この時間に外に出ても平気なファンタジー世界って、なんかいいよな。平和でさ」
さて、僕も早く帰ってお風呂に入るとしようかな。流石に疲労は回復魔法じゃ治らないからなぁ、魔法もそこまで何でも出来るほど便利じゃない。
でも疲労があるって事は肉体を酷使してるって事で、筋肉になるはずだから…運動した疲労を消せたら、鍛えられないんじゃなかろうか? ……そんな専門的な事を考えた事がないのでさっぱりわからない。こう…鍛錬のプロに人に会えたら教えてもらえばいいかなぁ……
ま、いいや帰ろう。身体の疲れは早めに回復させないとね、今日の夜は簡単にすまそう。パンは買っておいたからスープと一緒に、後はハウンド肉と塩は忘れないようにしないとな、あれを食べないと1日が過ぎたって感じがしない。
「おおぅ…腕がプルプルする…こりゃ明日が怖いなぁ……」
「うふふふ…いいカモみーつけた♪」




