18-03 【幸運の後の不安】 Ⅲ
この次辺りで多分18話が終わります。
沢山の感想や評価など有難う御座います。
返信や修正などは少しお待ち下さい(汗
―局地的台風
相手が弱いというのもあるだろうけど、それを入れても凄まじい蹂躙が繰り広げられていた。襲い掛かってくるハウンドやスモールベアなどが一撃の下に巨大な太剣で切り捨てられていく。あんな大きな剣を片手で振り下ろしているのに身体がブレることも無いし剣の重さに身体がブレる事もなく、僕がショートソードを振り回しているような気軽さで敵を切り倒していた。
その間も僕に説明や戦闘中の指示を忘れるような事は無く、襲いかかられた時の対処法や危険度の高い相手はどうするかなどの簡単な戦術などを教わっている。
「よっ…と。まぁ、これ位ならレベルが8~10もあればファイターなら大体誰でも出来る。特にここは強くてもスモールベアやパライズモスだからな」
「凄いですね…僕もここまで到達出来るんでしょうか…?」
「ヤスオは俺達と成長方法が違うからなんとも言えんが…多分大丈夫だと思うぞ。要は修練や戦闘を欠かさなければいい」
この世界の人はレベルが高くなると強くなるが、このレベル実は永遠普遍じゃないらしい。大怪我…死にかけるレベルの怪我をしてしまったりとか何年も自堕落に過ごしていたりするとレベルとステータスが下がってしまうらしい。一般人の人がレベルを上げない一因にこれがある。態々命をかけてレベルを上げに行ったのに死にかけて逆にステータスが下がってしまったじゃあ話にならない。
「毎日ハウンド1体でも倒していればレベルが下がったりはしないと思うが、こういうのは理屈じゃないんだよな、それに強くなると弊害もあるし」
「弊害…ですか」
珍しくアルスさんの顔が曇っている。
「あぁ、ホープタウンに住んでれば気づかないかもしれないが、大体の村や町じゃあ俺達冒険者はあまり歓迎されてないんだ」
この世界でもやはりと言うかなんというか、強者は恐れられる傾向が強いそうだ。特にレベルと言うもので自身や相手の力量差が嫌でもわかってしまうこの世界ではレベルの高い冒険者はそのへんのモンスターより恐ろしく映るというのだ。それでも村や町が冒険者を引き入れるのは彼等じゃないと凶悪なモンスターに対応できないから…自警団員ではレベルも低くて強いモンスター相手では殺されてしまう。だからこそ目には目をという理由でモンスターを狩るのが仕事の冒険者を雇うのだ、例え後が怖くても。
これがこの世界での一般常識のようなもので、冒険者もこの辺の事情は嫌でも理解しているという。僕が知らなかったのは、あの町が他の場所とは違って冒険者にも温かい場所だったからで、こんな場所は世界に探しても2つあるかどうかとアルスさんは言っていた。
「全てが全てって訳じゃないけどな。普通に冒険者を受け入れてくれる場所もそこそこある。んじゃ気を取り直して技の奥義を見せてやるよ」
「おぉっ…! 楽しみです!」
奥義は主に【5文字技】と呼ばれている。秘奥義が【6文字技】で僕が覚えている【先手】や【蓮華】が下級の【2文字技】だ、技のランクが高くなるほど威力などが凄まじく高くなる。そして奥義は僕でも頑張れば覚えられると教えてもらっているので否が応でもテンションが上がってしまう。
「奥義はやっぱり戦闘中に閃いたんですか?」
「あぁ、相手が結構強くてな、上級技で攻めてたら突如閃いてくれたんだ。おかげでモンスターも倒せたし…っと、おあつらえ向きに数が来たぞ」
―ハウンドA~Dが現れた!!
僕一人なら脅威とも言えるハウンド4体の襲撃にも余裕を見せるアルスさん。これまでにもヴァイパーやパライズモス、スモールベアとこいつらより強いモンスターを楽に倒しているし実際楽なんだろう。レベル15は伊達ではないと言う事だ。
「んじゃ行くぜ。上級職ほどの圧倒的過ぎる力は見せてやれないが、代わりに努力すれば追いつける場所を見せてやるっ!」
―アルスの攻撃!! 【極剛連撃斬】発動!!
―自身を起点とした【力(最大25)】mの範囲内敵全体に【3回】攻撃!!
―攻撃終了後、自分のターンが来るまで、防御1ランク減少!!
嵐が巻き起こった、そう誤認しそうになる程の剣の大連撃がアルスさんを中心に吹き荒れる。範囲内に居たハウンド達は為す術もなく細切れになったのが少し離れた場所からでも見て取れた。
―ハウンドAに3回ヒット!! 即死ダメージ!!
―ハウンドBに3回ヒット!! 即死ダメージ!!
―ハウンドCに3回ヒット!! 即死ダメージ!!
―ハウンドDに3回ヒット!! 即死ダメージ!!
―ハウンド達を倒した!!
―ヤスオを除く全員に経験値配布!!
―ハウンド肉8個 ハウンドの毛皮3個 ハウンドの牙4個獲得!!
―戦闘終了!!
「すげぇ…なんていうかこう…すげぇとしか言いようが」
「ふぅ…やっぱり奥義は消費HPがきついな。どうだった? 今のが出来るようになればファイターとしても中級を名乗っていいはずだ。上位陣はこれ以上にとんでもないけどな」
今の時点でも十分とんでも世界だったのに上級クラスはこれ以上にひどいとか…どんな人外魔境なんだろうか、想像したくないような、見てみたいような…
「よしっ、この調子で実戦の経験を積んでいくぞっ! 俺についてこい!!」
「わかりました!!」
どことなく熱血系のノリを維持したまま僕達は再び実戦練習を再開していく。
アルスさんの実戦を含んだ教え方は僕にもわかりやすかった。今の自分では到底追いつくことの出来ない場所だけど、少しでも近づきたいと思うほど彼等は凄かった。ほんと…近づくのは大変そうだよ―




