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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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18-02 【幸運の後の不安】 Ⅱ

「まず、ファイターってのはメイジ達と違って普通に攻撃できる。まぁ、こりゃ当たり前だな、でも通常攻撃じゃ威力はそこまで高くない。そして破壊力だけ見ればMPを使って威力のある魔法を使うメイジこそ火力の花型だ。俺等ファイターは逆にそこそこの火力があってもメイジに威力では劣る、上位クラスは別にしてもな」


 確かに剣で斬るよりも攻撃魔法の方が何倍も威力があって、射程や範囲も広いけど通常攻撃でMPを消費しないから弾切れってのはない。技を使うとHPを消耗してしまうけど、使わなくても攻撃自体は可能だからなぁ。耐久度の消耗はあるけどそれは個人の管理でどうにでもなるし。


「物理攻撃系が魔法使い系より優れている点は【技】を覚えやすい事だ。メイジやアコライトも覚えない訳じゃないが、その確率はかなり低い」


「そ、そんなに差があるんですか…」


「あぁ、下手すりゃレベル18~19位になるまでまともな技を覚えないってのが多々あるな。逆にそこそこ技を覚えるタイプのメイジやアコライトは基本の魔法をあんまり覚えない、もしくは使えないっての殆どだ」


 そのままアルスさんが続ける。


「で、だ。この技だがヤスオは訓練中閃いたって言ってたな。これら技はな、魔法の様に本を見て覚えるって訳じゃない。鍛錬中、もしくは【戦闘中】に突如として閃くのさ。魔法ではありえない戦闘中の戦力向上だ、これは魔法を多用するメイジには無い強みだろうな」


 この様な技の閃きをこの世界の人達は【武神の加護】と呼んでいるそうだ、逆に魔法の本を見るだけでステータスが適正、相性が良ければ覚えるという此方は【賢神の加護】と呼ばれている。


 技の閃きと言うのは武器の修練度や対応するスキルのランク、使っている技や攻撃によって多種多様に覚えたりするという。基本的には初期技…【先手】や【蓮華】などの下級技を覚えるのだけど、相手が強かったり、単純に運が良かったりすると中級技、上級技、奥義や秘奥義を覚えるというのだ。


 魔法使いが下級~中級魔法を使っている所で、上級技や秘奥義を覚える可能性もあるのがファイターの強みとの事だ。シーフはこの辺技を覚えにくいし、アーチャーは逆に弓に限って言えば、ファイターにも負けないほどの閃き率を誇ると言っていた。ファイターも弓は使えるけど、閃き率はや戦力はアーチャーの足元にも及ばないらしい…まぁ、遠距離クラスとして存在するアーチャーがファイターやシーフに負けたら悲しいよな…レベル差が離れてるならともかく。


「俺達前衛の戦士達は相手が強ければ強いほど、道を開ける可能性がある。つまり土壇場の起死回生も狙えたりする訳だ。勿論相手が弱くても閃かない訳じゃあない。勿論可能性は下がるが、技を覚える事は多々ある」


「という事は僕もモンスターと剣で戦っていたら…」


「あぁ、速剣術の対応する技を覚えるかもしれんな。両手に小剣を持って戦えるんなら【双剣術】の技を派生で覚える可能性だってある」


 【速剣術】の他にも様々な技のスキルがあるのでそれを教えてもらった。



―スピードを活かし連続攻撃で相手を翻弄する【速剣術】


―速剣以上手数で相手を切り刻む【双剣術】


―自身を護りながら相手の隙をついていく鋭い攻撃の【護剣術】


―死角をついたり隠れたり、敵の首を刈り取ったりする【邪剣術】


―アルスさんが得意とする剛力一閃が信条の【剛剣術】


―リーチを活かしての凄まじい貫通力を誇る【槍破術】


―剛剣術を超える、粉砕の一撃が決め手の【斧術】


―矢の雨を降らせたり、敵全体を攻撃するのが得意な【弓術】


―鍛え上げた拳や蹴りで竜すら屠る事ができる【拳闘術】


―相手が鎧やゴーレムの場合に真価を発揮する【打撃術】


―タンクは絶対に覚える必要がある護りの技【盾衛術】



 これらに【汎用技】をふくめての12種がこの世界に存在する技だ。

 ここから更に各種技が下級~秘奥義と存在するのだから、戦士と言えど極めるのは難しい…というか無理だそうだ。運が悪いと秘奥義を覚えないまま上級に到達してしまう人もいるらしい…


「俺も一応奥義は数種覚えてる。秘奥義は流石に俺も覚えてないな。俺はタンクタイプだから盾衛術の秘奥義を覚えたいと思ってるけど、そうそう上手くはいかないよなぁ」


「アルスさんでも秘奥義は取得出来てないんですか…」


「ん、まぁな。俺もまだレベルは低いしこれからだ。ヤスオだって頑張れば上級技や奥義を覚えられるかもしれんぞ? 【蓮華】って技は連鎖系の技だからな、覚えるとしたら順に覚えるかもだ」


 僕が使っている【蓮華】は速剣術を代表する技の一つで、ここからはじまる連続攻撃が魅力らしい。


【蓮華】から始まり、相手の防御力を連続攻撃毎に下げ続けるデバフがある中級技【三散華】その上の上級技で下級でここまで覚えられたら暫くはそれだけで戦っていけるという、【麻痺】【スタン】効果が付与される4連続攻撃【四奏蓮華】が有力だ。このコンボが決まれば合計6回ヒットというとんでも連続攻撃が敵を切り刻んでいく……想像するだけでとんでもない事がわかるなぁ…


「ここまでが直接的なメイジより有利な点だ。次に他の職業より有利な点、それはスキルにある。ファイターは他のクラスに比べてHPや防御、攻撃に関するスキルが多く汎用で覚えるスキルも普通より上がりやすいんだ。つまりそれだけHPが高く、防御が固く、攻撃力が上がりやすい。他の職業は基本HPがあまり上がらんからこの辺は重要だぞ? HPは【力】と【体】依存だからな、魔法使いがひ弱なのも仕方ないけどな」


 低い人はレベルが上がっても全然HPが増えず、上位職担っても素のHPが100行くか行かないかって人も居るらしい。ティルさんもメイジだからHPはそこまで高くないそうだ。


「レベルアップってのは必ずしも一定のステータスが上がるわけじゃない。クラスなどによっては全く上がらないものも多い。俺の場合は【魔】とかな、だから運の悪い奴は上級職になってもHPが20とか30とかになる奴も稀にいるらしい。HPが0になれば戦闘不能になる、そこから更に中~致命傷を喰らえば死亡だ。だからこそカードや装備で補うが、それにも限度ってものがある」


 ハウンドカードの様にHPが増えるカードってのはそこそこあって、皆も装着していると教えてもらった。僕にはまだまだ縁遠いカードだけど、その1枚でHPが30も増えるのは神レベルだと思う。ちなみに名前は【ヘルハウンド】だそうだ。どう考えてもハウンドの上位種だよな…いつか戦う時が来るんだろうか。


「下級の頃はハウンドカードや、森の中で稀に見つかるエレメントカードの【木】カードがあると便利だな。エレメントカードってのはこの世界で自然に発生するタイプのカードでな、水なら水カードが極々稀に、木も自然の一部って事で稀に生まれたりする。で、この木カードなんだが、防御力が10も上昇する飛んでも効果でな、安い防具一式装備するよりも高い防御効果があるんだ。まぁ…ランクとかは無いんで鎧は必須だし、ほんと年に1枚でも見つかれば運が良いカードだから、数が手にはいらないんだけどな」


「ハウンドカードは今身につけてます。HP+10はありがたいですから」


「あぁ、メイジやアコライトだけじゃなく低レベルならファイターもとりあえずはつけておいて問題の無いカードだ。町の雑貨屋に行けばこのカードは大体置いてるし、かなり安いからな。10万Rすれば高いほうだぜ?」


 ハウンドカード…そんなに安かったのか。いや、聞く話によれば能力は下級の頃なら有用な上に、一番弱いランクのモンスターで肉や皮も有用なので冒険者や自警団員、装備を整えた一般人にすら乱獲されている為、肉も皮もカードですら飽和気味らしいのだ。そういえば肉屋に行けば普通に一番最安値でハウンド肉は毎日置いてるし、衣服もハウンド製の安いものが叩き売りされてたりする。需要はそれなりに高いけど供給が飽和しているから安いんだろうな。


 ウサギの方は逆に肉も稀にしか落とさないし、それにまずい。牙や皮もハウンドの牙や皮で十分間に合ってしまうので人気がないそうだ。それにあいつはこちらが強くなると逃げてしまう習性があるので、ちょうどいい時期になると相手シしようにも逃げてくし、こっちが弱ければ襲いかかってきたりと面倒なのだ。

 その点ハウンドは此方がどんなに強くなろうとも襲いかかってくるしその辺に沢山いるし、肉投げ込んだら隙だらけで倒しやすいと、効率的な倒し方も判明してるので下級冒険者の飯の種になってる。僕自身ウサギを倒すならハウンドを倒したいと思うからなぁ…


「ハウンド肉は俺達冒険者のお供だからなぁ、シチューに入ってると嬉しいよな」


「わかります、超わかります」


 あの肉の美味しさは豚や牛では出せないと思う。トロトロに煮込んだハウンド肉も美味しそうだけど、僕はやはり塩+ハウンド肉が正義だと思うな。この方程式に勝てる食材は僕の中には現在存在していない。


「うしっ、色々言ったけど最後は実戦で教えるとするか。折角フィールドに出たんだしな」


「分かりましたっ!」


「これからお前に頑張ればたどり着ける境地ってのを見せてやる。ちゃんと追いついてこいよ?」


 そう言いながらアルスさんは僕を連れて周囲のモンスター退治に向かい始めた。僕も剣をいつでも出せるようにしてついていく。


 レベル15の冒険者、その実力はとんでもないものだった―




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