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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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CP-05 【不穏な影】

町に来て初めてのイベントの様です。

頭のタイミングが主人公視点外なのでCPとして扱います。

 それはいつもの様にフィル達自警団員が外の街道周辺のパトロールをしていた時だった。怪我をしている一般人も冒険者も見当たらず、何かおかしくなっている場所も無く至って平穏な一日になる…筈だった。


「フィル君!! 大変だこっちに来てくれ!!」


「ん? サイラスさんどうしたんだ?」


 自警団の一員で町医者を兼任しているサイラスが酷く慌てた様子で此方に向かって走ってきた、普段落ち着いて優しい雰囲気を出している彼とは思えない慌て様にフィル達も何かが起きたのだと直ぐに察する。


 余程急いで来たのか息を切らせてはいるがそれでも皆を何処かに連れて行こうと指を指し咳き込みながら言葉を皆に伝える。その言葉は皆を驚愕させるには十分な内容だった。


「はぁ…! はぁ…! ごほっ! ダンジョン直ぐ近くのフィールドに…! げほっ! 夥しい数のモンスターが…! ダンジョンの外に居たんだ! ごほっ! ごほっ!」


「んな…!? マジかよそれは!! 数は!? こっちに来てるのか!?」


「はぁ…はぁ……目視で軽く50以上は居たよ…はぁ、ハウンドにウサギ、パライズモスにヴァイパー、スモールベアだ!」


 フィールドのモンスターは基本余程の事がない限り群れを作らず単体、もしくは2~4体で行動する事が殆どで、10も20も集まる事は酷く稀だ。小さな村等はその数のモンスターに襲われただけで壊滅してしまうほどの脅威がある。ホープタウンはそこそこ大きな町で、自警団もフィルを始めそれなりに戦える者が多いが、それでも数人がかりでヴァイパーを倒すのが精一杯だ、団長と副団長はレベルが高いのでそのクラスのモンスターにも勝てるだろうが、そのモンスターが達が集団でこの町に襲いかかってきたとなれば、答えは見えている。


「よし! 俺がサイラスさんと行って確認してくる! 皆は先に詰め所に戻っててくれっ!! 内容は向かいながら俺が【念話】で伝えておく!」


「わ、分かった!! 二人共無理はしないでくれよ!?」


 団員達が全速力で町に向かって走っていくその間にサイラスも呼吸が落ち着いてきた様で、案内を受けながら団長に【念話】を掛けた―


【団長! 俺だっフィルだ! 今サイラスさんといるんだけど―】


 その日、ヤスオは初めて集団での戦いを経験する事になる。








―自警団会議室


 話を聞いた団長のファッツはその内容に少し顔を顰めた。今までもある程度の集団が町を襲った事は何度もあったし、それを退けては来たが今回は数が数だ、平均レベル2~4の自警団員ではハウンドを相手にするのも危険が伴う。


「成程な…よくやってくれたぜ二人共。とは言えこの数尋常じゃないな」


「何かと呼ばれてみりゃあ一大事じゃねぇか!」


 其処にはセイルの姿もある、彼も臨時の自警団メンバーでレベルも7と団長であるファッツと同等のレベルを有している為呼ばれたのだ、彼も普段は塩屋…ではなく道具屋を営んでいるが、こうして有事の際にはいつでも駆けつけるようにしている。


「まずいよ団長、どう見ても100じゃきかない数が居た。熊は居なかったけど、パライズモスがうじゃうじゃいやがった…! 俺達だけじゃどうやっても勝てないぜ」


「ちょっと……私達じゃ倒せてもハウンド位だし流石に何十体もいるパライズモスなんて相手に出来ないわよ?」


 メイジのカリーナが心配そうな表情でファッツに話しかけた。

 パライズモスは下級の冒険者や自警団にとってブラウンベアーの次に驚異的なモンスターで大きさ的には全長60~100cm程の巨大な蛾の姿をしている。攻撃力や防御力はそこまで高く無いが、一番の脅威はその【鱗粉】だろう。一度吸い込めば、かなりの確率で呼吸困難や麻痺効果、更には高い確率で毒まで与えてくるのだ。一度鱗粉を撒き散らしてしまえば対処方法は呼吸を止める以外に無く、それゆえに今まで何人もの冒険者達が対応しきれず殺されている。


「俺もパライズモスは調子がよくて1日3体倒せれば良い方だな。ハウンドやウサギの大量発生って言うならまだ対処可能だったが、飛んでる奴は」


「何にせよやるしかない、この町を護るのは自警団の努めだろう? ファッツ」


 白髪の男性、ここの副団長のハウルが静かにファッツに言葉を紡ぐ。相手の数がどうと言う理由で手をこまねいている暇はないとばかりに話を進める。


「今現在、町長が冒険者を雇う準備を整えている。ならば俺達はその冒険者を使い町を防衛する事を考えればいい、何もお前らだけで対処する必要はないだろうに、あぁ…あとパライズモスは対処方法さえ分かればただの飛んでる的だ、それも伝えておこう」


「ハウルの言う通りだな、俺ぁ店やってるお陰で冒険者とは結構知り合ってるからな、気の良い奴に報酬の話をしてみるさ、何にせよ急がなきゃならねぇ」


「あぁ、そうだな! よし此処は俺がビシっと!!」


 そう行きこんだ所で扉をノックする音が響く、カリーナがドアを開けると真剣な表情のヤスオが装備を整えて入ってきた。すでにフィルがヤスオには伝えていたのだ。


「し、失礼します!! 話を聞いてやって来ました!」


「よしっ! 良く来てくれたぜヤスオ! 今はお前の力も借りてぇ!」


 ヤスオにとってここにいるメンバーは既に何度か会った事があり、ファッツとフィルに至っては一緒に狩りまでしている間柄だ、ハウルやカリーナとも何度か顔を合わせている為、ここで彼を知らない者は誰もいない。


「あんたも来てくれたのねヤスオっ! 冒険者だからちょっち頼みづらくてさ、来てくれて嬉しいわ」


「まだまだ弱いですが、全力でお手伝いします! 町長さんから報酬の話は既に聞いてますので安心してください」


 ヤスオも冒険者である以上、動かすためには報酬がいる。ヤスオ自身は恩のあるこの町の危機に対してお金など要らなかったのだが、それでは他の冒険者に示しが付かないので、報酬は受けとる事にしていた。冒険者を雇うのは決して安い物ではない、上級の冒険者ともなるとヘタすれば億すら超えるほどの報酬が必要なのだ。下級、中級でも何十万~何百万という金が動くのだからヤスオが躊躇するのも仕方ないだろう。


「ってセイルさん!? 何でここにいるんですかっ!? 道具運びに来たとか…??」


「ばっか、おめぇそりゃ俺も自警団の一員だからに決まってるだろが。つっても俺は店の事もあるし今回の様な余程のことがあった場合の臨時だけどな」


 セイルがそう言って笑う。小さな町では兼任自警団員はそこそこ多いのだ、医者のサイラスも自警団にアコライトが殆ど居ないから怪我の治療の為に兼任している、後は彼自身レベルを上げて中級魔法まで使えるようになりたいと言う考えもあるのだが、そちらの方は上手く行っていない。


「はっ、少しは使える奴が来たじゃないか、確か回復魔法が使えるんだったな? メイジなのに回復も使えるとは器用な奴だ。いや、魔法戦士だったか。だが、これでポーション以外の回復手段も出来た、改めて作戦を煮詰めるぞ。」


 ヤスオはここでは【レベル9】の【攻撃魔法】【回復魔法】が使える【魔法戦士】というクラスと説明していた。遠い場所のクラスなので普通のメイジやアコライトとは少し違うと言うカバーストーリーを伝えているのだ。これはヤスオの考えではなくアルス達が教えてくれたことで、もともとレベルが無いヤスオが後でややこしくならないように決めたものだ。クラスについても色々あるし、住んでる場所が違えばそういうこともあると彼等は納得してくれたのだ。


「よっし! 頼りになる仲間も一人増えた! 後は他にも冒険者を募って盛大にやろうじゃねぇか!!」


「おぉ! 団長!!」


 気合を入れなおした所で、ハウルからモンスターについての注意や対策を説明し始めた―



―17話に続く



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