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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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14-01 【宝物の小剣と平和な町】 Ⅰ ※第1章開始

メインストーリー開始です。

泣いたり笑ったり、カオスだったりカオスだったりカオスだったりします。

どうぞお暇が出来たら見てあげて下さい。

―【ホープタウン】


 時間が経つのはあっという間とはよく言うが、本当に気がつけば二ヶ月も過ぎていた。今自分はこの町…ホープタウンで日々出来る事を頑張っている。


 アルスさん達のツテで町長に話を繋いでもらいこの町に住まわせて貰える事になった。今は町の中の小さな長屋を借りて一人で暮らしている。自分以外にも何人か住んでいるので最初は少し緊張していたが、ちゃんと挨拶も出来たし住民の人とはそれなりに仲良くなっていると思う、まだ色々と目を合わせたりすると挙動不審になったりするが、ちゃんと会話は出来るようになった。


 3人は冒険者なので、今は違う町や村でダンジョンアタックや依頼をこなしているそうだ。それでも2週間も自分の為に時間を割いてもらい鍛錬や勉強、基本的な常識等色々教えてもらったお陰で、何とか暮らしていけている。

 暫くは会えないが寂しい事は無い、何故なら夜になればほとんど毎日ティルさんから【念話】が届くからだ。この魔法とても射程が長く彼女程のステータスがあれば1000キロ以上離れていても普通に会話が出来たりする。携帯電話涙目な魔法だが、これは生活魔法なので覚えている人はそれなりに居る様だ。勿論僕も覚えている。


 話している内容は他愛の無いものから、ダンジョンで何を手に入れたとかこう言うパーティと組んだとか、スケベな奴がジロジロと見てきたら焼いてやろうと思ったとか、まぁ…最後以外は普通の話だ。後は僕の方で近況を話したりと、正直あまり寂しさは感じない。


「んー…今日は仕事も休みだし家で本でも読もうかな? いや外でモンスター退治をするのもいいかも」


 生活費とかは、実はアルスさん達がこなした依頼から4分の1も貰ってしまったのでそれを使っている。何でもあれだけ短期間に仕事を終えたのは自分のお陰だからと言うのだ。流石に断ったんだけど、これからの為に必要だろうと半ば押し付けられた。宝箱から手に入れた他にも麻痺回復ポーションが予想以上の値段で売れたので暫くは余裕で暮らしていける。仕事もさせてもらえているし、生活はとても安定しているのが僕の今の現状だ。


「よし善は急げだ、明日は一日中仕事だし時間は有意義に―?」


「おーいっ!」


 いざ家に戻ろうと思った所で呼び止められた、声がした方を振り向くとこの二ヶ月の間で知り合った子がこっちに走り寄ってきた。


「よっ。何やってんだよヤスオ、今日は休みなのか?」


「お、フィル君こんにちは。僕は今日は休みなんだよ、そっちは見回り?」


「いや、俺も今日は非番なんだ」


 短く切りそろえているがあえてボサボサにしている髪型がとても似合うまだまだあどけなさが抜けない少年、フィル君。普段つけているレザー装備一式では無く今日は普段着を来ている。そしてそんな普段着の背中に括りつけている槍が嫌でも目につくが…まだ15歳と言う若さだけどこの町の自警団の一員で、既にモンスター退治等を何度もこなしている子だ。


 基本的に町や村等には彼等の様な自警団が居て、彼等が外に居るモンスター等を退治していると聞いた。冒険者とかも自警団から依頼を受けて一緒に戦ったりするらしいけど、冒険者を雇うのはかなりお金が掛かるので、基本的には彼等だけで対処しているらしい。町のパトロールから周囲の清掃、村の案内など警察のおまわりさんと自衛隊が混ざったような組織だった。


 僕も何度か頼まれてフィル君達とモンスター退治をさせてもらった事がある。


「そっか、今日はこれからモンスター退治に出る予定なんだ」


「成程な、俺も付いて行きたいけど今日は先に約束があってさ。今度一緒に連れてってくれよ。団長も俺もレベル上げたいからさ」


 フィル君はレベル4で団長さんはレベル7だった。3人で周囲にいたウサギを倒したけど二人共戦い慣れているお陰で、終始楽だったのを覚えている。特に彼はレベル4とは思えない位とても強かった、ステータス的には僕も7~9レベル相当はあるらしいけど、おっかなびっくり戦ってる僕よりはずっと強いと思う。15歳っていえばまだ高校に上がったばかりの年なのに、凄いよな。


「おっと、そろそろ行かないとエルが待ってるっ。んじゃなヤスオ! 気をつけて行ってこいよっ!」


「おうっ! そっちも遅れないようにねっ!」


「わかってるー!!」


 手を降って走っていくフィル君を見つめる。流石に彼位の子相手ならキョドる事もあまりなくなってきた。勿論彼が良い子だというのもあるけど。この町で生活して来て色々触れ合っていく内に、少しは心も成長出来たのかもしれない。


「あの二人は仲がいいからなぁ…てか、いつ結婚するんですか? って言われてる位だし」


 この町の総人口は千人に満たない。

 その為か町の住人は全員仲が良いし知らない人ってのは殆ど居ない。さながら【皆が家族】を地で行く町だ。だからこそ皆気さくで僕も直ぐに受け入れてもらえた、さらに言えば外から来た人に対しても優しい所もある。良くマンガやアニメでは大体に置いて外から来た人間を排斥したりするのだが、ここはそれが当当て嵌まらなかった……【ここ】はだけど。


 勿論かなりひどい場所もあるらしい、ティルさんが切れながら言っていた位だし、よそ者を見た瞬間に石を投げつけたり襲ってきたりする場所もあるんだろうな……


 ここがそんな場所でなくて良かった自分はそういう悪意に酷く弱い。今なら跳ね除けられるとしても、だからといって傷つかない訳じゃないから。さて、そろそろ準備をしに行こうと思った矢先、前方にまたしても知り合いがいた。今日は良く出会う日だな。


「あ、こんにちはヤスオさん。奇遇ですね」


「………ヤス……オ……居た……」


「おっ? セレナちゃんにアリアちゃんじゃないか、奇遇だね。二人で買い物かい? 珍しい組み合わせだけど」


 彼女達もこの町で知り合った子達だ。

 はじめに話しかけてくれた子がセレナと言う名前で緑色の髪の毛サイドポニーにしているのが特徴的な子だ。着ている服は外行き様のおしゃれな服装で、僕には何とほめていいかよくわからない。ニートは伊達じゃないな…身長は流石に僕より少し低い…少しって所が悲しいです…

 セレナちゃんには日頃からお世話になっている。今僕が働かせてもらっているおじいさん…親方の所の孫娘さんで、仕事の関係上ほぼ毎日会っている子だ。まだまだ14歳なのに家事の全てを請け負って居る頑張り屋さんだったりする。ご両親は流行病で亡くなってしまったらしく、それ以降は親方と二人で暮らしている。昔の僕に爪の垢を煎じて飲ませたくなる程の良い子だ。


 もう一人こっちの子はこの町をメインとして動いてる冒険者の子でアリアちゃん、アリアオロと言う名前の女性だ。青いストレートの髪の毛が腰辺りまで伸びているが纏めておらず、伸ばしっぱなしって感じだ。でも不潔感は無くどちらかと言うと神秘的な感じがする、元々見た目からして可愛い子なので寧ろ魅力度がアップしている感じだ。

 表情は無表情でその顔からは彼女が何を考えているかまったく読めない。更に来ている服が凄まじくボロボロなので何度か替えたほうが良いんじゃないかと聞いた所、この服は魔法防御が高いから壊れるまで着ると言われてしまったので、何も言えなかった。ちょっと子供っぽい感じがするが、こう見えても19歳らしい。


「はいっ! おじいちゃんにお買い物を頼まれたのでこれから道具屋さんに行ってくるんです。」


「……付き添……い……重い…の……持つ……」 


「ふむふむ…僕も手伝おうか? 流石に重いのは無いとして。アリアちゃんこの前素材持ったらフラフラしてたし、重いのは男手にまかせてよ」


「有難う御座います、じゃあお願いしますね」


 彼女達ともある程度目を合わせて会話できる様になって来た。

子供や気心がしれた人となら普段の調子で会話できるが、まだ自警団の団長であるカイルさんや町長のアリストさん、仕事場の親方相手ではどもってしまう事が多い。ここが自分のまだまだダメな所だ、早く治せるようになりたいと思う。


「そう言えば。どうです? この町にも慣れてきましたか?」


 セレナちゃんが問いかけてくる。初めて会った時は彼女と話すのも一苦労してたから、僕を心配してくれてるらしい。年下の女の子に心配される20歳男性…かなり情けないが、それが僕なので仕方ない…早く成長したいな。


「何とかね。皆良い人だし親方も仕事中は厳しいし凄く怖いけど、あれが激励だってのは分かってるからね、うん。かなり慣れてきたよ」


「………ヤス…オ……頑……張った…」


 パチパチと拍手するアリアちゃん。うん、褒められてるんだろうな多分…


「ふふ、良かったです。来た当初はヤスオさんって良く泣いてたから少しだけ心配してたんですよ?」


「あはは…見られてたかぁ。うん、あの頃は嬉しい事がありすぎてかなり涙もろくなってたからなぁ、今は問題ないよ、大丈夫さ」


 ここに来たばかりの頃はほんとに色々な事で感動したり泣いたりしてたからな…どうにも涙脆くなっているのに困ってしまう。今は大分改善サれてきたけどね。


「ほんとかなぁ? なーんて、大丈夫ですよ知ってるの多分おじいちゃんと私位ですから、内緒にしてあげますね、ね? アリアお姉ちゃん」


「……ん……内緒……」


「あ、あはは…ありがとう二人共。」


 3人で道具屋さんがある場所に歩いて行く、ここの道具屋さんは僕も良く利用している。戦闘で使うポーション等の回復剤、モンスターを倒した時に手に入る素材を買い取ってもらったりと、一般の人にも僕やアリアちゃんの様な冒険者にとっても重要な場所だ。


 店名はこうなんて言うか、色々凄かったけど…道具屋なのに店の名前が【俺の塩】ってのはどうなんだろうか…そして塩売ってたし、凄まじく売ってたし。寧ろ塩買っていけ! って何度も言われたし…ほんと凄い店でした。


「そう言えば、仕事の方はどうですか? 私は小さいし女の子だから入れてもらえなくて…」


「うん、セレナちゃんにはきつい場所だからね。物凄く暑いし、少しでも気を抜くと倒れちゃいそうになるよ。後、僕はどんくさいからめちゃくちゃ怒鳴られるし、何度か殴られたこともあるね。」


 今自分が働いている場所は、僕が望んでいた鍛冶の仕事だ。

 親方は剣などを作る鍛冶師で自分はそこで働かせてもらっている、武器屋があった時に思ったのだ、どうしても武器を作る仕事に携わりたいと。僕にはどうしてもやらなくちゃいけない事があったから。


「……大……変…?」


「まぁね、でもミスしたり危なかったから怒られるだけで、ちゃんとやれた時は褒められたりもしてる、まだまだダメだけど成長出来てるのは嬉しいし、仕事は凄く楽しいよ」


 今では全く知らなかった皮の鞣しも教えてもらって出来る様になった。毎日毎日怒られながら、少しずつ技術を高めていけている…だからこそ…


「親方のお陰で僕の念願は叶ったんだ。此処で働かせて貰えなかったらきっと暫くは無理だった…」


 そう言いながら僕は腰に下げている【ショートソード】を手で少し触る…このショートソードはそう……あの時折れてしまった宝物のショートソードだ。



―【もう一度君と】


―【平凡な】ファインショートソード【46/46】

―【攻撃ランク:D+】【攻撃力:+9】

―何処にでもある量産品だった、折れたショートソードを再精錬した物。

―微かに淡い光を放っている。



「僕が今此処に居られるのも、全てはこいつのお陰だった。でも技術も何もない僕じゃこいつを壊れるまで使う事しか出来なくて、だから…もう一度一緒に戦いたかったから、親方の所で働かせてもらったんだ」


「とても大事な剣なんですね。なんだかわかります、ヤスオさんがその剣を大事にしてるのを」


 今の僕じゃ親方に手伝ってもらってやっとここまでが限界だけど、それでもまた一緒に戦えるのが嬉しかった。今度はきっと壊さないで使い続ける。冒険者としてこいつ使って、鍛冶師として鍛えあげて、最高の剣にしてやりたい。僕に出来たもう一つの夢だ。


「これ以外に魔法も沢山使ったし壊した武器や防具はかなりあるけど、この剣だけは特別思い入れがあったんだ。だからね…」


「私も武器屋の娘ですからなんとなくその気持ちわかります。きっとその剣も喜んでると思いますよ。もしかしたらいつか精霊がつくかもしれませんね。」


「【魂を込めて鍛え上げ、その武器を自分の一部として使いこなす。自分と武器は一体となり、その時武器には精霊が宿り意思を持つ】だったね、親方に教えてもらったよ」


 武器の中でも最高峰とされている【精霊武具】その名前の通り武器や防具に精霊が宿っている物の事を言う、鍛冶師として懸命に武器を作り続ければいつかはたどり着くかもしれない境地と呼ばれているそうだ。僕はまぁ、そこまで行けるほど器用でもないし、精霊云々より度は最後まで大事に使ってあげられるのが嬉しい。


「……道具……屋……みえ……た」


「おぉ、色々話してたらあっとい間についちゃったなぁ」


「あ、ほんとだ。早いですね、ちょっと行ってきます」


「……行く……ごー……」


 店の中に入っていく二人を見守りながら僕はここで待つ、荷物持ちは買い物が終わってからが本番と言う事で。


「平和だな……これも全部あの人達のお陰か。早く僕も追いつける様に頑張らなきゃな、手伝いが終わったら狩りに行こうっと」


 良い天気だ今日も強くなる為に頑張らないとな―


 

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