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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
38/216

13-02 【感謝と恩義と未来の為に】 Ⅱ  ※序章終了

森編ラストです。

次回からが、本格的なスタートになります。

ヤスオ君はこれからもっと頑張っていくと思います。

―翌日 


「おぉっ! やっぱりもちもちしてるっ♪」


 何故か朝一番からティルさんに頬を抓られています。何でも僕の頬がもちもちしてそうで昨日から触ってみたかったとの事で…確かにここまで太っていたら頬もさぞ抓りやすいかもですが、それは年頃の女性として如何な物なのだろうか…そして開幕ティルさんの様な美女に頬を喜ばれながら抓られる確率ってのは一体いかほどのものなのか。


「悪いなヤスオ。こいつ昨日からテンション高くてさ」


 困った顔で言うアルスさん。実は彼も小さい頃よくやられていたらしい。今は彼女曰く「ごつごつしてるからヤダ」との事…僕は僕で太ってますし髭だって生えてるんで変わらない気が、今日は朝から剃ったので久々につるつるだけど。いや流石にナイフで髭を剃るのは怖くて出来なかった、清潔のお陰で常に綺麗にはしていたけど、生えてくる髭を消すことまでは出来る訳が無いんで皆に見つかった時はかなり毛だらけだったので今思うとかなり恥ずかしいな。見た目も合わせて蛮族そのままだったし。


「ひへ、ひにひはひへふははひほ。ふひはへん、ふぃるさんそろそほ…」


 とりあえずそろそろやめて欲しいとお願いするが、出てくる言葉は日本語ですら無かった。


「うむ堪能した!! いい感じのほっぺただお~、癖になりそうだ」


 それはそれで少し困ります。

 ここの所ずっと数時間程度しか寝てなかった所為かお陰か、朝直ぐ起きるのは慣れているので誰よりも早く起きていた、皆さんが起きてくる間に軽く運動などをしていたらティルさんに見つかり今に至る。


「おはよ。ゆっくり眠れた?」


「はい。久しぶりに安心して眠れました、森だと夜は焚き火が消えたらヤバイんで寝れませんでしたから」


 実は夜中に飛び起きて焚き火を忘れてたとかボケた事をやってしまったが、後は普通に休める事が出来た。ここまで休めたのは何時ぶりだろうか…ゆっくり眠れる事がここまで幸せだとは、皆さんに感謝だよ本当に。


「よっしヤスオついておいで! 何はともあれまずは朝食だおっ! 安心しなさい、お姉さんが奢っちゃる♪」


「うわわっ?! 手! 手を引っ張らないでくれませ、うわわわわっ!?」


「ほれ急げ~♪」


 人好きする様な輝く様な笑顔で僕の手を握り歩いて行くティルさん。生まれてこの方女性の手なんて母親の手を子供の頃に握ったっきりだ。お陰でまともな思考も出来ず、されるがままに引っ張られてしまう。繋いだ手はとても温かくて、人はやっぱり温かいんだなぁ、なんて半ばとぼけた状態になりながらついていく事しか出来なかった。


「私達もいこっか、アルス?」


「だな。つーかあいつが一番はしゃいでるな、断られたら泣き出すんじゃね?」


「あははありえそうだね」


「てかティル少し落ち着け! 朝からやかましいっての!」


 後ろの方でアルスさんとアリーさんが何か言っていたが絶賛連れられ中の僕の耳には何を言っているかまでは入ってこなかった。ティルさんの行動力が凄い…今日それを身を持って体験しました。






…………







―初めての料理(焼くだけは料理とは言わなかった)




「夢にまで見た味のあるちゃんとした料理が目の前に…あれ? やっぱりこれ夢なんじゃ」


「たんと、たんとお食べっ!! 食い溜めするレベルで食べても良いんだおっ

!!」


 目の前にある朝食を見た瞬間涙が溢れてくる。トーストにサラダ、スープ。軽めの朝食としては十分な量が其処にあった。森の中でどれだけ想像しただろう、どれだけ望んだだろうちゃんとした料理。隣では何故かティルさんまでこくこくと頷きながら涙を流していた、どうやら僕にあてられたらしい。


「頂きます………美味しい…美味しいよ…うぅ…うあぁぁぁぁ…」


 トーストのカリッとした歯ごたえにバターの風味とパン合わさった甘みが口の中にふわっと広がった時、ついに我慢できず僕は泣き出してしまう。泣きながらそれでも美味しくて美味しくて、半ば泣き笑いの状態で食べ続けた。


「ほらほら泣かないで、ね? こっちにはウインナーもあるから食べるんだおっ」


 自分の分のウインナー等を僕の皿に入れてくれたり涙をハンカチで拭いてくれたりと、ティルさんはとても僕に優しくしてくれる。もし姉が居たなら、彼女みたいな人だったら嬉しい―そう思うほどとても嬉しかった。


「あぁしてるのを見るとマジで姉弟みたいなだな。何となく似てるし」


「泣いてる顔が凄く似てたよね…普通の時は似ても似つかないのに、そこだけそっくり」


 と二人は言うが、僕と一緒にされたら彼女が可哀想だと思う。こんなピザデブ…いや、かなり痩せてきたからただのデブなんだけど、こんな美女と僕が似てる訳がないです。

 

 僕は半ば泣きながら、それでも皆と楽しく食事を取る事が出来た。こんなに楽しい食事は地球でも無かった…自分の部屋で栄養ゼリー飲みながらゲームをする。まともな食事なんてほとんどとらないでジャンクフードやお菓子ばかり食べていた、一緒にご飯を食べるなんてほとんどなかったな…もし帰ることが出来たら両親と一緒のテーブルでまた、ご飯を食べたいって思う。


「はふ…こんなに食べたのは久しぶりだなぁ。味のある料理がこんなに幸せな気持ちにしてくれるなんて」


 ハウンド肉も美味しかったが正直少しだけ物足りなかった。せめて塩があれば味もつけられたけど、塩なんてどこで取れるかわからなかったから、結局ここに来るまではそのまま食べていた。


「ふふ、沢山食べたね。一気に食べ過ぎちゃうとお腹痛くなるから気をつけてね」


「ご馳走様でした。助けてもらった上に料理までご馳走になって…なんて礼を言えばいいか、……昨日は本当に有難うございました」


 朝食も食べ終わり雑談タイムに入る、そこで今回の食事のお礼と命を助けてもらったお礼を述べた。


「冒険者ってか人は基本助け合いだし、気にしないの。それよりも昨日の件は考えてくれたかお?」


 昨日の件―仲間に誘われた件の答えは既に決めてある、後は真っ直ぐに3人を見て応えるだけだ。相手の顔を見て会話をしよう、例え怖くてもちゃんと目で見て答えなくては失礼になってしまう。この人達は良い人だ…だから何も怖い事なんてない、勇気を出して相手に応える。それが出来なくちゃ僕はこの先に進めない。


「はい! 昨日一生懸命考えましたっ!」


「そうか。俺達はヤスオ、お前がどう答えてもしっかり受け止める。勿論仲間になってくれたら嬉しいし、もし断られれも何も言わないから安心してくれ。後、断った場合は町で暮らさないとだろうから、出来る限りここで暮らせるように町長さんと掛け合ってみる。だから、気楽に答えてくれ」


 軽く腕を組みながらそう言ってくれたアルスさん。本当に頭が上がらないほど恩ばかり積み重なって行く、いつかちゃんと返せるようになりたいよ。


「有難う御座います。僕をパーティに誘ってもらえて、とても嬉しかったです、僕も実を言えば…皆さんと一緒に冒険をしてみたい」


 僕だって男だ、冒険という言葉には憧れがある。皆で苦楽を共にして一緒に様々な探検や戦いをこなしていく、そんな夢が目の前に手を伸ばせば届く所にある。それでも……僕は言葉を続けた―


「…………ヤスオ」


「でも……僕にはまだ、何もかも足りないんです。知識も経験も、そして心も。そんな状態でこの誘いを受けてしまったら、逆に皆に迷惑を掛けてしまうっ!」


 アルスさんもティルさんもアリーさんも、こんな始めたあった自分にここまで優しくしてくれた、話す口調だって敬語なんて要らないから楽しく話そうと言ってくれた。そして…こんな僕をパーティに入らないかと誘ってくれた。

 嬉しかった、物凄く嬉しかったんだ。元の世界でもそんな事言われた事もなかったから、ずっと一人だったから、涙が出るほど嬉しくて…


「……自分が強くなれたらっ! 身も心も強くなれたらっ! その時は…その時は仲間に入れて貰えませんか!! 勝手な事言ってると思うけど! 今の自分じゃきっと甘える事しか出来ないからっ!」


 仲間になるなら甘えるだけじゃない、一緒に戦えるように…対等になりたいから。だから今は皆の仲間にはなれない。泣き叫びながら僕はそう皆に伝えた。


「まったく、なーに言ってんだかこのぷにぷに君は」


「折角の好意を無駄にしてすいません…!! でも自分馬鹿だから、こんな答えしか出せなかったんです…!」


 甘えたくないから、こんな良い人達に自分のダメな部分を見せて嫌われたくないから、だから僕は自分で頑張って強くなってからじゃないと一緒に戦う事も出来ないと思うんだ…


「ばーか。怒ってなんかないさ、俺もティルもアリーもな。寧ろ真剣に俺達の事を考えてくれたんだろう? ここまで信じてもらって、頼ってもらって嬉しいよ」


「冒険者冥利に尽きるね。私達も昔はこうやって色々な先輩冒険者に助けてもらったもんだよ」


 自分からパーティを断ったのに、それでも笑顔で二人は言ってくれた。その隣ではティルさんが少し涙目になりながら僕をポコポコと叩き始める。


「この馬鹿ぁ、朝からお涙頂戴は勘弁だおっ!」


「う、うわっ!? ティ、ティルさん!?」


 そのまま僕をぎゅっと抱きしめつつ頭を撫でながら彼女は続けた。


「待っててやるからさくっと強くなるんだおっ! 困った事があればお姉ちゃんが助けてあげるからねっ!」


「あの言い方なら、最後に仲間になるのは確定って事でいいよな? 俺達もヤスオが仲間になってくれたら凄く嬉しいよ。お前が確信を持って言える位、身も心も強くなったら改めて迎えるからな」


「なーに、その考え方ならすぐ身も心も強くなれるよ。早く一緒に冒険しようね? 外の世界はすっごく楽しいよっ! 勿論大変な所も沢山あるけどね」


 自分はきっと幸運なのだろう。

 異世界に来て、こんな人達に会えたなんて宝くじよりも低い確率なんだろうから。これで目標は出来た、目的は…皆と冒険に出られるようになったら作りたいと思う。


「はい…っ! はいっ!! ありがどう…ございますっ!! 自分…頑張りますから!! 待ってて下さいねっ!!」



―13話終了…14に続く



ステータス変動なし。

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