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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
35/216

12-01 【歪な出会いと救いの手】

心の声の部分を削除、修正です。

 


 あれから更に数日が過ぎ、更に3個もポーション瓶も手に入れる事が出来た。問題だった簡易的な野営道具もサバイバル生活が長かったお陰か、スキルが上がったのか知らないけど何とか使える程度の物は完成していた。

 旅に出る為の準備としてポーション瓶に動物の皮を巻きつけて割れ難くする工夫をしてみたり大きな袋を何個か作り持ち運び用にしたりとゆっくりとだが確実に森を出る準備は整いつつある。

 戦闘面に関しても槍を使った戦闘もかなり慣れてきてウサギ2体程度なら普通に戦える位まで成長した。肝心のステータスはあれから全く上がっていないので、もしかしたら頭打ちなのかもしれない。

 他には魔法【消炎】のお陰で火魔法も多用できるようになりハウンド退治もかなり楽になってきていた。

 

「ぁ……あぁぁぁ…」


 後数日頑張ったら森を出て人の住む場所を目指そうと考え、今日も何時もの様にモンスターを狩り洞窟に戻って居たのだが、もう少しで洞窟につくと言う所で洞窟の入口近くから物音が聞こえた。彼処には沢山の森に出る為の道具や食料が保管してあるし、大切な宝物が置いてある。もしハウンドとかが洞窟に入り込もうとして居たら…その全てを台無しにされてしまうかもしれない、頭の中がそれ一色で染まり僕は槍を構えてモンスターに対して奇襲を仕掛けたつもりだった… 

 だけど、其処に居たのは僕の【風縛】をあっさり無効化し強烈な殺気を飛ばしてきた全身鎧の【人間の男性】が剣を突きつけて僕を威圧していた。


「ひっ?! や、やめて下さいっ!? モンスターと間違えてしまっただけなんです!! お願いだから殺さないで!?」


 目の前に居る人間は全身を白い鎧で包まれている巨漢だった。大きな盾と僕より長い大剣を油断なくこちらに突きつけている。顔をすっぽり包んで居る白い兜の所為で顔が見えないけど間違いなく怒っているんだろう。

 さっきの一喝で僕は全身から力が抜けその場に倒れこんでいた、今は全身全霊で土下座して命だけは助けて欲しいと何度も何度も頭を地面にこすりつける事しか出来なかった。

 逃げる逃げない倒す倒さないじゃない、ウサギやハウンドが可愛いレベルの恐怖と威圧感が僕の全身から血の気を奪い、全身が震えてこれ以上の行動を取る事が出来なかった。理性的に物を考える事も出来ずに恥も外聞もなく泣きながら命乞いする事しか今の僕には出来ない。


「u8gjspjn9dko;!? hsigojihgsj!!」


「j9ihsirophj…」


「ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! 許してくださいっ! どうか、命だけはっ!!」


 頭を下げて目を瞑りながら土下座をしているので分からないがまだ更に人が居るようで、女性の声が聞こえる。どうやら3人居るらしい…最早助かる術は一つしか無く、相手と自分の言葉が通じていない事にも気づかずに怯えて許しを乞いていた。話し合いをする以前に、襲いかかったのは僕自身だ。モンスターと勘違いしたとはいえ許される事じゃない、もしかしたら殺してしまう可能性もあったのだ、いや100%返り討ちにされるだろうけど、それでも僕がやった行いは殺人未遂なのだから。

 そして戦いになれば、確実に自分は殺されるだろう。ハウンドも止められる僕の切り札である【風縛】を無効化された時点でそれを理解した。


 怖い、今までの勇気が消えてしまったかの様に恐怖と絶望だけが僕の頭の中を埋め尽くしていく、少しは戦えるようになった、ちょっとは勇気を持てた…そんなの知らないとばかりに圧倒的な恐怖が目の前にある。


「……【翻訳】hjposrh、jiosjig、jhihea。あー…そのなんだ? 俺の言葉がわかるかい?」


 相手の人が【翻訳】を使ったのか、彼等が何を言っているか理解できるようになった。どうやら襲いかかってきた後すぐ命乞いを始めたので、面食らっているらしく、戸惑っている様な喋り方だった。


「は、はい…わ、わかります、わかります…ご、ごめんなさい。モンスター、モンスターと間違えてしまっただけなんです。」


「えーっと…なにこれ、どういうこと? 実は探してる人は生きてましたーってオチかお?」


「いや、どう見ても違うって。さっきのは気にしなくていい、俺もまさか人が襲ってくるとは思わなくてな。顔を上げてくれないか?」


 戸惑いながらも優しく語りかけてきてくれた男性の声に少しだけ安堵して頭をあげる。そこには兜を脱いで此方を見ている男性と女性二人の姿が見えた。

 男性の人は見た目からして逞しく、何と言えばいいか歴戦の戦士って感じのする人だ。

 外人の様に髪の毛が金髪でショートに纏めワイルドっぽさが目立つ。顔付きは優しそうな笑みが似合うけど爽やか系のイケメンと言うより肉食系の力強さを感じるイケメンだ。つまりイケメンと言う事で。

 体格もかなり良く、自分とは大違いで高身長なのが特徴だ。全体的に白を基調としたアーマーはファンタジーでよくある勇者とかが身に着けている様な格好良い奴で、中世時代のフルプレートタイプではなくRPGなどの主人公とかが装着している突き出した肩アーマーが特徴の上半身と下半身の部分が分かれている形状で、胸には盾の様な紋章が見える。

 

「俺はアルスって言う名前だ、宜しくな。あんたの名前聞かせてくれよ怒っちゃいないさ。な?」


 僕を落ち着かせる様に笑顔でサムズアップしながら名前を聞いてくる男性…いやアルスさん。こっちが奇襲を掛けたのに怒る所が僕を落ち着かせてくれようとするその姿に安心し、僕は何とか会話をする事が出来た。


「た…田中、田中康夫です。あ、有難うございます。」


「え、えーと私はアリーセ。アリーでいいよ? 吃驚したけど、もしかしなくてもここに住んでたのかな?」


「んでボクがティルだお。宜しくね♪ で、ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」


 命の危険は無くなったようだ。目の前の3人はかなり良い人らしいな…今のどこからどう見ても不審人物な自分に普通に話しかけてきてくれるのだから。だけど、罪悪感と恐怖はそうそう消えるものではなく、震える声で何とか会話を始めるのが僕の限界だった―






…………






「なんて言うかよく今まで生きてられたなぁ。初めは装備も魔法もなんも無しで行き成りこの森からって。」


「う、運が良かったからだと思います。生活魔法の書とかが無かったら直ぐに死んでたんで。」


 あれから1時間弱、お互いに情報を交換する事が出来た。アルスさん達はこの森に依頼で来ているらしい。この森になんの依頼で来ているかはまだ聞いてないが、手伝える事なら罪滅ぼしにもならないだろうけど手伝おうと思っている。皆確実に僕の数倍以上強そうなので、邪魔にならなければだが…

 僕の事は既に全部教えている、異世界から気がつけばここに居た事や今まで必死に生き抜いてきた事、つい最近漸く森から出られる様になったから人里を探す為に色々準備を整えていた事などを。


「その異世界人ってのがよくわかんないけど、初期ステータスがほぼ2~4で装備もなしで迷いの森って…いま着てるのは最近自分で作れる様になったんだっけ? 皮の鞣し方も知らないのに、良く頑張ったんだおね。」


 3人の中でとりわけ僕に優しく話しかけてきてくれる人がこのティルさんだ。銀髪ってだけでも地球じゃ珍しい髪の色だけどリアル縦ロール髪型の人を初めてみた気がする。オタ系の女子がコスプレなどで偶にやっているのをネットで見た事があるけど、あの微妙にクドい感じではなくこの人には凄く似合っていた。快活そうな笑顔が印象的で、ともすれば高校生位の若さに見える。そしてめちゃくちゃ美人だ。着ている服は黒と赤が目立つドレスみたいなローブらしい。僕は服とかに疎くてどう説明していいか分からないけど、とても似合っていた。


「同じ事をやれって言われても流石に無理だな。例え暮らしていけたとしても、俺じゃ出られないの確定してるし。」


 彼なら森を切り開いて出ていけそうだが、確かに【魔】と【運】が足りなければ出られないし、どうみても戦士系のアルスさんじゃ厳しいだろうな。


「もう安心していいからねっ! 私達が仕事を終わらせたら直ぐに町に送ってあげるから!!」


 アリーセさん、いや愛称で呼んで欲しいと言われたからアリーさんと言わせてもらおう。彼女はアコライトっていう職業で回復魔法とか瞬間移動魔法とかそう言う凄い魔法を使いこなせるらしい。ティルさんはメイジでアルスさんはファイターだそうだ。

 で、そのアリーさんもアルスさんが羨ましい位レベルで美人だ。セミロングの金髪が似合っている。ティルさんと比べると幾分大人っぽい顔つきだけど彼女も高校生~大学生位に見えるな、アメリカとかでモデルとかしてても違和感を感じない程の美女だと思う。そして突っ込みたいのは彼女の両側に何か浮いてる盾なんだけど、これは魔法なんだろうか…マジックアイテムなんだろうか。装備しなくても護ってくれる盾だとしたら凄く羨ましいな。


「うーん、それも良いけど、話し聞く限りじゃここの常識とか基礎知識も知らないんでしょ? 町に行っても下手すりゃ路頭に迷いそうだお。」


「あ、あの…冒険者ギルドとかは無いんでしょうか…? だれでも、その…最低限の仕事できるみたいな。」


 3人は冒険者と言っていたし、依頼を受けたとも言っていた。もし冒険者ギルドがあるならそこでモンスター退治とか薬草集めとかテンプレ的な仕事があれば生きていく事位は可能だと思う。常識とかは基礎知識はそこで学ばせてもらうのが近道だと思うし。


「あー…多分ヤスオが言ってるのは都市とかに偶にある仕事の斡旋所の事だな。一般人じゃ対処出来ないモンスターの退治とかを軍だけで対処するには人が足りないから、冒険者に頼んだりしてる。後は冒険者同士とかどうしても素材が必要な店関連の人が偶にって位で、大きな都市に行けば国が似たような事やってるけど基本そういうのはないんだ。」


 そう言いながら更にアルスさんは話を続ける。


「俺達冒険者は言ってみればフリーターみたいなもんでさ、仕事は酒場に行ったり、町や村に貼りだされてる依頼の紙を見て好きなの選ぶんだ。ギルドもあるにはあるが、俺達の言うギルドってのは何十人もの冒険者仲間で作る超大型パーティの事だ。」


「薬草集めとか護衛任務だっけ? そう言う依頼も稀にあるっちゃあるけど、それだけで生きていくのは難しいおね。依頼の中にはダンジョンで特定のモンスター倒してきてほしいとか、素材が欲しいとかそんなのが多いお? こういう調査系は滅多にないね。」


 無いのか……アルスさんとティルさんが教えてくれたギルドはよくMMOとかであるクランとかギルドとかそう言う集まりって言う意味らしい。何にせよ現実はやはり甘くはないらしい。ある程度予想していた事なので絶望はしなかったが。掲示板に貼りだされている仕事もそうそう有る訳じゃ無さそうだし、他の冒険者に取られるなど日常茶飯事みたいだ。勿論冒険者証とかランクによって受けられる~とかは無い。


「まぁ、普通に暮らして行こうと思ったら素直に町で仕事した方が稼ぎになる。俺達も依頼は金が無い時に世話になるって感じさ。新参者でもちゃんと上に話をつけりゃどうにかなる、町や村にしても働ける人間は喉から手がでるほど欲しいからな。まぁ…それでも大体の場所はあれだったりするが…」


 最後の方はよく聞こえなかったけどどんな世界でも人手は不足しているんだな…マンパワーは偉大って所か…特にこの世界は科学があまり発達してないらしいし。


「ずばり言えば俺達のメインの仕事は【ダンジョンアタック】これにつきる。この世界のあちこちにあるダンジョンには様々な宝があるんだ。大小様々だが、大物を当てれば一攫千金も夢じゃない。つまり、俺達は夢追い人って感じだな。」


「私達はまだまだ駆け出しだから依頼とかも頑張りながらやってるけどね。冒険者になってある程度経験を積んで下級ダンジョンに行けば、上手く行けば数百万の儲けも出たりするんだよ。ちなみに普通に店とかで働いた場合は高くて30~50万R、低いと10~25万Rとかだね。質素に暮らすだけなら月25万Rもあれば余裕だけど。」


 リーン、というのがこの世界のお金の単位の様だ。どうやらお金の単価は日本円と似たようなシステムの様でわかりやすい。月25~30万R、普通のサラリーマンが稼ぐ月収と考えれば、そこまで低い金額じゃないのはわかる。そしてダンジョンの稼ぎがその数倍…下級って言ってたから、中級とかそれ以上になったら想像もつかないお金が動くんだろうな…僕には縁遠い話だけど。


「最低限の常識ってのも話し聞く限り持ってるし。後は世界がどうなってるのかーって所だね、それはおいおい説明してあげるお。お姉ちゃんに任せたまへ。」


「あ、有難うございます。なんにも知らなくて、森から出られるようになったけど、人と会った時の事が不安だったんです…」


「そこだ。ヤスオは此処に来た当時はウサギにも勝てなかった。なのに今はここを出る為の【魔】と【運】があり、ハウンドにも勝てている。ここにいるのはハウンドとウサギだけしか見てないんだよな?」


「あ、はい…それ以外だと普通の小動物だけですね」


 何せ初日は馬鹿な真似をして死にかけたっていう黒歴史所の話じゃないものがある。流石にこれは恥ずかし過ぎて言ってない…


「…………所でヤスオ。今何レベルなんだ?」


「!? こらっ! 失礼だお!!」


 アルスさんが言った言葉に反応してティルさんが怒った表情で彼を見ている。隣りにいるアリーさんもちょっと難しい顔をしていた。何か失礼な事を言ったのだろうか? 僕にはその辺よくわからないけど、まず何より答えなくちゃいけない事がある。


「レベル…ですか? その…すいません。」


「ごめんねヤスオ、この白大根を許してやっておくれ。」


 何故大根…? いや確かに立っているアルスさんは鎧の所為で白いし逆三角形体型の理想的な男性だが…あぁ、なるほど…白くて逆三角だからか。確かにそう言われて見れば大根…って何失礼な事を考えてるんだ僕は…そ、それより答えなくては。


「あ、いえその…レベルって存在するんですか…?」


「ほへ? え…??」


「ちょ、ちょっと待って? えーと、ヤスオはどうやってステータス上がったの?」


 アリーさんが信じられないって口調で僕にどうやってステータスが上がったのか聞いてくる。隣ではアルスさんが難しそうな表情をしていた。やっぱり僕は何処かおかしいのかもしれない、とりあえずステータスの上がり方について詳しく説明していく。敵を倒すとランダムで上がる事、上がる時は複数ステータスが上がり武器を使えば【力】等が、魔法を使えば【魔】や【知】等が上がりやすかった等、出来るだけわかりやすい様に伝えていく。

 ただ僕は自他共認めるコミュ障なので、無意識に身振り手振りを使っていたり何度もどもったり、しまいには踊り出しそうになったりしたけど、何とか全てを伝え終えた。


「成程……な。 まさかと思って予想は流石にしていなかったんだが。えーとだなヤスオ、俺達の世界ではステータスは敵を倒して勝手に上がるもんじゃないんだよ。生まれた時からレベルが1として生まれてくる。」


 そう言いながらアルスさんは続ける。


「このレベルはモンスターを倒す事で経験値が得られ、それが必要な量まで溜まると神の祝福、レベルアップが起きるんだ。そしてその時に各種クラスに大体応じたステータスが上がる。モンスターを倒していけば経験値は入るんだが、ウサギやハウンドは経験値の少ない雑魚な上に、こっちが強くなるとその経験値も得られないんだ、最終的にはただの素材を落とすだけのモンスターになる。これは他のモンスターにも言える事だけどな。」


 ハウンドやウサギで頑張ってもあげられるレベルは7~8が限界だと彼は言った。その間に必要なステータスを整えるのは魔法先行のメイジでも難しいらしい。そして、僕が住んでいたこの短い期間でそれだけを毎日10も20も倒していってもレベル3~5に上がっていれば十分高い方なのだと聞かされた。

 それはもしかしなくても僕がこの世界とは違う異世界人だからなのだろう…話に聞けば聞くほど、レベルアップのシステムはどこかのRPGそのままだ、僕にはそれが適用されない代わりに、別にシステムの様な物が適用されているのかもしれない。


 そしてそれを聞き終わると同時にどうしようもない恐怖が僕を襲う、僕だけがここにいる皆と成長の仕方が違う…それは僕が人間じゃないと思われてしまうだけの十分の理由があった。


「ヤスオの様にモンスターを倒せばランダムで上がる、弱い敵は上がり難いってのは此方の経験と似たようなもんだ、多分異世界人ってのがそれに関係していると―」


 アルスさんが言い終わる前に僕は叫ぶ様な勢いで問いかける。


「あ、あのっ! 僕、やっぱり何処かおかしいんですかっ!? もしかして…モンスターと同じ扱いにされて、こ、殺され…!!」


 人と違うと言うのは露骨に迫害される物だ、それを跳ね除けられるならともかく僕の様な弱い人間じゃそのまま殺される事だってある。それなら諦めて森で暮らした方がまだ生きていられるかもしれない。ここまで頑張ってきて人里についたら殺されるなんて、やってられないにも程があるじゃないか!!


「あ、いやその辺は大丈夫だ。心配させる様な事を言って悪いな、だけどこの辺りはしっかりさせないと後で大変になる。」


 僕を安心させるようにアルスさんが言ってくれた、背中からは温かい感触を感じて振り向くと其処にはティルさんは僕を慈しむ様な表情で背中を撫でてくれていた、まるで家族に対する様に。お陰で幾分か心が楽になった。


「後、そもそもあまりステータスはよほど身近なやつか、家族にしか言わないもんなんだ。レベルにしても基本は自己申告制でな、臨時とかでPTを組む時に自分のレベルを言うんだ、これをいきなり会った奴に聞くのはマナー違反でさ、今回は悪いけどあえて聞かせてもらった、次からはあまり答えないようにしてくれ。」


 レベルは自己申告制なのか…レベルをごまかす詐欺とか無いのか聞いてみた所、命を掛けて戦いに行く場所にそんな根性の奴は来ないらしい。後は装備や雰囲気で大体察知出来るらしく、これといった問題は無いみたいだ。僕のレベルが無い点についてはステータスの総合からある程度のレベルは把握出来るので、それを元に申告するのが良いらしい。

 殺されるとか迫害される心配が無くてホッと一息つく…折角こうして人と出会えたのにそれはきついからさ…


「有難うございます、色々教えてもらって…」


「気にするなって。後、敬語なんて使わなくてもいいんだぞ? 年齢も近いみたいだしな。俺もかしこまったのは好きじゃないし、こいつらもそうだ。」


「良く言ったアルス! ボクもかしこまられたりするのは苦手だおっ。上等な育ちじゃないしね。」


「勿論私もねっ! すでに普通に会話してるし今更さっ!」


 凄い気さくな人達だった。善人が服を着て歩いている、そんなレベルの人達だ…僕としても怖い人と話すよりは気が楽だけど、色々してもらっている人達にいきなりタメ口なんて出来ないのでやんわりと断らせてもらう。

 

「と、所で3人はここに何の用で来たんですか? 自分に手伝える事があれば、手伝わせてもらいます。」


 助けてもらえるんだしこれ位するのは当然だ。昔の僕なら喚いてたかもしれないけどね…


「おっ、ポイント高いよヤスオ。えーとね、ボク等はこの森に放置されてる遺体を探しに来たんだ。どうやら研究者の人みたいでね、遺体と遺品を持ち帰るのが仕事だお。」


 遺体と遺品…あぁ、それ僕が一番よく知ってるじゃないか。本の少し前までその洞窟で寝泊まりしていたのだから。他に遺体とかは見つけてないし多分あの白骨死体で間違いないだろう。


「その遺体、多分ですけど自分知ってます。」


「マジでっ!? ナイスだおヤスオっ!!」


「いやその…自分が此処に来て生きていられた理由がその遺体ですから。」


 遺体には魔法書や武器、メモ帳があった事を伝える。遺体から剥ぎ取ったメモ帳などは今話をしている隠れ家内にあるので直ぐに手渡した。


「ビンゴだヤスオ、良く取っておいてくれたな。相手方が欲しがってるのは多分これの事だ。専門用語で書かれてるものがいくつかあるし、これが欲しいんだろうな。後、他に何かなかったか?」


「その…後はナイフとショートソードと、生活魔法と火炎魔法の書です。それと、ショートソードはこ、壊してしまったんです……」


 もし遺品を全て回収するとなれば魔法書も折れたショートソードも返却しなければならない…折れてしまったショートソードの返済が来たら僕ではどうしようもなくて顔を青くして俯いてしまう。それに…折れたとしてもこの剣だけは返したくなかった。


「気にすんなって、寧ろ遺品があるかどうかも分からなかったんだから、このメモ帳1冊あれば十分依頼は果たしてるさ、後はヤスオが貰っておけばいいって。それに、言っちゃ何だがそれにナイフやショートソード、魔法書なんて少し働けば誰でも買えるもんだ、問題ないさ。」


 良かった…魔法書もそうだけど、ショートソードは壊れたけど大事にしておきたかっんだ。いつか直せるかもしれないと考えていたから。

 そうだ、もしかしたらこの人達に相談したら良い鍛冶屋さんを教えてくれるかもしれない。そこで働かせて貰えるか後で話してみよう。


「属性魔法書はさ…マジックアイテムなのにさ…高くても10万Rで売れればいいレベルなんだお…何この格差。そりゃ、買えるのは嬉しいけど宝箱から出た時のあの切なさ。ちくしょう、治癒魔法の書め。絶対にゆるさない、絶対にだ。」


 ティルさんがどんよりと落ち込んで地面に呪詛を吐き続けている…僕は魔法書が出たら滅茶苦茶喜んでたんだけど、そうなのか…魔法書ってハズレなのか…ってか怖いですティルさん。


「それじゃ、悪いけど案内してくれるか? さくっと終わらせて会話の続きは明日メシでも食べながらにしようぜ。安心してくれ見捨てはしないからさ。出来れば俺達を信じてくれ。なんつーか、普通に生活できるのか心配になるしな…」


 最後の方はよく聞き取れなかったが、そんなの気にしてる暇は無い、早くこの人達を案内してあげないと、すくっと立ち上がって僕は皆を道案内する為に準備を整えた。


「はい…! はいっ!! 皆さんこ、こっちですっ!!」


「ととっ、ヤスオもう少しゆったりでも良いんだお~?」


 地球でもしこんな人達と出会っていたら僕は腐ってなかったかもしれない…そう思うほど3人共凄く良い人だった。それだけに間違えて奇襲してしまったのが辛くてならない。それを笑って許してくれたのが嬉しくて、久しぶりに人と会話出来たのが嬉しくて、心がとても暖かくなってこの日はずっと涙が止まらなかった。皆には迷惑をかけてしまったと思う。



―12話終了…13に続く



20/15/09/28 ご指摘を受け修正です。

ステータス変動なし。

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