表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
33/216

11-02 【今を生きる】 Ⅱ

ヤスオ君頑張ってます。

 太めの木に隠れながらウサギ達の様子を観察しているが、どうにも隙が見当たらない。普段の後ろから奇襲されてもほとんど気づかないウサギとは大違いで、ここに居るウサギは別種なんじゃないかと思う位辺りを警戒し続けている。

 今の僕なら2体は倒せると思うけど3体、それもこの確実におかしいウサギを相手にするのは厳しいと思う、防具を身に着けているといってもあの牙の攻撃は油断出来るもんじゃない。3方向から縦横無尽に襲われでもしたら流石に死ねる。そしてあそこのウサギはそう言うのを普通にやってきそうだ。


 宝箱は気になるけど命あっての物種だ、無理をして致命傷を受けてしまえば今までの苦労は水の泡になってしまう。突っ込んで倒すのは論外だとして、射程が長い風魔法で1匹ずつおびき寄せてなんてのは難しい、普通に考えて1匹を攻撃すれば3匹とも襲い掛かってくるよな…


(諦めるか…それが一番だな。)


 無理に戦う必要はない。この場所を覚えておけばいつか倒せるタイミングがあるかもしれないし、宝箱にはトラップがあると考えればここで怪我をしてでもウサギを倒す必要性が感じられなかった。せめて一度に倒す方法があれば……

 

(待てよ…? あるじゃないか、良い方法が!! どうせ諦めるなら盛大にやってやるさ!)


 丁度あの部分は開けていて【燃えそうなものは宝箱】位だ。そう…火魔法を使うにはお誂え向きな場所だ、多分宝箱も燃えてしまうと思うがもし燃え残ったら儲けもの、ダメだったとしてもウサギ3体を倒せると思えば美味しい。

 頭の中で覚悟を決め集中していく。今から使う魔法は少しのミスも出来ない僕が使える最大威力の魔法…【火球】。この魔法はあまり練習した事がない、威力と範囲が範囲だけに効果的に使える場所や練習出来る場所がほとんどなかったからだ。手のひらに浮き出た火の玉を相手に向かって投擲するタイプの魔法。僕は凄まじいノーコンだが、ある程度の誘導補正が付いているので狙いをつけて投げれば対象向かって飛んでくれる。後は遠くまで届くように力と器用さ、集中力が必要なんだ。


 あのウサギ達は周囲を警戒こそしているが其処から一歩も動かない。理屈も理由も分からないがそうなると尚更狙いをつけやすい。後は僕の腕にかかっていると言う訳で…何度も何度も深く深呼吸し頭の中でイメージしていく。全力で投げるのはアウトだ、僕がそんな無駄に力を入れて投げたら勢いのまま地面に叩きつける可能性がある。何せ投擲の練習で石を全力で投げた時にやらかしたから…ダメな方向の信頼度はバッチリだ。いくらある程度の誘導補正が付いているとか言っても目の前に叩き落としたら誘導も何もなく、もれなく自分が燃え尽きる。


(目標は宝箱そのもの。そこに着弾すれば近くにいるウサギは全部巻き込める。後は其処に上手く投げられる様に頑張るだけだ。)


―ヤスオは【火球】を唱えた!!


 右手からバスケットボールより二回り位大きな火の玉が発生した。この前はバスケットボール位だったのに今回はかなりでかい、【魔】が上がったから大きくなったと考えれば辻褄が合うが正直吃驚した。後はこれを宝箱に着弾させるだけ。ミスは勿論出来ない。


「……………そのまま、そのまま動くなよ。」


 身体を捻って投擲の体勢を整える。力み過ぎず、それでいて力を緩ませ過ぎずに……確実に当てる!!


(い、けええええええええええええええっ!!)


 頭の中で叫びながら火球を宝箱向かって投げつけた。

 火の玉は投擲のスピードのまま少し飛んだ後、急にスピードを上げて宝箱向かって吹っ飛んでいく、そしてそのまま…着弾した!!


―ガーディアンラビットAに即死ダメージ!! 

―ガーディアンラビットBに即死ダメージ!! 

―ガーディアンラビットCに即死ダメージ!! 

―ガーディアンラビット達を倒した!!

―ヤスオの経験値は入らない!

―ヤスオの【知】が1上がった!

―ヤスオの【魔】が1上がった!


「う…わぁ…」


 ファングラビット…いつも見ているウサギとは違うウサギだったらしいが、そんなのお構いなしに火球の炎はウサギ達を綺麗に焼き殺してくれた。【魔】も高くなってたし、威力も上がっているのは当然だよな…ハウンドだって直撃したら一撃だろうな、これ…


「…って、【知】と【魔】が両方共上がったんですが…複数のハウンドと戦うのを覚悟した矢先にこれって、なんて言うか締まらないなぁ…」


 ステータスが上がったのはとても嬉しいけど、何というか微妙にやるせなさを感じた。どうにも僕はこう、肩透かしっぽい事がよく起きているな…

 それよりも周囲の変な気配が全く感じなくなった。多分【魔】が上がったお陰だろうか…もしかしたら外に出られるかもしれないので、後で行ってみよう。まずはドロップ…は綺麗に何も落ちてませんでした。火はそろそろ消えるから一応宝箱も確認しておこう。ウサギが綺麗に一撃で燃え尽きる火力だし灰が残ってる程度だろ……う…?


「…嘘ぉ…!? まったく燃えてねぇ!? なにこれどういうこと!?」


 燃え尽きていると思っていた宝箱が多少の焦げ目はついているものの、普通にその場に残っていた。宝箱ってのは耐火性能とかあるのかもしれない。諦めていただけに嬉しい誤算だが、相変わらず宝箱って理不尽だと思う。この宝箱手に入れられたらなんか強い防具が作れないだろうか…


「あのウサギが護ってた事といい、あれだけ焼いても動かなかった事といい…ミミックじゃないのは確定だな。後は罠だけど…正直何がどうなってるのかさっぱり何だよな…」


―ヤスオのトラップ感知………失敗!! 罠を発見できなかった。


 見た感じ直接的な罠があるようには感じられなかった。前と同じく後ろ側から開けてみようと思う。この前みたいに魔法書とかが入っていると嬉しいけど、これには何が入っているんだろうか…? 後ろに回り込み、箱を裏側からゆっくりと開けてみた。


―ヤスオは宝箱を開けた

―【毒針】発動! 猛毒の針が飛び出してきた!! 

―ヤスオは宝箱の後ろにいる為当たらなかった!

―薬瓶(未鑑定)を3個手に入れた

―指輪(未鑑定)を手に入れた


 風を切る音と共に開けた場所から針が何本も飛び出した。危なかった、正面から開けていたら毒に侵されるっていうか、穴だらけになってそうだった。毒消しのアイテムなんて持ってないし、ただの毒だとしてもかかってたら死んでたと思う。その内爆弾とかとんでもな罠があるかもしれないから、次回からはやめておこうかな……

 

「背筋が冷えたよ……あ、やっぱり宝箱は消えるのか。薬瓶と指輪…戻ったら調べてみよう。でも、その前に…」


 ここからなら多分出口も近いだろうし、一度向かってから戻る事にした―





…………





―【フィールド】


―魔力干渉開始………成功!! ヤスオはダンジョンを脱出した!!



 頭の中に浮かんだ文字を確認し一歩一歩確実に歩を進める。森の中ではめったに感じられない暖かな陽の光が僕を照らし、草花の匂いや動物の声が周囲から聞こえてくる。僕は……ついに森の外に出られたんだ。


「初めて…初めての一歩だ。これが僕がこの世界で生き抜く初めの一歩。」


 何というか感動よりなにより、ちょっと気が抜けた感じがするな。激戦の後に漸くって訳じゃなくて、動かないウサギを魔法で燃やしたら何か上がって出られる様になったってのは、やっぱり締まらないな。


「ま…それが僕って事か。でも…でも…僕はやれたんだ、あの地獄の日々から頑張って、一人で頑張って…やっとここから出られる様になったんだなぁ…やっぱり、嬉しいよ。」


 すぐ近くの草むらに座り、静かに深呼吸する。森の中の空気とここの空気は自分でもよく分かるほど変わっていた。森のじめっとした空気と違って草原の空気はとても爽やかだった。大きく息を吸い込むと体中に酸素が伝わっていく感じがする。


「いよっし! ちょっとその辺走り回ってみるか! 今僕は風になる!!」


 童心に帰り自分でも笑える位にはしゃぎ回った。ウサギもハウンドも今の所近くには居なかったので、息が切れるまで周りをぐるぐると走り回る。森の中では木々を避けたり茂みの中を突っ切ったりと、そこまで広い場所は殆ど無かったから、障害物も何もない場所を走り回るのはとても楽しかった。その場でジャンプしてみたり、転がってみたり、小さな頃…ほんと子供の頃の無邪気だった自分に立ち返った様に僕は走る。


「いぃぃっやっほおおおおっ!」


 そんな風にはしゃぎ回る事5~10分位、気分もリフレッシュしたので改めて周囲を見回す。草原の先は見通す限り何も見えない。建物とかそういう物はやはり近場にはないみたいだ。森は結構広く、この先を見通すなら反対側から行かないとだろう。森自体は2~5キロ程度あるし、肉眼で他を見渡すには近すぎるよな。一応かなり遠くには山も見えたが徒歩だと何時辿りつけるかわからない位だ。流石にすぐさま脱出するのは難しいから、この後の事はゆっくり考えよう。


「さて、と。今日は一度帰ろう。時間も結構過ぎてるし明日からどうするか考えないとな。」


 後はさっきの戦いで【知】も10に上がっているから新しい魔法を覚えられるし、今日も夜は忙しくなりそうだ。

 この森を出る為の最低限はこれでクリアした…後はそのための準備をしていくだけ…もう少しこの森と隠れ家に世話になるだろうな…そんな事を考えながら僕は自分の家…隠れ家に戻り始めた。






…………






―【ヤスオの隠れ家】



―解読成功 【生活魔法の書】【完全読破】

―解読成功 【火魔法の書】【5割読破】【必要知:15】

―解読成功 【風魔法の書】【5割読破】【必要知:15】

―必要【魔】到達

―魔法取得

―【翻訳】【念話】【消炎】【炎与】【風与】【風化】


「【翻訳】!! やっぱりあったか…やばいなぁ、こういう魔法があるって事は会話は普通には通じないって事を考えなくちゃ。」


 これで生活魔法の書は完全に読み終わった。これ以上の魔法はこの書物からは覚える事が出来ないんだろう…覚えた魔法はどちらも生活にあると便利で、なおかつ上級だというのがわかる魔法だった。

 相手が余程不思議な生物じゃないかぎりは言葉が通じるようになる【翻訳】。持続時間は24時間もあるらしく、朝とかに使っておけば問題なく会話などが可能になるらしい。地球でこの魔法があったらヒヤリングの勉強とか英会話レッスンとか要らなくなるよなぁ…専門学校とか塾が潰れそうだ。

 もう一つはかなりの広範囲を持ち、範囲内にいる対象一人と脳内で会話が出来るという【念話】使い方はまんま携帯電話とかそういう感じだ。なにせ射程が半端無く広い。【魔×50】キロとか、今の僕なら500キロ先に居る相手にも普通に会話をする事が出来るんだ。相手も【念話】を覚えていればお互いに会話が可能で、相手が覚えていない場合は【此方側の言葉】だけを相手に伝える事が出来るらしい。つまり…相手が携帯持っていなくても会話だけは出来ると……なんだこの地球の技術涙目の魔法達は…

 後、【消炎】はかなり便利な魔法だと思う。自分で発生させた炎は即座に消せると言う事は火魔法の延焼の危険もかなり下げられる訳で、森の中で火魔法を使っても安心できるのが魅力だな。範囲内の自分の【魔】以下の魔力を帯びた火も消せる上に魔力を持たない延焼した火だって消せる。問題は【中級】以上の火魔法に対しては効果がないって事と時間が経ちすぎたもの…山火事とかそう言うレベルでの大火災に対しては焼け石に水って所だろう。


「何にせよこれで火魔法も使っていける、付与魔法ってのもあるのか…属性がついて更に攻撃力も上がるとか、便利だな…で、次の魔法は…遠いなぁ。」


 今回も色々な魔法を覚えたけど、一部虫食い状態みたいな感じで魔法を覚えていた、読み進めているページでもある一部分が見えなかったりしているので、ステータスか解読のランクが上がればまだ魔法を覚えられるのかもしれない。やはり勉強は大事だ、これからも本は沢山読んでいかないと。

 そして、次の段階の魔法を覚えるためには火も風も【知】15が必要らしい、おそらくこれが中級魔法を覚えるためのステータスなんじゃないかと睨んでる。今の僕には関係ないけど、一応覚えておかないとな。


「ついに生活魔法の本を読破かぁ…なんか感慨深いよ。この魔法書のお陰で今があるんだ、読み終わったとしてもこれも宝物として取っておかないとな。」


 汚れないようにショートソードの隣に安置する。ちなみに壊れた槍とかは投げ捨てずに持ち帰って近くに穴をほって埋めている。ゴミとして捨てるんじゃなくて、何というかお墓みたいな感じでそこに埋葬してるのだ。自作の槍だからそれなりに愛着もあるので、せめてこう…供養的なもので。


「おとと、次はアイテムを鑑定しないと。今日もやる事が沢山だ。」


―【鑑定】成功!

―【魔力のポーション(高級品)】×2個

―MPが35~80回復するポーション。

―味を最適化している為少し回復量が落ちている。甘い蜂蜜の味。

―【麻痺回復のポーション】

―麻痺を回復する飲み薬。えげつない味がする。

―【小さき太陽の指輪】レアリティ:M

―身につけているだけでHPが徐々に回復する指輪。

―10秒毎にHP1点、1ターンでHP6点回復。

―状態異常を徐々に回復させる。


「またとんでもないものが……てか、ポーションに味がついてるって…おそるべし宝箱…」


 調べたり魔法を覚えている内に外はもう真っ暗だ、朝が来るまではまだまだ時間があるし、これからの事を考えていく。

 森はもういつでも抜け出せる様になった、食料はある程度持ち運べれば十分として問題は水と野営出来るもの、特に雨風を凌げないと雨が降ってきた時に困る。風邪を移動中に引いてしまったらそれこそピンチだから、あたたまる物も必須だ。村や町が徒歩でどれ位掛かるか…そこまで遠くない事を祈りたいが、ダメだったら途中で行き倒れてしまう。

 

 どうするか…このまま旅が安全に出来る様になるまで準備していくのも良いし、水の瓶はかなり集まったから、明日明後日で野営の為の道具を作るために探索に回って早めに出るのも良い…


「…いや……やっぱり水と野営道具が必要だな…皮を沢山集めないとだし、もう暫くはここで生活して、準備を整えよう。」


 最低でもあと1~3週間は準備に奔走しよう。さぁ…これからが本番だ―!!





―11話終了…12に続く




―リザルト

new【力】+1

new【知】+2

new【魔】+2

new【運】+1

―ステータス報告

【田中康夫】【人間:異世界人】【年齢:20】【Lv:--】

【HP】40 【(力+体)×2】

【MP】42 【知+魔+精】

【攻撃力】8+6=14 【攻撃ランク:E+】

【防御力】7+6=13 【防御ランク:E+】

【力】08+00【速】08+01【知】10+00【魔】10+00

【精】08+00【器】08+00【体】07+00【運】05+00

■所持スキル

【カードスロット:4】【サバイバル:下級】

【鑑定:下級】【解読:下級】【MP上昇:最下級】

【火魔法:下級】【水魔法:最下級】【風魔法:下級】

【土魔法:最下級】【光魔法:最下級】【治癒魔法:最下級】

【剣修練:最下級】【速剣術:最下級】【槍修錬:最下級】

■装備

【粗悪な】【ファングスピア】※沢山代目

【攻撃力:6】【攻撃ランク:E+】【耐久:21/27】

【粗悪な】レザーアーマー 

【防御力:3】【防御ランク:E+】【耐久:16/16】

【粗悪な】アームガード 

【防御力:1】【耐久:11/15】

【粗悪な】レッグガード 

【防御力:1】【耐久:19/26】

【粗悪な】ネックガード 

【防御力:1】【耐久:18/22】

【小さき太陽の指輪】

【ターンごとにHP6回復】【徐々に状態異常回復】

【ショートソード】※現在破損

【攻撃力:7】【攻撃ランク:D+】【耐久:00/40】

■セットカード

【ファングラビットカード】:【速】+1 重複不可

【ハウンドカード】:【HP+10】重複可能

■攻撃技

【先手】【蓮華】

■魔法

【灯火】【浄化】【製氷】【弱風】【消臭】

【芳香】【活性】【修繕】【明光】【軽癒】

【念話】【翻訳】

【火炎】【火球】【消炎】【炎与】

【風刃】【風壁】【風縛】【風与】【風化】


2015/09/26 ご指摘を受け修正完了です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ