表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
30/216

CP-02 【異世界の冒険者達】 Ⅱ

間に挟んでの閑話の様なものです。

再び三人称となります、ご注意下さい。

―【フィールド】



「【拒結界】!!」


―アリーセは【拒結界】を唱えた!!

―周囲【56m】内に【レベル:13】以下の悪意、敵意ある者の侵入を遮断する!!


 澄んだ声と共に微かに白いドーム状の結界が展開される。モンスターや山賊等が居るフィールドでは必須とも言える結界魔法の一種。その中でも【中級】に属するこの魔法は自身のレベル-2までの対象を拒絶出来る上に、範囲が広いのが特徴だ。


「……良し、結界も問題無し。ってお帰りアルス。辺りにモンスター居た?」


 結界魔法を張ったのとほぼ同時にアルスが戻ってくるのが見えた。今夜はここで野営する予定なので周囲の警戒に向かっていた様だ。いつもの困った様に見える笑顔だと言う事は問題はないだろうと彼女は気を抜いてシートの上に座り込んだ。


「あぁ、ただいま。近くにブラウンベアーが居たんで倒してきた程度だな。残念ながらドロップはなかったけど。」


 何の気無しに言うアルス。ブラウンベアーは【初心者殺し】の異名を持つ下級冒険者の天敵とも言えるモンスターだが、中級の彼等に取ってはついでに間引かれる程度の扱いらしい。


「お疲れ様だおアルス。今日はボク特製色々沢山シチューだから喜んで食らうがいい。」


「……その何か不思議なポーズに何か意味はあんのか?」


「気分。ってんな訳ないでしょうが。体動かしてたんだお。」


 隣ではティルが格好つけて…いるのかどうか不明だが、様々な不思議なポーズを取って出迎える。夕食作りで疲れたから身体を動かしているだけだが微妙に気になるので問いかけてみた様だ。

 アルスがシートに座ったのを確認し二人に料理を手渡していく。今日の夕食は

二人の大好きなシチューなので少し多めに作っていた。後はパンとベーコン、ミルクとマジックポットに入れてある水。十分過ぎる量だろう。


「ティルのシチューは美味しいよね♪」


「アリーや、君は自分で作る事を覚えようか…?」


「あ…あはは…」


 アリーの料理の腕は壊滅的でまともに食べれる物を作った事が未だかつて一度もない。その隣で飢えた犬みたいにがっついているアルスも似たり寄ったりで、基本的に食事は全てティルが作っていた。女性だなんだと彼女も言うつもりはないが、せめて簡単な物は作れる様になってほしいと姉代わりとしては常々思ってしまう。


「にしても、森まで近くに村も何も無いのが痛いおね。お陰で荷物がギッシリ。」


 簡易テントの側には片道分だが大量の水や食材を詰め込んだリヤカーが置いてある。アーナスの村から目的地の森へは徒歩で行くなら半月近くは掛かってしまう上に、森まで続く道のりには町所か村すらない。流石に人気の無いダンジョン近くには人も集まらないのだろう。これがホープタウンにあるダンジョンならばかなりの出入りがあるので、町もそこそこ潤っていたが。


「運んでるのは主に俺だけどな。」


「か弱い女の子に持たせる気かお~?」


「か弱い(爆笑)。何、メイジやアコライトに持たせるほど俺も鬼じゃねぇよ。それに行きはともかく帰りはアリーの【転移】で帰れるんだし荷物は少ない方だろ。なけりゃそれこそ馬借りてこないといかんが。」


 アコライトであるアリーは時空魔法を覚える事が出来る。数ある属性の中でも時空魔法はかなり習得率が低く、上級クラスになったとしても下級魔法を覚えていない事が多々あるのだ。数ある時空魔法の中でも一番人気とも言えるのが下級魔法【転移】。

 その名の通りアコライト自身が【行ったことのある場所】を限定として其処に一瞬で瞬間移動出来る魔法である。勿論制限があり、【知】がかなり高くないと行ける箇所が1~2箇所程度になるのと、術者が決まった場所に魔法をセットしておく必要があったりする。後はダンジョンでは使えないと言う制限もある。


「まだ覚えたばかりだからアーナスとホープタウンだけなんだけどね…」


「なんのなんの、十分助かってるお。アコライトの補助系魔法は便利なのが多いおね、メイジなんざほとんど戦闘でしか使えない補助ばかりだお。」


 アリーが先程使った【拒結界】を初め聖魔法や治癒魔法、時空魔法は戦闘外で使える魔法が多々存在する。彼女は時空魔法が苦手なのでそれは除外するが治癒も聖も中級で扱える彼女はとても優秀な冒険者と言える。


「結界系はあると無いとじゃ大違いだからな。これのおかげでシーフ無しでもフィールドで野営出来るし、ほんといつも助かってるよ。俺なんか魔法の適正ほぼ0だったから生活魔法も3種しか覚えてないしなぁ。」


 生活魔法はメイジやアコライト関係なく誰にでも覚える機会がある魔法で、幼少期や大人になってからなど多岐に渡って覚え使われている。魔法である以上属性や相性もあり、ほとんど覚えられない者や逆にほぼすべて覚えられる者と人によって様々である。アルスは【浄化】【清潔】【翻訳】の3種の生活魔法を覚えていた。


「アコライトだもん、聖魔法を覚えられたんだしこれ位は出来ないとね。攻撃力は皆無なんだから其処はティル頼りだけど。」


「そりゃメイジなんだし、アコに魔法火力で負けるとか流石にどーよ…」


 アコライトはそもそもの問題で【攻撃魔法】が覚えられない。治癒や時空は回復や支援、阻害しか存在せず、アコライトが覚えられる残り2種の属性【聖】と【邪】には攻撃魔法は存在するが、アコライトはそれらの魔法を一切覚える事が出来ないのだ。逆にメイジは【聖】も【邪】も覚える事は出来るが、その属性の補助及び、聖属性に存在する治癒魔法は一切覚える事が出来ない。


「魔法は専門外だし二人に任せるさ、俺の役目はタンクだしな。」


「私が支援と回復、ティルが攻撃と阻害、アルスが壁と物理火力。そう考えるとやっぱり理想的なパーティ編成だよね。」


「後はシーフが入れば完璧だお。宝箱とかはめったにお目にかかれないとは言え、シーフが居ないと全然わかんないしねぇ。後は後列物理のアーチャーも居ても良いおね。」 


―前衛の物理火力及び防御を担うファイター


―前衛及び後衛で支援や回復をこなすアコライト


―攻守に不安があるがトラップやモンスターの感知が得意なシーフ


―敵の攻撃を阻止したり全体攻撃が得意な後列火力アーチャー


―強大な攻撃魔法や様々な阻害魔法を使いこなすメイジ


 この5クラスがこの世界における基本クラスであり、クラスチェンジでユニーククラスになる事はあれど、基礎の5種以外のクラスは現在を持って見つかっては居ない。これらがレベル20になると神の奇跡により超人化…クラスチェンジする。


「まぁ、その辺はおいおいだな。焦っても仕方ないしゆっくり行こうぜ? あ、それと結界があっても油断は出来ないし何時も通り3交代で休むか。」


 周辺のモンスター程度ならば結界も張ってあるので問題はないが、もう一つ厄介なのは知識のある人間だ、程度の低い山賊位ならともかく、冒険者から落ちぶれた野盗などには気をつける必要がある。結界を解除した瞬間に奇襲されでもしたら堪ったものではない。わざわざ無駄に危険を作る必要はないので、夜通しの警備は必須だろう。


「其処は男らしく【俺に任せてくれお姉ちゃん】とか言わないのかお?」


「言わないな、絶対にないな。お? これ美味いっ!」


 おどけて言うティルの言葉をガンスルーし夕食を頬張るアルス。其処には一切の迷いがなかった。そんなどうでもいい話より目の前のパンとシチューの方が何倍も大事なのである、おかわりも勿論必須だ。


「この野郎…焼いてくれようかかかかか…」


「わぁ、この野菜甘くて美味しい!」


 夜のフィールドを木霊する楽しげな声が辺りに響き渡る。空は星空がまばらに見え始め雨の降る心配もなさそうだ。暫くの間は雨に濡れずに旅を続ける事が出来れば移動も早い、早めに依頼を終わらせて町でのんびりしよう。目の前で子供の様にはしゃいでいる二人を優しい目で見つめながらティルは微かに笑みをこぼした。でもアルスは後で焼こうと心に決めながら。


 彼等は徐々に迷いの森に近づいていた―



2015/09/26 ご指摘を受け修正完了です。

2015/09/28 ご指摘を受け別視点での題名を変更です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ