07-02 【異世界の常識と自分の常識】 Ⅱ
この短期間でPvが77,777 ユニークが18,000を超えました。
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もう少しで森は終了、其処からがお話のスタートです。
つまりまだプロローグ中(汗
―2日後
漸く身体が万全になったので今日からモンスター退治を再開する。
毎日使い続けた【軽癒】が効いてくれたのだろう。たとえ擦り傷切り傷を治す魔法でも塵も積もればという奴だ。これが薬だったら死んでると思うけど…
今日はリハビリがてら食料探しをメインに行う予定だ。【製氷】の魔法が思った以上に便利なのでこれで魚の保存やちょっと手を入れて簡易容器にするのも良いかもしれない。ある程度連続して魔法を掛けておけば早々溶けないので有難い。手に持っていたら流石に溶けるので基本は未だに何故か腐らないハウンドの皮で持ち運んでいるけど。
大怪我をしてから3日以上…流石に身体を動かしたくなってきた。少し前までは家から一歩も出たくないとか騒いでたのに、良い意味でアグレッシブになってきたと思う。来た当時と今じゃ色々違うかもしれないな。
見た目的にも…あれだけ出ていた腹がかなり減っこんでるし、体の調子も地味に良くなってる。今ならそこそこ走っても息切れはしにくいかも…試してないので分からないが。
さて…外に出る以上、ウサギ等を見つければ戦いになる。一応見つけたら倒す予定なので戦闘用の槍も持っていく。これとは別に魚取り用の短めの槍も作ってみた。時間があまり余ってたので暇つぶしの為に作ってみたけど、これが思いの外取り回しが良い。武器にするには流石に短すぎるので川などで魚を取る用にしている。
「ハウンドは出来るだけ避けていく方向だな…食料の魚は【消臭】を掛けておいたし匂いで見つかる事も無いはず…それでも出会ったら槍で牽制しながら【火炎】で攻撃していこう。」
【火炎】は命中すればウサギならほぼ一撃で倒せる。この前大怪我をしたのはMPの使い過ぎに寄る疲労とMP枯渇の所為だ。あの時槍で牙を折れていなかったらと思うとゾッとする。
ハウンドの生命力がどれだけ高いのかは分からないけど、ウサギが1~2回なら2~3回当てれば勝てると睨んでいる。問題は出来るだけ魔法が使えそうな広い場所戦わないと火が周囲に燃え移る可能性が高いという所だ。威力も高くとても強力な魔法だけど、使い方が難しいのが難点だ。
「何にせよ…今日も一日頑張ろう。」
今日も一日が始まる―
―ファンタジーによくある理不尽
今日は微妙にエンカウントが多く、運良く小動物も取ることが出来た。同時にハウンドに見つかりかけて必死に隠れたりもしたけど…そんな感じで開幕からヒヤヒヤしつつ川に辿り着いたら、目の前に今まで無かったあり得ないものが無造作に置いてあった。木で出来た様な大きな箱…どこからどう見ても宝箱が其処にあった…
(……なにこれ…ナニコレ…? 何で宝箱がこんな所にあるのさ? 4日前…ってか、昨日水の飲みに来た時はなかったぞ。こえぇ…怖いよファンタジー…)
頭の中で絶賛大混乱中の僕。目の前の理不尽に怖くて周辺を意味なく見回してしまう。RPGなどでお馴染み、と言うか無いと寂しいと言うかあって当たり前の宝箱だけど、今まで無かった所にドンと置いてあるのをリアルで見ると嬉しいとか以前に引いてしまう。それに罠やミミックだったら対処の方法が無いのが更に怖いのだ。
しかしやはり宝箱、中身が気になってしまうのは仕方ない。何が入っているかは知らないけれど、現状を打破できるものが入っている可能もある…勿論罠の可能性もある、開けるか開けないかは自分で考えなければならない。
(もしミミックや衝撃で罠が発動するタイプなら遠くから投石すれば動き出すかもしれない。まずは試してみよう、近くは丁度川だし最悪【火炎】で炙るのもありだ。)
手始めに軽く離れて投石を仕掛けてみる事にする。大体20~30mほど離れて河原の石を宝箱目掛けて投げつけた! しかし僕はノーコンなので投げた側から外れていく…中学生の頃ボールを投げたら後ろに飛んでのは良い…良くない思い出だ。それでも12回目の投石時に漸く命中する。力が上がったのもあって投げつけた石は鈍い音を立てながら軽くバウンドして近場に落ちた。
宝箱に反応はない。ミミック辺りならあのレベルの衝撃を与えれば動きだすと思うので、再び何回か石を投げつけていく。体感8%位の確率で石が当たってくれたが、森を出たら投石の練習をしないとやばいような気がする…
(4~5回当たったけど反応はないな…衝撃で発動するタイプの罠やミミックじゃ無いのかもしれない。それじゃ次は…)
「すぅ………【火炎】!!」
―ヤスオは【火炎】を唱えた!!
魔法で作られた炎が宝箱の直ぐ側を襲う。見た感じ木の宝箱なのでジリジリと焦がしてみようという考えだ。モンスターなら攻撃を受けているのだから動き出すはず―
魔法の効果が切れても宝箱は微動だにしない。この時点でミミックの可能性は殆ど無いと思う。開けたら動き出すタイプならそれこそ運が悪かったと諦めるしか無いな…死にたくは無いが。
ゆっくりと近づいて宝箱を調べていく、何処かに罠があるかもしれない…と言っても何をどう調べていいかわからないので手探りでおかしい場所を探していくが、何がおかしいのかもわからないので正直意味が無い、でも不安なままで開けるのは心臓に悪いし、気休めでも落ち着いておきたかった。
(これで鍵が掛かってるとか、空だったら凹むな…ここまでやってそれじゃなぁ…とりあえず見た感じ剣とか毒針が飛び出すとかは無さそうだな、安全のために裏側から開けてみよう。爆発とかガスとかだったら人生終わるけど…)
これがRPGなら初期ダンジョンからそんな致死系のトラップなどは置かない…まれに例外はあるけど、この世界はファンタジーだがリアルの世界だ。そんな生易しい理論が通じる訳が無い。
一番良いのは無かった事にして無視するのがいいのだけど、宝箱の中身はやはり気になってしまう。たらればの話でも…だ。
(よし…開けてみよう。何も起きませんように、何も起きませんように、何も起きませんように。)
意を決して宝箱の後ろ側に膝を立てて座り宝箱を開ける準備をする。何度も大きく深呼吸をし、ドクンドクンと高鳴る心臓を落ち着かせ全力で開いた! それと同時に意味は無いかもしれないが全力で立ち上がって逃げ出していく。
情けないとは言わないで欲しい、シーフとかならともかく素人判定で宝箱を開けたのだから怖いのだ。近くの木があるの場所に飛び込んで様子を確認する。ここまで逃げ切れた以上、とんでもトラップは無い様だ。
開けて1分ほど過ぎたが何も起きていない、頭の中のログには何も書かれてない所を見ると、罠でもモンスターでも無かったようだ。
「はぁ…はぁ……滑稽だなぁ、僕。さて、中身を見てこよう。」
思わず自嘲しながらも宝箱に近づいて中身を見てみる―
―本(未鑑定)1個獲得!
―薬(未鑑定)1個獲得!
中に入っていたのは僕が持っている火魔法の書とそっくりな本と前割れたポーションと同じ瓶だった。すぐさま【鑑定】してみる。
―【鑑定】成功!
―風魔法の書 読むと風属性の魔法を覚えることが出来る。
―ポーション(粗悪) 飲用するとHPが【3~5】点回復する。
―凄まじくまずい
「あ、新しい魔法の本だ!! それも風魔法じゃないか! こっちはポーション! これで水が保存できるぞ!」
風魔法に攻撃魔法があるかは分からないけど、もしあるならば周囲をあまり気にせずに魔法が使える、火魔法も強いが火事を考えれば多用できなかったけど、この魔法ならば多用出来そうだ。
それに欲しかったポーションの瓶。これに限界まで川の水を入れておけば、飲む時に【浄化】でいつでも水が飲めるようになる。あまりの興奮に思わずその場で拳を振り上げてしまった。
「やった…! とりあえず中身は飲んでおこう。 …うぷっ…ぐ…」
まずい。ひたすらにまずい。味もそうだけどこのザラザラとした感触と雑草を煮詰めて濃くして何日間放置したような、そんな表現が付きそうな位の匂いが鼻を突き抜けていく。思わず吐き戻しそうになったけど、これでも回復のポーション、怪我していたのだから飲んでおけば更に回復の効果があるはず…と、涙目になりながらも全部飲み干した。出来ればもう飲みたくない…
「粗悪だからなのか…良品もやばかったしなぁ…でも、これで。」
ポーション瓶に水を入れ蓋をする。蓋はコルクの様な奴で結構頑丈に出来ている。まぁ、それはどうでもいいとしてポーション瓶にはなみなみと水が入っている。ポーション自体はこの容器に半分以下程度しか入っていなかったけど、実はこの容器そこそこ大きく500mlのペットボトル位は水が入るのだ。
これはとても有難い。後この瓶が1~2個ほどあれば安定するのだけど、今これ以上を望むのは高望みし過ぎだろう。1個手に入れただけでも十分だ。
(とと…あまり喋ったらモンスターが来るかもだ。今日は狩りとかは中断して隠れ家に戻ろう、風魔法の書を手に入れたんだし早速覚えないとな。)
何と言うか順調?に魔法使いへの道を歩いている気がする。もし地球に戻れたらこれだけで一芸として生きていけそうな気もするな。もしかしたら今まで迷惑を掛けた分両親に親孝行できるかもしれない。喜んでくれれば良いな……
魚を取るのを忘れていたけど、水と魔法をどうにかする方が先という事で僕は急いで隠れ家に戻った―
…………
―【隠れ家】
今現在隠れ家にはポーション瓶に入れた水がある。たったそれだけの事がどうしようもなく嬉しかった。これで緊急時とか雨の日に水を我慢する必要がかなり減ったのだ、こんなに助かる事はない。水も【浄化】や【製氷】があるから長期保存も可能だし、冷たい水にして飲む事も出来る。
「やべぇ…実感したら涙出てきた。有難う、生活魔法超有難う。」
と、永遠と感動している訳にもいかない、【明光】の魔法でかなり明るくなった洞窟内、夜がふけても普通に本を読む事が出来る。焚き火でもそこそこ明るかったが、やはり明るさが違う。手に取るのは今日手に入れてきた風魔法の書だ。さぁ、何を覚えられるのだろうか―
―解読成功 【風魔法の書】【3割読破】【必要知:10】
―【風魔法】ランクアップ!
―必要【魔】到達
―魔法取得
【風刃】【風壁】【風縛】
覚えたのは3種、かなり遠くの方まで風の刃を飛ばせる攻撃魔法、【風刃】
飛距離が長いというのも利点だけどこの魔法消費MPが凄まじく少ないのだ。その消費量、たったの【1】今の僕でもかなり連打出来てしまう。威力は流石に【火炎】には及ばないけど、この魔法は風魔法だから気兼ねなく使えるのが嬉しい。
それに【風壁】と【風縛】の2種、これもかなり便利だ。此方は消費MPが高いけど自分の周りの風のバリアを展開して攻撃を防げる防御魔法【風壁】に、敵を一定時間【捕縛】して動けなくさせる【風縛】。これがハウンドに決まれば無傷であいつを倒すことだって出来るはずだ。
「防御魔法だ! それの阻害魔法に欲しかった攻撃魔法まで…! これでモンスター退治もやりやすくなるぞ。ウサギやハウンドも安定して倒せる様になるかも…!」
次の魔法を覚えるのに【知】が10も必要なのはご愛嬌だ。火魔法の方もそうだったしこんなものなんだろう。次の魔法を覚える時が少し楽しみでもある。頑張って強くなればきっと―
「これでまた色々出来るようになったけど、過信は禁物だな。防御魔法も阻害魔法もどこまで有効かわからないし、消費量も多い。魔法の使いすぎでこの前みたいになったら逆にピンチだ。ハウンドに行き成り行く前にウサギや動物で試してみないと。」
魔法はとても便利だけど、それを使っている自分はまだまだ弱い。ハウンドはおろか、ウサギの牙で死にかけているレベルなのだ、どんな時でも、絶対に勝てる状況でしか戦わないようにしないと、油断している暇なんて僕にはない。
後は今回の宝箱の事を考えて少しだけ探索範囲を広げてみようと思う。そんな直ぐ出てくるものじゃ無いだろうけど、使えるものを拾えるかもしれないし一応外に出られるか出口を探してみるのも良いだろう。ついでに戦っていけば安定するはずだ。
「ぁふ……少し眠くなってきたな。まだ夜には早いし火の勢いを強くして仮眠を取っておこう。夜は寝られないしな。」
早く数時間でも良いからゆっくり寝られるようになりたいなぁなんて思いながら僕は仮眠の準備を始めていく。
夜が来てまた朝になるまで今日も一日頑張ろう―
―07話終了…08に続く
―リザルト
new【光魔法:最下級】
new【風魔法:下級】
―ステータス報告
【田中康夫】【人間:異世界人】【年齢:20】【Lv:--】
【HP】20 【(力+体)×2】
【MP】14 【知+魔+精】
【攻撃力】5+5=10 【攻撃ランク:E+】
【防御力】5+0=5 【防御ランク:G】
【力】05+00【速】06+01【知】06+00【魔】06+00
【精】06+00【器】07+00【体】05+00【運】03+00
■所持スキル
【カードスロット:4】【サバイバル:下級】【鑑定:下級】
【解読:下級】【火魔法:下級】【水魔法:最下級】【風魔法:下級】
【土魔法:最下級】【光魔法:最下級】【治癒魔法:最下級】
【剣修練:最下級】【速剣術:最下級】
■装備
【粗悪な】【ファングスピア】※3代目
【攻撃力:5】【攻撃ランク:E+】【耐久:06/09】
【ショートソード】※現在破損
【攻撃力:7】【攻撃ランク:D+】【耐久:00/40】
■セットカード
【ファングラビットカード】:【速】+1 重複不可
■攻撃技
【先手】【蓮華】
■魔法
【灯火】【浄化】【製氷】【弱風】【消臭】【芳香】
【活性】【修繕】【明光】【軽癒】
【火炎】【火球】
【風刃】【風壁】【風縛】
2015/09/19 ご指摘を受け修正しました。




