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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
23/216

07-01 【異世界の常識と自分の常識】 Ⅰ

お話の指摘や誤字指摘はとても助かります。


―2日後 【ヤスオの隠れ家】



 2日前に受けたダメージはかなり酷く一時は死も覚悟した。

 必死に逃げて洞窟までたどり着き【軽癒】を常に掛け続けてて今がある。何回も何回もMPが続く限り常に回復魔法を唱え続けたお陰もあり、今日漸く普通に動ける程度まで回復してくれた。一番弱い回復魔法とは言うが僕に取っては命を繋ぐ大事な魔法だ。


 やはりウサギの一撃はとても危険だ。あの牙の攻撃はかなり鋭いし突き刺されば大ダメージは必至…というか太腿に刺さったら出血多量で死ねる。幸い牙を槍で叩き折った後に突撃を食らったので即死は免れたが、それで体勢を崩し連続で攻撃を受けてしまったのがきつかった。

 多分肋が1本位折れたのだろう、吐血なんて生まれて初めての経験だった。出来ればもう体験したくない。今は多少の違和感などはあるけど、問題なく動けている。固定の方法も分からず常に回復魔法だけで対応したからちゃんと治っているのか、繋がっているのか不安だけど、痛みはもうほとんど感じない。


 戦闘に関しては…ウサギの攻撃は体感で4~6割ほど回避出来るようになってきた。相手の行動パターンを読み、それを逆手に動けば大体は避けられる。

 勿論普通に相手が早くて避けられない時や読み間違いもあるけど…しかしウサギに対してあれほどまで感じていた恐怖はもうそれほど感じていない。あいつは今の僕なら倒せる相手だ、後はミスさえしなければ攻撃は避けられると思う。


「ハウンドはまだ無理、っていうか怖いからなぁ…」


 ハウンドに限らず地球でも見も知らぬ大型犬に跳びかかってこられたら大体の人は怖いと思う。勿論僕は小型犬だって襲われたら怖いです…今なら反撃できるとしても。


「そう言えば、この数日寝込んでて何も出来なかったけど、【知】が上がってるんだよな、新しい生活魔法を覚えられるかも。今日は魔法の勉強に集中しよう。」


 2日前の戦闘でステータスが上がり新しい生活魔法が使える前提は整っていたが、本を開く余裕すらなかったので放置していたのだ。骨が折れた事による熱と絶えず襲ってくる激痛、食事はおろか水すら飲みに行けず洞窟内で蹲りながら回復に専念していたので仕方ない。


 早速生活魔法の書を取り出しページを開いていく。今度はどんな魔法が覚えられるのだろうか、水を出せる魔法とかだったら嬉しいな―


―解読成功 【生活魔法の書】【7割読破】【必要知:7】

―必要【魔】到達!! 魔法取得!

【光魔法:最下級】

―取得魔法

【製氷】【芳香】【消臭】【明光】【修繕】


 新たに魔法を5つも覚えられた。

 どれもこれも名前からして便利そうな、と…一番最後に覚えた魔法に目をつけた。


【修繕】MP:2

耐久度が【1】以上あるアイテムや装備を【魔】点回復する。

但し最大耐久度が使用毎に【7-魔】点(最低1点)下がる。




―【耐久度が【1】以上あるアイテムや装備を【魔】点回復する】




 その文字を見た瞬間、顔面を思い切り殴られた様な衝撃を受けた。この魔法があれば…この魔法があの時使えれば、ショートソードはまだ……一応僕なりに出来る限りの手入れはした、ついた脂などを毛皮で拭き取ったり川辺で洗った後に魔法で乾かしたり、剣の手入れなんて生まれてこの方やったことなんて無かったけど、それでも必死に頑張って…やっぱり無意味だった時はかなり落ち込んだ…


「畜生!! ちくしょおおおおおおおっ!!」


 魂の叫びだった、身体がまだギシギシ言ってるのも構わず僕は絶叫を上げてしまう。それほどまで渇望したあの時どうしても欲しかった魔法なのだ。

 戦いの時1手遅れてもいい、この魔法を使う事が出来れば今も僕はあの剣を持って戦っていた筈なのに…どうして、どうして今頃覚えるんだよ。


「なんで…もっと早く覚えてくれなかったんだよ…! 畜生…!!」


 苛ついて右手を握りしめ地面に叩きつける。腕に走る痺れと痛みが今は丁度いい…何度も何度も地面を叩きつけながら感情を制御する事が出来ずにいた。涙が溢れ目の前が滲むのを感じながら、ただ怒りを地面にぶつけていく―





―30分後





 思い切り心のゆくまで叫んでいたお陰か、漸く気持ちも落ち着いてきて冷静に物を考える様になってきた。気がつけば地面の叩きすぎで血が滲んでいたので回復魔法を使い、大きくため息をつく。


 気持ちを入れ替えてこれからの事を考えていく事にした、過ぎたものは今更どうしようもないのだ。例え遅いとしてもこの魔法があればこれからの装備の耐久度は回復出来るようになった、これから有効活用していかなくては。



 新しく覚えた魔法は【修繕】に加え【製氷】【芳香】【消臭】【明光】の合計5種類。【製氷】は一定の水を氷に変える魔法の様だ、これを上手く使う事が出来たら、飲水の確保…主に凍らせた後洞窟に持ってきておけば万が一の場合の飲用水に出来る、汚れは【浄化】で綺麗にすればいいし、少量なら【製氷】をもう一度掛ければ良い。

 どうやら【魔】の数値分の時間は凍らせられるらしい…つまり最大で6時間は氷のまま保存できる。そこから一瞬で溶ける訳ではないので新しく魔法を掛け直せば安定して氷を取っておける。中に魚などを入れておけば食べ物の保存も出来るだろう。勿論任意で直ぐ溶ける様にも出来るみたいだ。生活魔法はチートだと思う今日この頃である。


 【芳香】と【消臭】は地球だったら凄まじく欲しい魔法かもしれない。【芳香】は自らの体臭を単純に言うと良い匂いに変化させる魔法の様だ、香水が要らなくなりそうだけど、微妙に気持ち悪い。

 【消臭】は【魔】時間の間、一定の対象や自身の匂いを消去して匂いを消す魔法だ、一応【清潔】の魔法で身体は常に清潔にしているけど、モンスターも動物もやはり匂いに敏感だから、奇襲とかをするならこれは役に立つ筈だ、【清潔】とは違って完全に匂いを消してくれるのだから。


 そして【明光】一定の範囲内に明るく光る光球を呼び出すことで周囲を明るくできる魔法だ。


―ヤスオは【明光】を唱えた!!


 早速頭上に魔法の指定をして【明光】を唱えてみた―

 凄まじく明るい、焚き火の火の明るさとかそう言うレベルじゃない。蛍光灯の一番明るいやつ、そんな感じの明るさが周囲を照らしてくれている。洞窟の中なのに自分の部屋で電気をつけた様な光を放ち続けていた。生活魔法って色々とんでもないなぁ…しみじみそう思う。


「すげぇ…魔法すげぇなぁ。これでまた少し生活が楽になったよ…」


 また1歩先に進めた、確実に足場が整ってきている様に感じる。後はモンスターを倒して自分のステータスを上げるだけ、でもそれが一番難しい。モンスター相手に無双する! なんて今の自分には縁遠い言葉だ。


 【魔】も結構上がってきた。【運】も初めに比べればかなり上がってきたと思う。森を出るためにはこの2つを重点的に上げていきたい。【魔】については魔法に比重を置いて戦えば上がりやすいかもしれない。

 普通に考えて接近戦で魔力関連が上がるのは色々おかしいし。一応この前戦った時は魔法寄りのステータスが上がっていたから、次からも出来るだけ魔法で戦っていく予定だ。場所によっては槍も使うけど。


 そして…森を出る事が出来た後の事も少しは考えていかないといけない。森を出ても人里まで何十キロもあるとか普通に有り得そうだ。地球…日本だってそういう場所はあるのだし、そうなれば食料や水をどうやって確保するかが問題になる。やはりハウンドを沢山倒してあのポーション瓶を複数確保しなければ先には進めないな。


「一応メモ帳の人がこの森に来てる位だし、そこまで劇的に人里まで離れてるって可能性は薄いかも…いや、どう見ても白骨死体だったし彼が来てから何年も経ってると考えれば、分からないなぁ…」


 自分は運が悪いし、早々運良く見つけられるか分からない。ステータスの【運】が関連しているのなら…どうなんだろうか。流石に運はどういう風に作用しているのか分からないし検証のしようが無い。

 何にせよ今漠然と考えても答えは出ないだろうし、今出来ることをやるしかないのは変わらない。とりあえずはポーション瓶の確保とステータスの上昇が急務だ、ウサギを沢山倒してステータスを上げハウンドに挑まないといけない。いつになるのやらだ…


「いつつ…今日一日様子を見ておこうかな。明日から大丈夫ならウサギ退治を再開しないと。手持ち無沙汰だし本でも読んでおこう、またスキル覚えるかもだしなぁ。」


 ゆっくりと本を読み進めていく、地球に居た頃は好きな漫画ですら半分読み飛ばしで見ていた気がする。一行一行ゆっくり見るのがこれほど楽しいのかと今更ながらに思ったりした。



2015/09/18 【修繕】を覚えた時の部分を加筆修正です。

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