45-03 【望郷、日常、悪意、殺意】 Ⅲ
今日の分の予約投稿を1日間違えてました(汗
なのでたった今書き上げました。
―夜 ヤスオ自室
「でさーあの冒険者野郎がうざくって。おい、ヤスオ聞いてるの?」
「…すぅ……すぅ……」
「おめぇ、いつになったら帰るんだよ。狩りから帰ってきたら拉致られてずーっと愚痴とか、ほら見てみろ連れてきたアリアちゃんが眠ったじゃないか。つーか僕の精神力はもう0です」
カトル君達との狩りの帰りにミキと彼女に連れられたアリアちゃんの二人に出会い、何故かずーっと我が家で愚痴や世間話を延々と聞かされていた。
赤焼けていた夜空もすっかり星の瞬く夜中になっている。
「いいじゃんどうせフィールドだったんでしょ? 暇なんだし付き合えよー。こっちゃはらわた煮えくり返りそうでさ」
「つーか…何で俺まで」
途中出会ったフィル君もついでとばかりに拉致られている。
最初のほうこそ楽しんでは居たが、流石にこの時間にもなると疲れてくるものだろう。
「其処にいたしなぁ、その場のノリで?」
「帰らせろよ! 流石に眠いっつの!!」
フィル君魂の絶叫。
しかしアリアちゃんは僕のベットで起きること無く眠っている。
安心仕切っているのか寝たら起きない子なのか…まぁ、幸せそうなのでもう少し眠らせておこう。
「だ、大丈夫かいフィル君?」
「今日は遅くまで槍の練習してたせいで眠い。で…かいつまんで言うと? ミキとアリアが広場で冒険者に絡まれたのはわかったけどよ。それ自体は団長…いや、ファッツがやってきて止めてくれたんだろ?」
「あんの野郎、ドサクサに紛れて私やアリアの胸や尻触ってからに…気持ち悪くてぶっとばしてやろうかと思ったらファッツが来てさ、お陰で消化不良だっつの」
「は…? それはファッツに言ったのかよ!?」
「あいつに言ったってねぇ…怒って終わりでしょ? てか気持ち悪いしさっさと二人で逃げてきたわよ。ぶっ飛ばそうにもあいつに捕まったら終わりでしょ?」
「…お前…!! 言うのが遅い。で、その冒険者はどこ行った?」
「しーらね、どうせ町のどっかに居るんじゃね? 次は出会ったらぶっ飛ばしてやる」
アリアちゃんとミキがセクハラ…いや、そう言う次元じゃ無い事を受けていたと知って怒りが込み上げてくる。アリアちゃんは確かに隙だらけだし可愛い女の子だ、ミキも見た目は悪くはないから男性の目を引くのは分かる。
わかるがやっていいことと悪いことがある。それは異世界だって同じことだ、その程度のモラル位この世界にも普通にあるはずなのに、そういう冒険者もやはり居るって事なんだな…目の前にいたら僕が止めに入れたのに。
「お前もアリアちゃんも接近は苦手だろうが、集団で襲われたらって事を考えとけっての。冒険者全員が良い人ってのは無いんだぞ?」
「他の街ならいざしらず、このお人好しが服着て歩いてる町でそんな無謀な真似する奴がいんの? ハウル辺りにボコられて終わりでしょ。あーあ、あいつが来る前にボコっておけばよかった」
「あのなぁ…とりあえず暫くは誰かと行動しておけよ? そういう奴らって根に持つ奴が多いんだから」
僕達は冒険者だ、自警団の人が全てを護ってくれる訳じゃない。
自分達の身は自分で守らないとダメな時がある。特にアリアちゃん辺りは普段一人の事が多いから誰かが常についていてあげないとダメだろうな。
この後ティルさんから念話もくるだろうし、アルスさん達と相談しておこう。
「わかったわよ、怖いこと言わないでよね…(そういや、あの時も…)どうせならヤスオかフィルが守ってよ? あんたら強いんだし、私知り合いあんまり居ないしね」
「あぁ、基本は俺等の誰かと一緒に居ろ。俺の方でも今町にそういう奴が居るってファッツやハウル達に伝えてくる。帰りはアリアも連れて一緒に帰るぞ。流石に夜に一人にはしておけねぇ」
「僕も帰りは基本送っていくよ。一過性な物と気軽に考えたら何が起きるかわからないからね」
「過保護な奴ら…ま、感謝しておくわ。少し気分もスッキリしたしそれじゃ私達も帰るわ。今日はアリアもいるしフィルもいるから別に送らなくても良いわよ? あんた狩りで疲れてるんでしょ?」
「しかし…なぁ?」
「安心しろって、俺がいるし」
ミキもアリアちゃんも冒険者だし、フィル君も居る。彼が言うなら任せても大丈夫だろう。
「そーいやヤスオ? そこにミキ様謹製、シーフ秘伝の書があるから読んどけよ。てかさぁ、いい加減に教わりに来いよ。来ないと次は1000万にするぞこんにゃろう」
そういえばさっきミキがテーブルに本を置いていたな。
其処には本と言うには少し以上に薄い枚数のおそらく自作の本あった。
これ自分で作ったんなら、暇と言うかよく出来たなぁと言うか。
「後で読ませてもらうよ。時間がなくてさ、近いうちに行かせて貰うよ」
「へいへい、んじゃアリアを起こすかねぇ。おーい、そろそろ起きれ~?」
「……ん……ぅ…」
今なおゆっくり眠るアリアちゃんを起こすのに暫くの時間がかかったが、
結局彼女が起きる事は無く最終的にはフィル君が背負って帰っていった。
◆
「ただの愚痴かと思ったけど、一大事じゃねぇか」
ぽつりと言葉が漏れる。
そうだよな、冒険者が全員良い人間という訳がない。寧ろそういう人種の方が多いのが現実だろう。ミラちゃんやレティカちゃんだって、それで人間不信になりかけたのだから。
僕達は運良くここにいるから其処までの悪意を知らないだけなのだ…カノンが味方以外には冷酷な面を見せたりミキがあまり他人に干渉しないのもそこから来ているんだろう。
「あの二人にセクハラだぁ…? 今度僕が見つけたらとっちめてやる。今考えても仕方ないか、ミキからもらった【秘伝の書(爆笑)】でも読ませてもらうかな」
ペラペラな表紙にはデフォルメされたミキの顔がでかでかと描かれてあり、そこにはデカデカと【ミキ様謹製シーフ秘伝の書】と書かれていた。この時点でももう読む気分が失せたが、とりあえず一ページ目を開いてみた。
「破り捨てていいかな…」
1ページ目に書かれていた文字を見て一気にやる気が消えていく。
―【ミキ様秘伝!! 気合!! 以上!!】
―解読成功!!
―必要【器】達成!!
―【エネミー感知:最下級】を覚えた!!
「あ、2ページにはまじめに書いて………なにこれ、なにこれ…悔しいんですけど。せめて2ページ読んだ後に覚えて欲しかったです」
2ページ目にはまともな事が書かれていたのだが…その前に何故かスキルを覚えてしまった現実にとても納得が行きません先生…
「わーいおぼえたぞー……納得行かねぇ…納得いかねぇ…システム外ってお笑いなのかなぁ…【やすおアタック】とかさぁ…変な悪意があるよなぁ」
微妙な気分のまま時間だけが過ぎていった……




