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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【2章】 ギルド結成とこれから
205/216

44-05 【アコライト】 Ⅴ


―ヴァイパーが現れた!

―ブラウンベアーが現れた!

―モンスター達は奇襲を受けた!



 ミキの索敵のお陰でこちらから攻勢に出ていく。

 シーフの技術はやはり有りがたいな。


 剣を構え攻撃を発動させようとするとそれよりも先にクリオさんが動いた。


「さてさて、行きましょうか。【アクセラレーター】【マスターサポート】【ダブルブースター】!」


 右手でくるくると器用に杖を回転させ目の前に突き出し左手を胸の前で合掌の様な恰好を取り魔法を唱えていく。


「【連瞬化】【吸精剣】!!」



―クリオは【連瞬化】を唱えた!

―味方全体の回避率【10%】上昇! 行動速度【10】上昇 2ターン持続!

―クリオは【吸精剣】を唱えた!

―【3T】の間【物理攻撃】で与えたダメージの【10%(最大20点)】を

―攻撃する度に【HP】として吸収する。

 

 体が一気に軽くなる、普段【風瞬化】を使っているのでこの感覚はなれたものだ。ただ実際に早くなって訳ではなく移動力に補助が付いているだけの様なので、【蓮華】系の威力上昇には恐らく繋がらないだろう。


 そしてもう一つの魔法の効果なのか腕から武器にかけてドス黒い色が覆っていく。色的に少しばかりグロいが違和感等は全く感じられない。まさかショートソードまで赤黒くなっているのは驚いたが。

 ログを覗いてみた限りではこの状態の時に物理攻撃でダメージを与えればHPをドレイン出来るらしいから【速剣術】の連撃系技とは相性が良いかもしれないな。


 だが今回は攻撃にショートソードを使うつもりはない。


「行くぞ…! 【ウェポンチェンジ】!!」


 右手に持っていたショートソードが一瞬にしてミスリルスピアに入れ替わる。

 前回のケルベロス戦闘時に覚えた武器交換出来るというとんでもスキルだ。近場に自分の武器さえあれば、スキルを発動させる度に武器をタイムラグも無しに交換できるというのはかなり強い。


 狙うはヴァイパー。

 蓮華のコンボでブラウンベアーを倒すのは可能だが、クリオさんの支援等を見るためには一瞬で倒してしまうのは悪手でしかないので、槍の鍛錬を兼ねてヴァイパーに突っ込む。


「おおおおおっ!!  きたぁ!! 【巻撃】!」



―ヤスオの攻撃!! 【巻撃】を閃いた!



 普通に突き刺す予定で槍を思い切り突き刺そうとした瞬間、全身から力が湧き上がってくる。その力のままに技を発動させると同時に手足を捻り槍に回転力を加えてえぐり込むようにスピアを突き刺した。

 ヴァイパーの胴部も深々と穂先がねじ込まれる、その一撃が硬い皮を引き裂き肉を抉る。


「ギャアアアアアアアアアアアッ!?」


「!? グルァ…!?」


「おう熊公、何かよこしやがれっ!! 【スティール】!!」


 突然の奇襲とヴァイパーの絶叫にブラウンベアーがビクンと驚いたようにすくみ上がる。そしてその隙を狙ってミキがブラウンベアーの脇を駆け抜けていった。

 

「…いや、お前、これどこに持ってたのさ…?」


 走り抜けたミキが右手に大きめの盾を掴んでいる。

 先ほど駆け抜けざまにブラウンベアーに【スティール】を仕掛けて成功させたのだろう。盗んだ張本人が驚いているが、僕も普通に驚いている。うん、こいつどこに盾持ってたんだろうな…


「ギイイイイッ!!」


「遅ぇ! 今度は俺の番だ!!」


 ヴァイパーが胸から血を溢れさせながらも動き出そうとしたが、その真上から技を使って思い切りジャンプしたフィル君が槍を構えながら落ちてくる。


「!!!!!!!!!!」


 奇襲に加えダメージも受けているヴァイパーがその一瞬の攻撃に対処する事など出来ず、頭部から槍が突き刺さり消滅する。


「速度上昇に攻撃時HP回復か…技をメインに使えばHPの消耗が激しいからね、アコライトとしては十分だ。でも中級魔法を連続して使ってMPは大丈夫なのかい?」


「ご安心を、その辺の計算は出来ていますよ。それにMPなどの補充手段は普通に有りますからね」


 人差し指をピピっと揺らして言うクリオさん。

 彼も12レベルの中級冒険者だから、中級魔法を3~4回程度の消費では、まだMPはそこそこ残っているだろう。僕はあまりMPが無いので何度も使うのは難しいが。


「それなら十分だ、さて…行こうか」


 言うが早いか気がつけば矢を放っていた。

 放物線を描くように矢はブラウンベアーの目を射抜く。


「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 激痛でところ構わず暴れだす熊だが、もう片方の目が血走り怒り狂ったように僕の方まで突撃してくる。それ自体は簡単に回避できたが、直ぐに踵を返して立ち上がり大きな大ぶりの一撃をこちらに向かって振り下ろそうとしてきた。


「【土硬壁】!!」


 豪腕が僕を打ち据える前に強固な土壁がせりあがる。

 しかしそれを砕いて腕は僕の装着している鎧を斬りつけるが、防御魔法で威力を弱められれた一撃はほとんどダメージにならない。


「【瞬癒】!!」



―【割り込み】!! クリオは【瞬癒】を唱えた!!

―ヤスオのHPが回復!! 残り10割



「感じていた痛みがあっという間に消えていく……?」


 大部分は軽減したがそれでも衝撃による痛みはあった。

 その痛みもクリオさんが攻撃されたと同じタイミングで発動した回復魔法で完璧に回復していた。


「必要ないかと思いましたが、一応ね? 割り込みで回復できる便利な魔法ですよ?」

 

 便利とかそう言うレベルの話じゃない、攻撃をされた瞬間に割り込んで回復出来るなんてチートも良い所だ。


「確かに優秀ね…ヤスオさんの負担も減りそうで何よりだわ。【闇破】!」


―カノンは【闇破】を唱えた!!

―ブラウンベアーに中ダメージ!!


 カノンの放った黒い衝撃弾を喰らい衝撃よってその場にもんどり打って倒れこむブラウンベアー。流石にあの程度ではまだ死んでいないらしく、ゆっくりと起き上がろうとしている。


「よし! 続くぞ!!」


「あ、ヤスオ君少し待ってください」


 槍を構えて突っ込もうとした瞬間、クリオさんが僕を呼び止めた。


「っと、了解です」


「何よ? あんたが攻撃でもすんの?」


 同じタイミングで矢を射ようとしていたのだろうミキも矢を番えたまま待機している。


「えぇ、僕自身が攻撃する訳ではないのですが。これから僕が皆さんと組むにあたって見ておいてもらわねばならないものがありましてね」


「みてもらう…ものですか?」


「えぇ、もしこの魔法を見て仲間にする事に気が変わったら教えてください。ある意味ショッキングなものですからね…さて」


 そう言うとクリオさんは杖を胸の前に持ってきて魔力を高めていく。


「僕達アコライトには攻撃魔法はありません、ですが邪属性魔法にはこの様な魔法があるのです……彷徨える死者よ、我が祈りを聞き入れよ。私が貴方達を天に導こう、その間の僅かな間、私に力を…!! 【屍誕陣】!」


 魔法が発動する。

 ブラウンベアー中心、その足元から巨大な魔法陣が現れた。


「な、なんだありゃあ…!?」


「ゾ…ゾンビっ!?」


 魔法陣から怖気がはしる叫び声と共にズルリと、ゾンビ達が現れた。

 姿形はダンジョンで見るようなボロ布を着ているタイプではなく、あるゾンビはボロボロになった軽鎧を身にまとい、またあるゾンビはローブを身に着けている。右腕が無い金属鎧を着込んだゾンビは頭部の半分が削られ絶えず黒い液体がこぼれていた。


「こ、これは………」


「アアアアアアアアアアアアアアア…!!」


 現れたゾンビ達が一斉にブラウンベアーに襲いかかる。

 1体1体はとても弱く一撃で斃されるものの、元々死んでいるアンデッドはその場で直ぐに起き上がり腕や足、胴体に噛み付いたり杖や剣を持っているゾンビはそれでモンスターを攻撃していく。


―ゾンビAの攻撃!! ブラウンベアーに微小ダメージ!!

―クリオの【死者との絆】!! ゾンビが与えたダメージをHPとMPに変換!

―ゾンビBの攻撃!! ブラウンベアーに小ダメージ!!

―クリオの【死者との絆】!! ゾンビが与えたダメージをHPとMPに変換!

―ゾンビCの攻撃!! ブラウンベアーに中ダメージ!!

―クリオの【死者との絆】!! ゾンビが与えたダメージをHPとMPに変換!

―ゾンビDの攻撃!! ブラウンベアーに微小ダメージ!!

―クリオの【死者との絆】!! ゾンビが与えたダメージをHPとMPに変換!



「ギャアアアアアアアアアアアア!! ガアアアアっ!! ギャアア!?」


 がむしゃらに暴れるが、その抵抗も徐々にか細く弱くなっていく。

 殺しても殺しても起き上がるゾンビたちに噛まれ殴られ切り裂かれ、喉元をゾンビに食いちぎられたブラウンベアーは激痛に悶えながら消えていった。



―ブラウンベアーを倒した!!



「おい…あのゾンビ、大丈夫なのかよ…?」


 モンスターを倒した今残っているのは僕達だ、ゾンビは動いているものなら何でも食らいつく習性がある。ダンジョンではゾンビと違うモンスターが杭争っている事だってある位だ。フィル君の心配するのも当然だろう。


「大丈夫ですよ。ほら、見てください」


 クリオさんがゾンビ達の方に手を向ける。


「ゾンビ達が、こっち見たまんま動かないんだけど……てかきめぇ…」


「ちょっと、ミキ? なんで私の後ろの回りこむのかしら…?」


「硬いんだからいいじゃん」


「クリオ、あのゾンビは…モンスターとは違うね?」


 ノーヴァ君がゾンビ達を見て彼に言う。


「彼らはこの大地のどこかに居る死して無縁と化した存在。こうして呼び寄せ、時間を重ねることで天に帰ることが出来るのです。その間に、僕は少し力を借りるという訳ですね。ネクロマンサーになると一瞬で浄化できるんですが」


 そう言うとクリオさんはゾンビ達の下に歩いて行く。

 ゾンビ達は彼を襲うこともなく、ただその場に立っていた。


「有難うございます、皆さんのお陰で助かりました」


「……コ…ちら…こそ………か……かん…しゃ…を……」


 ローブを着ていたゾンビから光が溢れてくる。

 その光が徐々に強くなり、ゾンビをどんどん包み込んでいった。


「良かった、漸く登れそうなのですね?」


「……なん…ども……よんで…くれ…て……ありが……とう……これで……眠れ…る……」


「来世は幸せに生きてください、貴方に神の祝福がありますように」


 そのゾンビは完全に光りに包まれ、細い光の柱となりあっという間に消えていった。残りのゾンビ達は光ることも無く魔法陣の下に消えていく。


「また直ぐに喚ばせてもらいます。いつか貴方達が天に帰れるその時まで」


「……」


 剣を持っていたゾンビがゆっくりとその剣を自らの胸の前に持って行き、まるで騎士の礼をするような体勢を取りながら、魔法陣の下に埋もれていった。

 全てのゾンビが消えると同時に魔法陣は消滅し辺りは静かになる。


「とまぁ、これが僕のアコライトとしての力です。邪属性は忌み嫌われやすいですが、その実を知れば死者を慈しむ存在でもある。覚えておいてくれると嬉しいですね。さて、後はお任せしますよ」


 糸目が特徴的な優しそうな笑みを浮かべるクリオさん。

 突発的に芸をやったり漫才をしたりボケたり踊ったりする変な人でもあるが、さっきゾンビ達に見せていた態度を見る限り、良い人だっていうのが理解できた。


「クリオさん」


「はいはい?」


「これから宜しくお願いします」


「えぇ、こちらこそ宜しくお願いしますよ」


 こうしてネクロマンサー志望のアコライト、クリオさんがギルドメンバーになった。アコライトをギルメンに迎え入れられたの大きいな。お金で貢献はまだまだ出来ないけど、こうやって人脈を増やせられたら…皆の役に立てるかもしれない。




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