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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【2章】 ギルド結成とこれから
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42-08 【疲れた打ち上げ】

―大衆食堂【うちより安い店はねぇ!】店




「なんか帰ってそうそう不景気そうな顔してるな。初の違うダンジョンはつかれたか?」


 料理を運んできたナナが疲れ果てているヤスオ達を見ながら言う。

 彼等が今日違うダンジョンに向かってのは色々な所から聞いているので、こっぴどい目にあったのかとも思ったが、巨大なテーブルに置かれているマジックアイテムの数々が見えているので、違う理由で疲れたのかと考えていた。


「ちょっとな…ダンジョン自体は、俺やミキがもう少し力量が必要そうだけど何とかなりそうだったぜ」


 運ばれてきたジュースに少し口を付けてフィルが疲れたように言う。


「うん、わたしゃもう寝たいわ。こう、なんつーか正気度をがっつり奪われたっていうか」


「分かる、ありゃ下手な戦闘より消耗するわ」


「よくわからんが死んだ訳でもないんだろ? ならグダグダしてないで喜んでメシでも食え。気に病んでたらダンジョンなんて行けないし、寧ろ行くな」


「そうですね。ナナさんの言う通りですっ! あ、私オレンジソーダお願いしますねっ」


 一瞬で切り替えたマリーが笑顔で注文を追加していく。


「あいよー。他の奴らは?」


「……プリ……ン…」


「俺も! 何か甘いの持ってきてくれ!」


「ほぅ? 何か甘いのか、覚悟しておけよ? 最高級を出してきてやろう」


 手をひらひらさせてナナは戻っていった。

 今日も今日とて盛況なので、彼女にはゆったりしている暇も無かったりするのだが、人を弄るのはやめないらしい。


「うーし! 引きずっても仕方ねぇし、そろそろアイテムの分配に回ろうぜ? 結構良いアイテムだったよな今回も!」


 豪華な宝箱から出てきたマジックアイテムはどれも価値が高く、能力も高いレアアイテムばかりだった。まさかのエルダー・ドラゴンとの邂逅と言う精神的にダメージを受ける展開はあったが、それを差し引いても今回のアタックは成功だろう。


「【フライングガードナー】に【マジックストーン+2】。本もハズレじゃなくて【槍の奥義書】どれもこれも中級では一級品よ」


「あの金塊は1000万相当だったしね。そしてこの七色に光る魔石も…」


 エルダー・ドラゴンから口止め料として渡されたアイテムもまた魔石であり。

これをセイルの店で鑑定して貰った結果【ラッカスの魔石】と言う名前のレア魔石だと言う事がわかった。

 残念ながら武器スロット限定という少々難しい部類の魔石だが、武器にセットして相手を攻撃すると【毒】や【猛毒】稀に【致死毒】すら相手に送り込むと言う確率ではあるが継続ダメージを与えられる効果がある。

 とはいえ、この中で武器スロットがある武器を持っている者は居ないので売り捌く予定ではあるが。


「ラッカスの魔石、3000万ほどで売られているのを都市で見た事があるわ。セイルさんの場所でも1500万での買い取りというし、売りで良いかしら?」


「僕もフィル君もスロット武器は無いからね、売りで賛成だよ」


「あぁ、今は何より装備整える方が先だしな」


「了解、ならこれも売りね。マジックストーン+2も1400万で売れるから、これも売り…と」


「……な、なんかすげぇな。前回でも数百万で凄い事になってたのに、一千万クラスがポンポン出てくるなんてよ」


「ミキ様のお陰だよな~♪ これだからシーフは辞められないわよね♪」


 腰に両手を当てて胸を張りながら自らの活躍を主張するミキ。

  

「実際ミキのお陰だしね。胸を張るだけはあるよ」


「今日は大活躍でしたしね! 【極神撃】とか!! …【極神撃】とか……」


 自分で言って自分で撃沈していくマリー。流石にフォローしようが無いので回復するのを待ちながら次のアイテムに取り掛かる。


「フライングガードナー、これは売るより使ったほうが良いわね。アリーセさん…彼女が使っているのと同等品よこれは」


「そういえば…確かに似てる」


 戦闘時、非戦闘時構わずアリーセの頭周りをふよふよと飛んでいる2枚の盾と目の前のフライングガードナーは同じものである。種別的には【バックラー】系であり、【盾衛術】を使う事は出来ないが手に持たなくても自動で敵に攻撃をガードしてくれるという自動防御の魔法が込められているマジックアイテムである。

 相手の攻撃を的確に防御してくれる防御性能、両手が開くので両手武器などの邪魔にならないという機能性が便利で、中級クラスの後衛冒険者御用達品とも言われている防具として、とても知名度が高い。


「売り値は700万程、特に買い取る人が居なければ私が買い取ってもいいかしら?」


「あんた元々硬いんだし、それ装備したらもっと固くなるんだからヤスオの代わりに前衛立てよ…」


 6人の中で前衛のヤスオやフィルよりも防御ランクも防御力も高いカノン。メイジな上に極端にHPが低い彼女が一人で生きていくためには過剰過ぎる防御力が必要だったのだ。今も尚総合防御力なら、それこそアルスに次いで硬いらしい。同じく防御中心の装備をしているアリーより硬いのだから、その防御力は中級の中でも中~上位に位置に居るだろう。


「俺も欲しいけど、まずは武器と鎧を整えなくちゃな。俺は構わないぜ」


「僕も同じ、皆は?」


「あんな盾がふよふよ浮いてたら隠密なんてできねぇしパス」


「……プリ…ン……」


「直ぐプリン来ますよっ♪ あ、私は自警団の依頼で来てるのでそういうのは皆さんでやっちゃって下さい」


 スムーズに話が決まり盾はカノンが買い取ることになる。

 残りは全て売り払い、それに追加して間引きの報酬も加わる事で一人600万程の利益になった。マリーは間引き報酬はないが、アイテムの分配金は貰うことになり少し以上に恐縮している姿があった。


「うしっ! 後はガンガン食べようぜっ!」


「フィル君に賛成ですっ! 沢山食べましょうねっ♪」


 分配も終了し、フィルとマリーの言葉で思い思いに食べ始めていく。新しいダンジョンの初のアタックとしては波乱万丈な幕開けになったが、確かに利益と手応えをそれぞれが感じていた。





 

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