42-03 【アタック開始】
アタック開始です。
ヤスオ君の一人称から三人称に地の文が変動しますので
閲覧時はお気をつけ下さい。
様々な感想や指摘いつも有難うございます
忙しく感想に返信出来ず申し訳ありません、せめて出来る限り毎日投下を続けますので、宜しくお願いしますね。
―【呪われし聖者の遺跡】
ホープタウン周辺にある最近確認されたダンジョン【呪われし聖者の遺跡】にヤスオ達は到着した。
内部は石造りでいかにも人工的に作られた場所の様だ。消える事無く延々と燃え盛り続ける松明が一定間隔が配置され中は光の届かない場所の割には視界が効いている。地面の石造りの床はシンプルに同じ色の四角い石が嵌めこまれており歩くのはさほど問題なさそうだが、この場所で地面に叩きつけられる攻撃等を受ければただではすまないだろう。
「点呼開始! 1!」
ヤスオがダンジョンアタック時の恒例である点呼を掛け、次々に答えていく。今回の参加者はヤスオを含めての最大パーティ6人で来ている。
「2だ、新しいダンジョンワクワクするよな」
「さーん、まー宝物は興味あるわね」
「四です!! 今日はダンジョンの間引き依頼ですね、私も頑張ります!」
フィル、ミキ、マリーが次々に点呼していく。今回は間引き依頼、正確には自警団員のレベル上げ目的を兼ねたモンスター討伐の為にマリーが参加している。基本的に間引き依頼はフィールドのモンスターの数を減らす為に行われるが、瘴気が渦巻くダンジョンでは絶えずモンスター達がポップするので、そこからあふれたモンスターが町や村などを襲う前に、ダンジョンで戦える冒険者たちに間引きを頼む事がある。その時自警団員がモンスターの数を確認する必要がある。
流石に低レベルの自警団員では邪魔にしかならないのでこういう場所では最低限戦える者が選ばれるようになっていた。ホープタウンではファッツ、ハウルにそしてマリーとなる。
「……ご…………がんば…る……」
「6番よ、一応それぞれ情報は持ってきたようね」
アリアオロとカノンが点呼を終えまずは探索前の最終確認を行い始めた。
「ここって、一番弱くてブラウンベアーなんだってな。腕がなるぜ」
「無理はしない事。攻撃力が高くても貴方は防御とHPがまだ低いから、ね?」
「おう! わかってるぜ!」
フィルのレベルが9、マリーがレベル8。このダンジョンの適正レベルが10~15なのでフィルがギリギリ適正に満たっていないが、彼の放つ一撃の攻撃力は既に中級冒険者に匹敵している、防御の部分がまだ甘いが今回の押しつぶす布陣ならば先に攻撃して潰していけば良いので問題無く参加できていた。
「前衛は僕とフィル君でなんとかする、攻撃のメインはカノンとアリアちゃん、そしてマリーちゃんだ。よろしく頼むよ」
「……まか…せ…ろー……」
右手をぴょこっと上げてやる気を伝えるアリアオロの姿にそれぞれ微笑みながら歩を進めていく。
◆
ミキが先導しダンジョン内を捜索する。
周囲の空気や瘴気の濃さ、何度も戦い続けてきた経験に加えスキルによって強化された彼女の感知力は既に中級クラスシーフと同等以上にまで高まっている。
「んー…なんつーか、あっちこっち進む場所があるから面倒だわ。そこかしこからモンスターの気配するから気をつけろよ~?」
「貴女で抜かれるって相当ね…」
カノンが表情を微かに変えながら言う。ミキのシーフとしての実力は既に中級に引けを取らない、それをもしかしたら抜いてくると言わしめるこのダンジョンの脅威を改めて再確認する。
「それって直ぐ来るんですか!?」
マリーが慌てて弓を構える。
「それならちゃんと言うっての。奇襲もあるかもしれないから気合は入れとけよ?」
「りょ、りょーかいです!」
「それにしても…流石遺跡って感じだな、なんて言うか少し息苦しいぜ」
槍をいつでも振るえる体勢を取りながら周囲をキョロキョロ見回すフィル。不思議な事に瘴気がある割には呼吸も問題なく出来るほど酸素があるが、彼が行っているのは周囲の圧迫感の事だ。
いままでもダンジョンアタックはしてきていたがフィルにとってダンジョンは【ざわめく死者の通り道】の様な限りなくフィールドに近い場所しか知らないので周囲が狭苦しい通路ばかりのダンジョンではどうにも動きが制限されそうで困惑している。
「………あそ……こ……部屋……あ…る」
持っている杖を奥の方に向けるアリアオロ、その先には小さな個室の様な場所が見えた。すかさず周囲を確認し調べに行くミキ。上下左右全て調べ次はトラップの有無を再確認していく。
「………うし、この部屋トラップ無いわよ、中は…うげ、真っ暗」
ヤスオ達を手招きしそのまま木で出来ているドアを開けて中に入るミキ。
内部は流石に暗く何も殆ど何も見えないが、トラップや奇襲の可能性はないので落ち着いて生活魔法を唱えた。
「【明光】っと。ふぅん、待機室か何かね」
―ミキは【明光】を唱えた!!
―周囲が明るくなった!!
生活魔法は適正さえあれば誰でも覚えられる、ミキもある程度の生活魔法は覚えていた。
明るくなった内部を見ると古ぼけた大きめのテーブルと椅子が数個、奥の壁の方には本棚と棚、そして乱雑に物を入れてある木箱が2つほど置いてある。テーブルの上には埃をかぶっている幾つかの皿と水差しなどがあるので、休憩室か何かなのだろう。
「宝箱とかは流石にないですよねぇ」
「いやぁ、休憩室に宝箱とかは置かないと思うよ?」
「ですよねぇ」
宝箱があれば一攫千金、自警団なのでアイテムの分配は基本されはしないが、もし宝箱などが出れば半分冒険者もやっているマリーも興奮するものだ。
とりあえず手分けして何か使えそうなものがあるかを探していく。ダンジョンにある家具なども売れるものは幾つもあるので、余程のガラクタ以外はお金になる。
「んー……戸棚にポーションが4個ほどあったぞー。ヤスオの方は何かあった?」
「いや、こっちはガラクタばかりだ。ってそのポーション飲めるのか?」
「わかんね、ほれっ調べてみてよ」
「おっとと…危ないなぁ」
宝箱から出たならともかくダンジョンで埃かぶるほど放置されていたポーションを飲むのは流石に怖いので直ぐに【鑑定】を発動させる。データに表示された内容はポーション(高級品)と書かれており、飲めない事はなさそうだった。
「おーいヤスオ、こっちは何もないぜ?」
最後まで探していたフィルが不漁に終わったのでポーションを適当に分配して小部屋を後にした。




