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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【2章】 ギルド結成とこれから
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SP-09 【遠い背中】 Ⅲ

―痛い痛いスパイラル




「しんどかった…超しんどかった…!! 今なら私HP上昇覚えている気がするわっ!!!」


 実際は覚えていないのだが、こう狩りの途中でいい感じにミラちゃんの心が折れました。ヴァイパーを倒してからハウンド数体やらスモールベアやらパライズモスやら結構襲ってきて、かなり被弾しまくってたので途中からハイテンションになって戦っていた彼女です。


「お、お疲れ様。今日は頑張ったね」


 狩りを初めて数時間、時間的にはまだまだ余裕はあるが肉体や精神の疲労が激しい二人の状態を考えて今日はここまでで切り上げる事にした。よく見れば二人の顔が微妙に疲労で青ざめているのがわかる。今は周囲に気を配りながら町に戻っている途中だ。この辺りなら出てきてもウサギかハウンド程度、稀にスモールベアなので僕一人でどうにでもなる。


「そ…そうだよー。ミラちゃん弓修練とか技は閃いてたもん」


 【HP上昇】こそ覚えなかったが戦闘中に弓の技を閃いたり、弓修練のスキルがランクアップしていたので、経験値も稼いだ事もあり初日にしては良い結果になったと思う。レティカちゃんの方はメイジだから技を閃いたりとかは無かったが、この調子なら直ぐにレベルも上がるだろう。初めはぎこちなかったが、直ぐに普通に戦えるようになっていたから、次回以降も問題ない筈だ。


 それにしても結局最後まで魔力のポーションを使っていなかったなぁ…何でも【マスタースペル】というメイジのスキルを覚えていて、得意な魔法を1個だけそのスキルに設定することで消費MPを1固定にするという、お客さんそれ下級の時点で覚えて良いんですか? 的なスキルを持っているレティカちゃん、【石弾】を雨霰の様に使ってもMPが余りまくるとか羨ましいな…何度でもセットし直せるらしく、中級魔法を覚えたらそれにセットするとか言っていた。


「この前こっそり二人で行った時の数倍倒せたよっ!! ヤスオさんに手伝ってもらったら二人に追いつけるかも!!」


「あ、馬鹿っ!?」


「ほぅ…そのへん詳しく」


「はぅ!?」


 ヴァイパーで苦労していた状態なのにそれで後衛職たった二人で狩りに出るとか無謀過ぎる、これは後でお説教案件だと思います。って、ほんの少しまえまで一人で向かって死にかけてた僕が言っちゃ行けないセリフなんだが、ティルさん達の気持ちが少し解った気がする、危ないわ…うん。


「あー…その、カトル達には黙っててもらえると…」


 両手の人差し指を胸の前でつんつんしながらバツの悪そうにしているミラちゃんを見ていると自分も似たような事をしていた手前何も言えないので注意だけしておく事にした。


「まぁ、僕自身ソロとか無謀なことしてたしね。出来れば次からはやめておいてくれるかな? 何かあれば手伝うからさ」


「はいっ! やったねミラちゃんっ」


「あんたねぇ……ありがとうございます、ヤスオさん」


「僕もまだまだだしさこれからも一緒に頑張ろう。何かあればいつでも手伝うよ」

 

 パーティのリーダーを任されている以上、今回の様な手伝いもまた僕自身の糧になるから、彼女達を手伝うのは何ら問題ない。流石に鍛冶の仕事や皆でダンジョンアタックをする事を考えれば月に彼女達を手伝える回数は数回あるかどうかだけど、それでも頼まれたなら出来る限りはしてあげよう。


「今日は本当に有難うございました。とても安心して狩りが出来たので助かります」


「うん、カトル君達全員で戦ってるみたいだった」


「この周辺ならね、流石にブラウンベアーが2~3体も出てきたら消費が激しいからこうは行かないよ」


「そこで倒せないから逃げるって言わない所が凄いです…」


 尊敬の眼差しで僕を見ている二人。

 勝てない事は無いけど、めっちゃきついから出来ればやりたくないです。とは言え一撃食らって既に死にかけてたあの日からほんの少したっただけでここまで成長出来るとは…毎回のダンジョンアタックやあの時のケルベロス戦で僕も成長出来たって事なんだろうな。一対一ならもうブラウンベアーに負ける要素がなくなったし。


「二人、いやカトル君達も頑張れば直ぐここまで来るさ。僕なんかどれもこれも中途半端なのにここまで来たしね。それぞれに特化している皆ならきっと直ぐだよ」


「ヤスオさんにそう言われると悪い気はしませんね。ふふ、有難うございます」


「私も頑張るねっ! あ、今回の報酬っ!」


 レティカちゃんが服を弄って紙袋を取り出す。少し分厚いが恐らく今回の僕の報酬なんだろう、正直もらい過ぎな気もするが受け取っておかなくては。


「これ、普通の依頼に比べたら少ないんですが…」


「いや十分だよ依頼報酬確かに受け取りました。さて…良い時間だし食べに行こう3人で! ここは僕の奢りだっ!」


「え!? それなにか違っ!?」


 ミラちゃんが何か言っているが超スルーです。

 このお金は報酬として頂いたので、既に僕のお金であり僕がどう使おうとそれは僕の勝手なのでありまして、このお金でぱーっと皆で食べに行くのは何の問題も無い訳だ、うむいい感じに論破したな。


「気にしちゃいけない! さささてんちょーさんの美味しい料理を食べに行こう。本当はお風呂の後だけど今回は【清潔】と【浄化】でぱぱっと終わらせて、ね」


「あはは、ヤスオさん悪い顔してる♪ 女の子に身だしなみ揃えさせないなんてあくどいですよ~?」


「ふっふっふっ、ならば次回はスマートに済ましてお風呂に入るしかないね」


「んもう…レティカもヤスオさんも。わかりました、わかりましたよーだ! じゃあ奢って貰っちゃいますからね!」


 諦めたとばかりにミラちゃんも笑いながら賛成してくれた。

 こうやって少しずつでも人に慣れていけば、きっと立派な冒険者になれると思う。僕じゃ人を導くなんて大それた事は出来ないが、手助けになれば…とても嬉しいな。



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