表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【2章】 ギルド結成とこれから
186/216

SP-09 【遠い背中】 Ⅱ

 

「前衛に立ちたい!? アーチャーが前に出るのは危険だよっ!」


 僕は大声を上げていた。あの後直ぐにフィールドで狩りに行く事になったのだが、その時に彼女からそんな無理な事を聞かされたのだ。普通に考えてアーチャーは遠距離攻撃タイプ、防御も低く弓を射る為には集中をしなくちゃ行けないので回避率もそこまで高くない。高い器用さとシーフに継ぐスピードを武器に戦う後衛職が前衛で戦うのは普通に考えて良策とは言えない。


「お願いします…! もしどうしても駄目なら諦めますから!」


「戦闘じゃカトル君やコリーちゃんが前衛に立っているだろうし、無理に前に出る必要は、それに僕も後ろで戦って欲しいなんて」


「前衛は、後衛職の私達の代わりに攻撃を受けますよね…そしてその分【HP上昇】のスキルを覚えやすいって聞きました」


 確かにファイター系は前衛で戦うのがメインなのでそれに関するスキルを覚えやすいとは僕も聞いている。寧ろこれがなければHPが低すぎて前衛で戦うのは厳しくなるだろう。


「アーチャーは一応中衛、後衛職ですが【HP上昇】は覚えやすい方だと聞いてます。私…まだそのスキルを覚えてないんです、普段の戦いならこんな事出来ないけど、ヤスオさんが手伝ってくれる今なら…!!」


「ミラちゃん……」


「後衛にいても、今の私じゃ下級魔法で倒されるくらい弱い、このままじゃただの足手まといになる。メイジは仕方ないとしても、せめて私が前でも耐えられるようにならないと!!」


 譲る気はなさそうだった、彼女なりに今の状態を抜け出したいと考えているのはよく分かる。被弾覚悟で戦って【HP上昇】を覚えたいんだろう。だが…僕は敢えて言う事にした。


「モンスターの攻撃がどれだけ痛いか知ってるかい?」


「……知ってます」


「僕はそれで何回も死にかけた、それでも前衛に立つのかい?」


「ヤ…ヤスオさん…ミラちゃん……」


 オロオロと僕と彼女の表情を伺うレティカちゃんだったが、それ以上は何も言えず成り行きを見守っている。


「痛いんだ…泣き叫ぶほど逃げ出したくなるほど。それでも、それでも君は耐えられると言う気かい?」


 モンスターを相手にする時に見せる威圧感を込めて彼女に問う。

 その途端、ガクガクと震え怯えた表情で僕を見る彼女、この程度の威圧で身を竦ませてしまったらハウンドやヴァイパー程度ならいざしらずブラウンベアーに出会った時に前衛で戦う事なんて出来ない。だからこそ、この状態でも彼女が僕にしっかりと応える事が出来るならば……


「で……出来ます!! やらせて下さい!!」


 まだ震えは止まっていなかったが、僕を見る目は強く真っ直ぐに此方を見つめていた。彼女はきっと諦めないだろう、今でこそこうやって人間恐怖症になっているが、きっと二人は僕なんかよりよっぽど心が強いんだと思う。どれだけひどい目にあっても曲げず諦めず前を向いて歩こうとしているのだから…きっとトラウマさえなくなればカトル君達に直ぐ追いつけるはずだ。


 僕じゃきっと怯えてそのまま逃げ出すだろうそれに耐えたんだ、僕も出来る限りをしよう。


「わかったよ。でもどうしても危なかったら僕が前に出る、それだけは覚えておいてくれるかい?」


「!! は、はい! 私頑張ります!!」


 何というかこそばゆいな、僕なんて冒険者としてまだまだなのに頼りにサれているのだから…だがこんな僕でも彼女達の役に立てるのならその役目を果たそう。













―ホープタウン フィールド


 そして今僕達はモンスターと戦っている。

 約束通りに僕は後列に立ち、余程の事がない限りは防御魔法などを最低限だけ使い見守る事にしている。レティカちゃんも同じく後列だ、メイジである以上前に立つのはただの自殺行為なので、何かあった場合は彼女をメインで助ける事になっていた。 


 僕が唱えた防御魔法で身を固めたミラちゃんが一人前衛で戦っている。今戦っているモンスターはヴァイパー、レベル8のアーチャーが前に出て戦うにはかなり辛い相手だ。後ろではレティカちゃんが土属性の魔法を唱え彼女を支援していく。


「いっけええええっ!【石弾】!!」


―レティカは【石弾】を唱えた!!

―ヴァイパーに中ダメージ!!


 彼女が魔法を唱えると地面に魔法陣が描かれその上から拳大の岩石がいくつも浮かび上がり、まるでピッチングマシーンで投げられたボールの様に凄い勢いでヴァイパーの全身に命中する。たかが拳大の石と思うかもしれないが、魔法でコーティングされた強固な岩が猛スピードで勢い良くぶつかるとなれば、痛いとかですむ問題じゃない、鈍器などで殴られた方がマシな威力の塊がヴァイパーの肉体を傷めつけ、血飛沫を上げる。


 それでも尚その瞳を爛々と輝かせ巨大な毒の牙を突き立て様と襲いかかるヴァイパーだが、ミラちゃんは弓を構えたまま横っ飛びに前転回転し攻撃を回避する。直ぐに体勢を立て直し弓を構え引き絞った。


「当た…れぇ!!」


―ミラの攻撃!!

―ミス!! 攻撃は外れた!!


「っ! 狙いが浅かった…!?」


 襲い来るヴァイパーを必死に避けながら弓を引き絞り矢を射放つが、集中出来ない状態での射撃が細い蛇の身体にそうそう上手く命中する事はない。


「キシャアアアアアアアアアアアア!!」


 そんな隙をモンスターが見逃す筈も無く、身体を器用にくねらせ勢いよくヴァイパーが跳びかかった。攻撃した後で少し硬直していた彼女がそれを避けきれる訳もなくモンスターの突撃を真正面から食らってしまう。


「しまっ!? きゃああああああああっ!!」


「ミラちゃんっ!?」


 レティカちゃんの悲痛な叫びが木霊する。

 ヴァイパーの突撃を受け吹き飛んで行くミラちゃんだったが、痛みを堪え直ぐに立ち上がり前衛に戻って弓を再び引き絞っていく。


「……いけるかい?」


「はい!! 大丈夫…まだ、まだいけますっ!!」


 目の前で痛みをこらえつつ戦うミラちゃんと、必死に攻撃魔法を連打するレティカちゃんの二人。ヴァイパーの動きに慣れてきたのか、矢の命中率も高くなってきたし、攻撃も結構避けられる様になってきた。【石弾】の魔法が何度もヴァイパーに命中し既に相手の方もボロボロになっている。


「これ、でぇええええ!! 【流星】!!」


―ミラの攻撃!! 【流星】発動!!


 矢を握る右手が光を放つ。 

 力強い声と共に【流星】が放たれ、動く事が出来ないヴァイパーの胴部に突き刺さった。


「ギャアアアアアアアアアアアア・・・・・・!!」


 激痛に叫び声を上げながら霞み消えていくヴァイパー。 

 戦闘から3ターンほど、漸く戦闘が終了しドロップ品が先程までモンスターが居た場所に残されている。


「はぁ…! はぁ……!! (普段後衛だから分からなかった…これがいつもカトルやコリーが感じてる痛みなんだ。ヤスオさんが言ってくれなかったら、多分攻撃どころじゃなかった。心構えだけでも変わるのね)」


 荒い息を吐きながらその場に座り込むミラちゃん。

 直ぐに彼女に近寄り回復魔法を唱えた。


「お疲れ様。【治癒】」


―ヤスオは【治癒】を唱えた!!

―ミラのHPが回復した!! 残り10割


「あ、ありがとう、ございます」


「ミラちゃんやったね!! 防御力を上げてもらっただけでもかなり違うみたいだよっ!!」


「そうね、防御魔法が無かったらと思うとゾッとするけど…ほんと、有難うございます」


 此方に向かって頭を下げる彼女。

 どうにも人から頭を下げられるのは慣れてないので若干挙動不審になってしまう。それを見ていたレティカちゃんがくすくす笑っていた、微妙に恥ずかしかったのでこれはここまでとばかりに口を開いた。


「気にしなくていいよ。流石にあの一戦だけじゃそうそう覚えないか。この調子で行こう。熊が出たら僕が前に出るから直ぐに下がってくれるかな?」 


「有難うございます。それじゃどんどん行きましょう!」


 僕達は次のモンスターを探し求め周囲の探索を再開した。



長い戦闘はダレますし、短い戦闘だとしょぼくなる。

どれくらいが一番いいのか、悩みはつきません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ