41-04 【新たな出会いとアタック準備】 Ⅳ
のーないかのんの括りを【】から()に変更しました。
というやり取りがあった訳で、この数日で何回か会話をしそこそこ仲良くなっている。上級クラスというとんでも存在なのに、とても謙虚でカッチェちゃんは寧ろ年齢に比例した元気で活発な子供といった感じだ。
「何、ヤスオ? また知り合い増やしたの?(ガキの割にはイケメンね、まぁ顔の見てくれに興味はないけどさ)」
「ついこないだね」
「……ヤスオの知り合いだね、こんにちは(子供…? いや化け物クラスだろう? まさかこの若さでこの位階? 天才というやつかな初めて見るよ)」
ノーヴァ君が少し驚いた表情でケーシィ君達を見ている。その目は鋭く恐らく二人の強さを見抜いたんだろうな。ミキやマリーちゃんはあまり感づいていないようでカッツェちゃんに構っている。彼女も知り合いが出来て嬉しいのかとてもはしゃいでいた。
「ヤスオ!」
「ん? どうしたんだいカッツェちゃん?」
「これからどこかに行くのか!? 暇ならオレ達と遊ぼうっ! あのな、広場に面白いのが一杯あるんだっ!」
広場には子どもたちが遊べる公園がある。ジャングルジムとかブランコとか砂場にシーソー、地球にあるような基本的な物が設置されていたりする。こういう遊具は異世界でもこの世界でも変わらないもんなんだと些細な共通点を見てなんとなく嬉しかったのを思い出すな。
「ごめんね、これから皆でフィールドで間引きの依頼を受けてるんだ。また今度遊ぼうか」
「そっかー……じゃあ今度ね今度!」
両手をばばっと振って気持ちを伝えてくるカッツェちゃん。何というかアリアちゃんとは別方向で微笑ましい。いや、アリアちゃんは僕の1歳下で十分大人なんだが…
「間引き作業ですか、都市などでもたまに見ますね。無理せずに頑張ってきて下さい。ほらカッツェ、そろそろ行くぞ」
「うん! じゃあなヤスオ!! またね~!」
ケーシィ君に手を引かれて広場の方に歩いて行く二人を見送るとやや暫くしてノーヴァ君が深い溜息をついた。
「アルスさん達といい彼等といい、ヤスオはとんでもない相手のコネをあっさりと手に入れてくるね、ある意味感心するよ」
「はぁ…? どういう意味?」
ノーヴァ君の言葉の意味が良くわからないらしく微妙な目つきのミキ。
そんな彼女を見てノーヴァ君が口を開いた。
「なに、近いうちに嫌でもわかるさ。後ミキ、君もシーフならもう少し眼力を鍛えた方がいい。オッターさんの事といい、君は少し相手の情報を表面で見過ぎるきらいがあるからね」
「へいへい、わかりましたよーだ」
「えーと、よくわかりませんけどそろそろ行きましょうか!!」
「マリー…あぁ、いやいい…君はまだ修練の方が先だね」
メガネの奥の瞳がこう、呆れ返った様な瞳をしているノーヴァ君だった。
「なんか辛辣!?」
「ははは、とりあえずカノンが待ってるだろうし、そろそろ行こうか」
「そうだね、折角の間引き作業だ、技を閃いたり経験値を稼ぐには持って来いだよ」
そう言いながらカノンに会いに行く僕達。
直ぐに合流し、フィールドに向って行った―
◆
―ホープタウン フィールド
狩り始めてから既に数時間、気がつけば太陽も真上にまで到達している。
今倒している主なモンスターはヴァイパーやパライズモス、スモールベアにブラウンベアーだ。時々ハウンドやウサギも紛れ込んでくるので蹴散らしつつ安定して狩りを続けている。
ケルベロスを倒しダンジョンの再生を防いだ事もあり、突然のモンスターの奇襲は殆どなくなっている。それでも稀にモンスターが乱入する事もあるが、ミキも居るお陰で問題なく対処可能だった。やはりシーフが居ると居ないとでは安定さにかなりの違いが出るものだと思う。
戦闘が終わるとマリーちゃんが簿記の様な物を取り出して倒したモンスターをチェックしていく、アナログだが倒したモンスターの数がわかる宝玉! とかギルドカードに数が表記される! とかそんな便利なものは残念ながら存在しないので、こういうのは人力作業になっている。ヒューマンエラーは確実にあると思うが、その辺はゆっくり慣れていくつもりらしい。
「えーと…今のでパライズモスが17体…と。うわぁ、何か凄い狩ってますね」
改めて今回倒したモンスターの総数をみて驚いているマリーちゃん。なにせノーヴァ君にカノンが中級冒険者になったのもあるし、僕達も結構レベルが上がって来たから、今までよりも安定してモンスターを倒せているお陰だろう。
「ブラウンベアーもさっきので11体、結構安定して行けるようになってきたわね」
「カノンの魔法やノーヴァの弓で殆ど死にかけてるからなぁ、俺なんて前衛の雑魚を薙ぎ払う位しか出来てねぇし」
「フィル君がなんか凄いこと言ってる…私なんてフィル君にいつの間にかレベルも抜かれてるし、あんまり役に立ってないよぉ?」
フィル君はレベル9で彼女はレベル8だ、どっちもそのレベルにしては十分強いとアルスさんからお墨付きを貰っている、それでもまだまだだと向上心を露わにしているフィル君だから、きっとすぐに中級にあがるだろうなぁ。僕も頑張って強くならないと置いて行かれそうだ。
「いや俺なんて正直まだまだだ。あの時も真っ先に倒れちまったし、結局はヤスオに頼っちまったからな。レベルもそうだけど、スキルや装備も見直さねぇと」
「向上心があるのは良いことだ。マリーも弓の才能はかなり高い、修練を怠らなければ中級もちゃんとなれる。君は冒険者も兼業してるんだから依頼や臨時で仲間を募って狩りをするのもいい」
「ノーヴァさんにそう言われるとなんか照れちゃいますね、にへへへ…」
めちゃくちゃ嬉しそうに顔を蕩かせているマリーちゃん。
しかしノーヴァ君にそんな可愛らしい笑顔が効果があるはずもなく。
「うん、調子に乗りやすいのが君の欠点だ。精神鍛錬も組まないとね」
「うぐぐ…やっぱり厳しいです」
「何にせよやることは山積みね。でもこういう時間が、ある意味充実しているのかも、ね。二人共頑張って? 貴方達の力信頼させてもらうわ」
カノンが微笑みながらフィル君とマリーちゃんを激励する。
今がどんどん強くなれる時期なんだろうな、僕も二人を応援しよう。
「まー、あんたら強くなれば私が楽ちんだし頑張れよ。出来れば宝箱と罠だけやってたいし戦力として期待すんな」
「お前はほんとに…あれだよなぁ」
心の底から【うわぁ】みたいな顔でミキを見るフィル君。
うん、その気持ちわかります。とは言えあれはあれで結構頑張っているから、どこまで本気なのかはよくわからないけどね。周りではカノンはやれやれと言った表情で見ているし、直ぐ隣でノーヴァ君はそんなミキを見ながら少し苦笑している。
「(いや、なんだかんだ言いながら彼女は良くやってるさ。前回全員死にかけ、いや一度死んた姿をみてもこうやって冒険に出ている。ミキ、君は自分が思っているより…十分強いよ)さて、そろそろ再開しよう。後20は狩っておきたい。出来ればヴァイパーやブラウンベアーを相手にしよう、経験もそうだけど倒した報酬もそれなりにでかいし、ドロップも期待できる」
「そうしようか、熊が出てきても1体だけなら【瞬風化】と【四奏蓮華】のコンボで一撃で行けるようになったし!!」
「だよな! いやぁ凄かったぜヤスオのあの連続攻撃!」
我が事の様に喜んでいるフィル君、それを見ていると嬉しいやら恥ずかしいやら。僕も前回の戦いとこの前の魔法の勉強でそこそこ強くなっていた。自身の【速】を一時的に上昇させる風の中級魔法【風瞬化】がとても役に立つのだ。
この魔法は今まで唱えていた【風化】とは違って【割り込み】魔法の様に唱えた上で更に行動出来る使い勝手の良い魔法だ、下級の時は唱えてからのタイムラグが多すぎて隙だらけだった、この魔法は一瞬で速さを上昇させ攻撃に移れる利点がある、これに【蓮華】のコンボを叩き込んで【四奏蓮華】まで発展させると、あのブラウンベアーでも一瞬で倒す事が出来るようになった。
流石にHPやMPの消耗が激しいので連続で使うには課題が残るけど、あの強敵を行動前に確実に1体倒せると言うのはかなり大きい。
「ポーションドンドン消えてくのが問題だけどね」
「あー…ヤスオ以外回復魔法使える奴いないもんね」
僕達のパーティは攻撃力は高いが持久力が殆ど無い。回復魔法を使えるのは今の所僕だけで、僕自身アタッカーなのでどうにも回復の割合は減ってしまう。アリアちゃんがパーティに混ざっていればカノン+アリアちゃんの魔法で押しきれるから僕は回復に専念できるが、そうなると前衛の問題が出てくる。知り合いのアコライトはカトル君の所のスノゥちゃんとアリーセさん…つまりアリーさんしかいない。
しかしどうでもいいんだが、アリーさんにマリーちゃんにコリーちゃんと…最後にリーがつく子が多いとどうにも間違えそうになって怖いな…
「でもその前に昼食を取りましょうか、お腹が空いてちゃ戦えないわ」
「おっ! 私は賛成!! ほらほらご飯ご飯っ♪」
カノンがバスケットをどこからとも無く取り出す。
そういえば殆ど休憩無しでやっていたからお腹が空いてたな。
(―のーないかのん― じゃじゃーん!! 今日の料理は私の会心の作よっ!! この為だけにてんちょ~さんの所で色々教えてもらったんだから!! 皆美味しいって言ってくれるかなぁ。うふふ、楽しみです♪ これがギルドパーティの喜びの一つっ!! あ、今日も日記に書いておかないと!)
「やった! 待ってました!!」
「…やれやれ、僕達もいただくとしようかヤスオ」
「そうだね、折角のおいしい昼食だし」
たくさん食べてその後の戦いも頑張ろう―
皆でシートを引いてわいわいと昼食を楽しんでいった。




