40-02 【日常の中で】 Ⅱ
しばらくはゆったりとしたお話が続きます、のんびり御覧ください。
カオスが溢れるお話が書きたいです。
「新しいダンジョン…」
この世界には様々なダンジョンがある、僕達が良く狩りに言っている場所もその一つだ、これらのダンジョンは突如発生したり、元々その場所にあったのを探索をメインにしている冒険者などが見つけてくる事でその存在を確認していく。ダンジョンは国などで管理などは一部の例外を除いてされておらず、その全ては個人個人で対処するようになっている。これは国が全ての村や町を管理している訳じゃないからそうなっているらしい。詳しい事は興味が無いので聞いていないが、ダンジョンは基本冒険者が探索するもの、程度に覚えておけばいい。
村興しや町興しに使う事もあるし、逆にダンジョンによって過疎化したり溢れ出るモンスターに滅ぼされたり等もある。ダンジョンがある場所には冒険者が集まってくるから、上手く行けば…だ、この辺の匙加減はとても難しいんだろうな。いち冒険者である僕には到底わからない。
「あぁ、そういえばこの前誰かに聞いたなぁ。俺等まだあっちのダンジョンがメインだから気にしてなかったけど」
フィル君もどうやら自警団の人達から聞いていたらしい。
「なんでも低~中ランクの真ん中レベルらしいよ? 【呪われし聖者の遺跡】だったかな。なんか制限かかってるらしくて20ターンしか居られないんだって。私らじゃまだ熊も厳しいし関係ないんだけどさ」
低~中ランク…か、ブラウンベアーも頑張れば倒せるようになってきた僕達に向いていると言えば向いているかもしれないな。
「すでにホープタウンに滞在している冒険者の何パーティかが向かったそうです。モンスターはブラウンベアーが雑魚レベルだそうですね。ワイルドコング、リビングアーマー、あとスライムが確認されたそうです」
「スライム?」
この世界スライムも居るのか、僕の頭の中では雑魚の代名詞である典型的なスライムが浮かび上がる。他のモンスターはどれもこれも強そうなので癒やしモンスターか何かかもしれないな、なんて考えていたらカノンが物凄く苦い表情をしていた。
「カノン?」
「まさかスライムまで居るとはね…」
「ん? そのモンスターってもしかして……前に自警団にあった本で見たんだが、確か【アイテムイーター】って呼ばれてなかったか?」
「えぇ、マジックアイテムを好んで食べる事からアイテムイーターと名付けられているわ。でも、スライムはそんなの霞む位に恐ろしいモンスターよ」
カノン自身何度かスライムを見たらしい。
そしてそのどれも悲惨な結果になった事を事細かに教えてくれた。
まず僕が考えているようなゴム毬とかそういう半固形生物ではなく、水の様に無色透明でそれをモンスターと理解するまで難しい存在らしい、噴水とか水たまりに混ざっていてもわからないほど、普通の水にしか見えないようだ。一応コアらしき物が存在するらしいが、そのコアすら水のように無色透明なのでコアだけをどうにかとかコアで判別、とかは出来ないという。
その時点でもかなり厄介な存在だと思う…もし水と間違えて飲んだら死ぬよな…なんて僕の考えが更に甘いスライムの能力を聞いて背筋が寒くなった。
なんでもスライムの身体はそれ自体が超強力な溶解液らしく、少しスライムに触れただけで皮を焼き肉を溶かしてしまうという、真上からスライムがバケツの水よろしく降りかかったらそれはもう死と同じだろう、もがく事も何も出来ず一瞬にして骨も残らず溶かし尽くされる
「うわぁ……それ、アイテムイーターっていうかアイテムいらねぇイーターじゃねぇか…」
「アイテムイーターと呼ばれるのは先程も言ったように、スライムはアイテム…厳密にはマジックアイテムを好むの、存在が魔法生物だから魔力を欲していると言われるわ。そしてそれを身に着けている事が多い冒険者が狙われる、だからこそマジックアイテムイーター、略してアイテムイーターよ。証拠にマジックアイテムを投げつければ人間を襲わずにアイテムを取り込むわ」
「取り込むわって…カノンさん実際に体験したん…?」
「えぇ、とあるダンジョンでね、生きた心地がしなかったわよ」
おっかない存在が居るんだなぁ……てか僕はもっと怖いぞ、マジックアイテムじゃないが、僕の愛剣であるショートソードが溶かされてしまったら、精神ダメージが半端ない…
「おっかないな、俺は会いたくないよそんなモンスター」
「一部じゃダンジョンの罠にもなってるよ? 真上からザバーっとね、もれなく骨も残さずさようならだね」
おどけて言うコリーちゃんの言葉になんとも言いがたい表情を返すフィル君。
「とはいえそこまで確認されているわけではないので、運が悪ければ、でしょうか。もし向かわれるならご注意を、上級ですら一歩間違えると致命的なので」
「マジックアイテムメインで狙うって・・・おーけーそいつ私の敵だな。ヤスオ、いけっ! 倒して来いっ!!」
「ねぇ!? 今の話聞いてたっ!?」
倒すとかそれ以前の問題ですよミキさんや……
そんなモンスター僕だって会いたくないよ。
「聞いてたからヤスオをけしかけた…っていたぁ!?」
ドヤ顔をして言うミキ、ちょっとムカついたからデコピンしてやった。
「あ、でもミキさんの考えは間違っては居ませんよ? スライムは全身が強力な酸でできている魔法生物、その分炎魔法は効きがいいです。データ的にはその驚異的な消化力以外はファングラビットよりも弱いので」
「そうなんだ、初見殺しとかトラップとかそういう系のモンスターなんだね」
「ヤスオさんは火魔法の中級がありますし遠くから焼き尽くせばなんとかなりそうですね。スライムは動きは基本鈍いので」
他にも対処法があるらしいが、そっちはお金が掛かる上に、かなり面倒なので今の僕達にはどうしようもない。
「向かうかどうかはヤスオさんに任せるわ。まだ【ざわめく死者の通り道】も探索しきった訳ではないしボスとの雪辱戦もあるし、ね」
「ナイトスペクター…だね。あいつはまだまだ勝てそうにないな」
ファッツさん程のアタッカーをたった1アクションで倒した骸骨騎士、今でもはっきりと思い出せる。ミキがファインプレーをしなければ、あそこで全滅していた可能性の方が高いだろう、ある程度分身のケルベロスと戦えていた…と云うのは痴がましいが、ダメージを与えられたあれと違い、あのボスモンスターにはそもそも攻撃が当たるかどうかもわからないと、今でも感じる。
「団長…いや、ファッツが一撃でやられたしな、絶対強くなってリベンジに行こうぜ、ヤスオ!」
「あ、行くならミキ様も連れて行きなさいよね? このボスから絶対盗むガールが、あいつの身ぐるみ全部剥いでやるわ♪」
「そうだね、頼りにしてるよ二人共」
寧ろ僕が置いていかれないようにしなくちゃな。
魔法を覚えたとはいえ、僕自身が強くなった訳じゃない、ステータスやスキルの他に、自分の腕を磨いていかないと。
「がんばってくださいね皆さん、僕達も追いつけるように頑張りますので!」
「いやぁ、熱血だねぇ♪ さささ、休憩もおしまいって事で残り少しの素材あつめにいこか、ウサギを虐殺だぁ♪」
「虐殺って…コリーさん……」
冷や汗を流すスノゥちゃんを見て笑う皆。それぞれ立ち上がり狩りの再開になる。僕たちは再び素材を集めに周囲の探索に戻っていく。全ての素材を集め終わって帰還するのは、それから2時間ほどたった後だった。




