40-01 【日常の中で】 Ⅰ
総合評価が17000になりました。
この様な拙いお話を見て頂けるのはとても嬉しいです。
仕事や都合、モチベの関係上毎日投下の為、1話が短くなりがちですが
これからも楽しんでもらうために頑張ります。
色々突っ込み所や可笑しい部分があると思いますが
それを直してどうこうする技術や時間が全然足りませんので、とりあえず普通に投稿を続けます、色々為になる感想はとても嬉しいです。
単純に罵倒だけの感想も結構ありますが、私はプリンメンタルなので結構辛いです(汗 鋼の精神力が欲しいですね。
―ホープタウン フィールド
ギルドを結成して早一週間ほどは既に過ぎている。
現状は仲間が増えた以外に特にギルドとしての活動は無く、それぞれがギルドメンバーを探したり、そのギルドメンバーが集まるギルドハウスなどを建設する為にホープタウンの開いている土地を探したりと、各自のんびりとやっている。
僕は僕で知り合いの冒険者に声をかけてギルドメンバーを探し数人ほど集めることが出来た。出来たばかりのギルドで集まる場所も無い現状では人なんてあまり集まらないと思っていたが、ウォルクさん兄弟やノーヴァ君は直ぐにメンバーになってくれたのだ。ウォルクさん達は渡りの冒険者だったので、そろそろゆったりしようとしていたらしいから、まさに渡りに船だったようだ。ノーヴァ君は単純で、ギルドを此処に設立するなら、いつでもメンバーとダンジョンアタック出来る利点は見逃せないとの事です。
カトル君達は…今まさに一緒に依頼をやっているんだけど、断られた。ギルドが嫌なんじゃなくて、実力的に下位の自分達ではまだまだ甘えてしまうだろうからと言うちゃんとした理由だ、それ以外にも何かあるらしいが、敢えて聞いてない。僕達は既に友人と言う間柄になっているが、踏み込んでいい場所とダメな場所位は流石に分かるようになっている、これもまた成長だろう。
今はフィールドで素材集めの依頼を受けている、受注者はエリスさんでファングラビットやハウンドの皮等を求めているそうだ。それらの皮は革製の防具を作るには最適な素材でレベルが低い頃にはとてもお世話になる。
僕も鍛冶見習いとして武器を作る他に防具等も自分で作るようになった。親方は多才で基本は武器しか打たないが、僕が冒険者である事等を加味して、教えてくれるようになったのだ。お陰で鉄位の防具までなら今の僕でも作れるようになっている。流石にエリスさんの防具屋で売っている防具にはとても追いつけないが、最低限の能力は発揮できているとほめてもらったのが嬉しかった。
「せりゃああああああっ!!」
攻撃を外したたらを踏んでいるハウンドに猛スピードでフィル君が突撃した。横っ腹に勢い良く槍が突き刺さり、その威力のままチャージアタックの様に走り抜け槍についた血を振り捨てる様に槍に突き刺さったハウンドを地面に投げつけた。数回バウンドし、ピクリとも動かないのは既に死んでいるのだろう。証拠にゆっくりと消え素材がドロップされている。
直ぐ近くには水に濡れて鱗粉が使えなくなったパライズモスと痛烈な連続蹴りを浴びせているカトル君の姿がある、アコライトのスノゥちゃんから支援魔法を貰い攻撃力の上昇した一撃、いや二撃は羽をボロボロにし二発目の斧の様に地面に叩きつける蹴りで地面に叩きつけれる。それでもまだ生きているのか必死に藻掻いているが、斃されるのも時間の問題だろう。
他に居るパライズモスにはコリーちゃんがにまっとした笑顔で魔力を帯びた水瓶を投げつけていく。脆いガラス製の水瓶が胴体に勢い良く命中し割れた中身を浴びていく。
「ほいさっ! こいつまおまけだよっ!」
あっと言う間にパライズモスの後ろ側に走りより後頭部を左腕で軽く押さえながら右手を前の方に回した、その手にはいつの間にかナイフが握られている。
「【喉裂閃】!!」
技の発動と共に手に持っていたナイフが黒いオーラを発しパライズモスの硬い胴体を溶けたバターに滑らすような軽さで頭部を引き裂き跳ね飛ばす。あまりの鮮やかさに見惚れてしまいそうな一撃だ、フィル君達の様な激しさはないが暗殺者の様な鋭い一撃は他の皆と較べても謙遜無い程の実力を持っているのが見て分かる。
普通に攻撃しただけでは、と言うか回りこんで触ってしまえば鱗粉を間近で吸う事になってしまう。それを防ぐ為に先に濡らしてから攻撃する、基本といえば基本だが、それをこの一瞬で行うのは難しい。
「ヤスオ! 支援よこせ支援!!」
「わかってる! 全員に祝福を!! 【祝福鐘】!!」
―ヤスオは【祝福鐘】を唱えた!!
―味方全体の【力】【速】【器】が+2!
両手を組み、祈るような体勢を取りながら魔法を唱える。
聖属性魔法【祝福】系の中級魔法、【祝福鐘】だ。範囲内の味方全体を対象にして発動できる強力なバフで、効果時間もそこそこ長い。しいて言えば単体にしようする【祝福】よりは効果量が落ちるのと消費MPが馬鹿高いのが難点だ。
隣で弓を構えていたミキを始めとして自分を含めた全員のステータスがある程度上昇する。
「うーし、喰らえっ! 【流星】!!」
一条の閃光と化した矢がハウンドの眉間に深々と突き刺さる。
激痛に悶える事も出来ずにもう一体のハウンドも消滅し、周囲に居たモンスターはこれで全て撃破完了した。
…………
「ふぃー、お疲れ。こりゃ楽でいいわ、お金にはなりそうもないけどね」
「いいじゃないこれも経験よ。ヤスオさん達もお疲れ様」
大体の素材も集め終わり開けた場所で休憩を取っている、今回カノンが来ているのは、万が一ブラウンベアーが来た時の対処だ。それ以外は基本的に後ろで全体を把握してくれる事になっている。彼女も手伝ってくれれば確かに早いのだが、それではカトル君達が成長しないと言う事で、敢えてこうしているらしい。
その代わり特に報酬はもらうつもりはないそうだ。
何というかプロ根性みたいなものを感じてしまうな、僕もカノンの様に人を導けるような人間になれるだろうか……ま、しばらくは無理だろうな。
「いやぁ助かりました。ミラもレティカもその、女性の日で…長期の依頼を受けるときは気をつけないと」
女性の日……あぁ、そうかそういう事か。辛いって言うしなぁ…ミキやカノンも女性である以上、それがあるから狩りやダンジョンアタック出来ない事だってある。アリアちゃんは軽いのか全く問題ないらしく、その時はよく一緒に狩りに行く事もある。
「あー、重いやつはきついよな、私も分かるわそれ」
「よくわからないけど、お大事にな? 所でハウンドの皮30、ファングラビッドの皮20納品だっけ? これでハウンドは集まったよな? 後はウサギだけか?」
「そちらは後5枚ほどあれば揃いますね、皆さんありがとうございます」
スノゥちゃんが嬉しそうに答える。
納期が実は近かったらしく、ミラちゃん達も出ようとしていた所をカトル君が厳しくダメだと言ったらしい。うん、カトル君はグッジョブだ。これでどこかおかしくしたら大変だし、何かあれば手伝うのだから僕達が手伝えば問題ない。
「それにしても弓を使えるのは羨ましいなぁ…ミキも弓使えるし、コリーちゃんは短剣と弓を器用に使ってるしね、遠距離物理攻撃が出来るのはいいよね」
弓をやってみた所、どうにもまっすぐ飛ばないのだ。狙いをつけても変な方向に飛んだり地面に突き刺さったりとかで、大凡戦闘に使うには無理があり過ぎたのでやっていない。元々不器用だから、弓が致命的に下手なのかもしれないな。流石に真後ろとか真上に飛んだ! とかそう言う漫画っぽい展開はありませんでした。
「あたしゃホッとしてるよ。そんな剣に魔法に変身に、弓まで使えたらとんでも饅頭になるでしょ」
「誰が饅頭だ誰が」
「顔が」
「ふふふふふふ…」
「うふふふふふ…」
バチバチと火花が散るほど睨み合う僕達、喧嘩していると言うかこれが最近の僕達の普通だ、悪友ってのはこんな感じなんだろう。この世界に来るまで友達なんて出来た事無いから、行き過ぎないように注意しないとなぁ。
「そういえばカノンさんついに中級なんですよね。おめでとうございます、ヤスオさんも後1レベルでしたっけ?」
「あら有難う。そうね、ヤスオさんはレベルだけ足りない感じよ。少し前の私と同じ感じかしら」
「そして俺は現在【レベル9の壁】に到達だ。ぜんっぜんレベル上がんねーの。ハウルが冒険者やめたのもここから来てるんだろうな」
フィル君のレベルも9まで上がっている。ここから10になるのが大変な様で、かなりモンスターを倒しているが全くレベルが上がらないのが現状だ。
「レベル9の壁は面倒なのよね、今まで倒していたモンスターでは経験値にならない事もあるし、単純に次のレベルに上がるまでの必要な経験も高いのよ」
「もうスモールベアとかじゃ倒しても何も無いんだよなぁ…ウサギやハウンドも同じだ。パライズモスやヴァイパー、ダンジョンならゾンビとかを倒して漸く少し上がる位だぜ」
「うわぁ…しんどそうだね。うちのカトマンドなんてもうすぐ9になるから似たような苦労に」
「誰がカトマンドだ誰が」
弱い敵では経験にならない、これが結構辛い所で安定してレベルを上げるって事が出来なくなるのがレベル10に上がるまでの大変さを表している。今まで弱い敵でもレベルが上がっていたのに、10になるためには戦うには大変なモンスターを数多く倒していかなくてはならない、戦うための力量が上がるという利点はあるが、経験値は微々たるものしか増えていかない以上、レベル以上に本人の戦闘スキルが求められる。それが出来なければ死ぬか、諦めて引退するって事になる。だからこそ強い冒険者と言うのは全体の半分にも満たないそうだ。
全体の5割が下位冒険者で3割が中級冒険者、残り2割の内、1,5割位中級上位…つまり16~19までの冒険者で、上級冒険者は1割にも満たない。冒険者になる総数が多いからそこまで少ないなんて感じる事は無いらしいけど、やはり強者はそこまで居ないのが現実だ。
「早くヤスオ達に追いつきたいんだけどな、悪いなヤスオ足手まといのままで」
「大丈夫! フィル君もあれから幾つか技閃いてるし大事なアタッカーさ」
と言うかトランスブーストで変身しても突破力はフィル君と同等位だからとても頼りにしている、カノンやアリアちゃん、中級魔法を覚えた僕と魔法がメインの僕達のパーティだから、フィル君やノーヴァ君の様な物理特化のメンバーはこれ以上なくありがたい存在だ。
「おい、私にも触れろよ?」
「まだ8れべるのミキさん、なにかごようですか?」
「くんにゃろぉ~」
僕とミキの掛け合いを見て笑っている皆。気の知れた皆と一緒に居るというのはとても心が満たされていくものだ、どうにも僕はそういうのに強く憧れていたようで、何の気ない普通の話をしていても唐突に目頭が熱くなる事が多い。ほんと…僕にはもったいない仲間や友達が出来た。
「あ、そういえば知ってます? 最近ホープタウンの近くに新しいダンジョンが見つかったって。あのダンジョン復活騒ぎの折に自警団の人が見つけたんですよ」
新しいダンジョンが見つかったというカトル君の言葉に僕達は身を乗り出していく。




