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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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38-08 【勝利と大騒ぎの中で】 Ⅰ

 意識が覚醒していく。

 ゆっくりと目を開き起き上がると、そこはもう見慣れた自分の部屋だった。


「夢……だよ、な」


 ぼーっとしている頭の中では、さっきまでの戦いの風景が根強く残っている。一度確かに死亡し、それをスキルの効果でキャンセルして立ち上がりケルベロスに立ち向かって、それでも結局倒す事は出来なかったが、アルスさん達の到着には間に合ったんだ。


 倒せなかったとは言え、僕達に下級クラスにしては頑張った方だと思う。


「おっはろ~♪」


「うわっ!? び、びっくりしたぁ!?」


 いきなり真横から声を掛けられてビクッと身体が飛びはねてしまう。

 慌てて声がした方を振り向いた。


「ほっほっほっ。空気を読まずに私の登場~♪ え? 普通ここはヒロインとか妹とか? しらねぇなぁそんなこたぁ♪」


「コ…コリーちゃん、びっくりしたよ」


 振り向いた先にはニマニマと口に手を当てて笑っているコリーちゃんが居た。

 その後ろには椅子に座って煙草…じゃなくて、胃薬を吹かせているイクスさんや微かに微笑んでいるノーヴァ君の姿も見える。


「お、元気だね。流石に2日も爆睡してりゃ元気になるか。どっかおかしい場所はないかい? と言っても、俺じゃわかんないけどさ」


「やぁ、おはようヤスオ。君が一番遅く起きたよ。まったく心配かけさせてくれるね」


 軽く言われた言葉だが、二日間まるまる寝ていたって所に驚いてしまった。


「ぼ、僕って二日間も寝てたんですか…? あんなのマンガやゲームの話だとばかり、まさか自分が体験するとは」


 それだけの激戦をしてたからありえない話じゃないな。

 丸2日も寝ていたとか…


「あ、あの所で、アルスさん…達は?」


「あ、君のパーティやアルス君達は今なら広場辺りにいるよ、君の事は俺達が持ち回りで見てたんだ。昨日目覚めてたらティルちゃんがドアップだったのにね」

 

「おやおや、私では不服ですかにゃ?」


 身を乗り出してセクシーポーズの様なものを取り始めるコリーちゃん。

 しかし、圧倒的に色々と色気っぽいものが足りない気がする、どちらかと言うと。


「いや、いいんじゃない? ロリも」


「ずばっと言ったぁ!?」


 イクスさんがコリーちゃんを上から下まで軽く見つめた後、胃薬を吹かせてそういった。コリーちゃんは18歳なのだが、身長的には僕並みに小さく童顔ななので綺麗というよりは可愛らしいという印象を与えている。普段の服装はそれに合わせているのか、大人の女性ものよりは子供が着るような可愛い服を好んで来ているのもあり、それが拍車をかけていた。


「何にせよ間に合ってよかったじゃないか。今日の夜は皆で打ち上げだからね、町民や冒険者総出でやってる。君も動けるなら行ってみるといい」


「打ち上げ…かぁ、なんか楽しそうだね」


「ミキやカノン、フィルにアリアもそっちにいるからね。参ったよミキとフィルは君が目覚めるまでずっと此処にいようとしたから。カノン達が引きずらなきゃ、倒れてる人間が二人増える所だった」


 フィル君達も心配してくれてたのか、何気にミキが離れなかったって所に驚きがあるが、僕にかまけて折角のお祭りみたいなものに不参加なのはもったいない、カノン達はグッジョブでした。


「これが三角関係かっ!」


 コリーちゃんが、それはもう嬉しそうに訳の分からない事を言っている。


「紛らわしいから変なコト言わないでくれ」


「すんませーん」


 すかさずノーヴァ君から突っ込みが入った。うん、キレがいいね。

 手を上げて反省した様子を見せるコリーちゃんが、僕に向かって前回の戦いの事を聞いてきた。


「いやぁしかしすっごいねぇ。分身とはいえ中級クラスのボスに善戦したんでしょ? ぱねぇっすわ、キャトルンの読みは当たってたね。ちょいと私達しごいてくれない? 実戦で」


「いやいや、あれはこっちのボロ負けだから。でも、皆が頑張ってくれたから生き残れたんだよ。マジで綱渡りだったし」


 あれは善戦したというより、運が良かったのだと思う。

 実力的にもまず僕達はあいつの足元にも及んでいなかった、フィル君の渾身の一撃だけが、あいつに深いダメージを負わせられた位で、僕の攻撃を初めノーヴァ君やカノンの攻撃がほぼ効いていなかったし。


 何よりも攻撃を受けたらほぼ一撃っていう時点で色々終わっている。

 攻撃力も防御力も、回復力も何もかも足りなかった、どうしてこれで生きているのかが逆に不思議だ。アルスさん達の後方支援とはいえ、自分達が戦いに巻き込まれる可能性も考えなかった訳じゃないが、予想外過ぎたのも確かだよな。


「強くならないと、なぁ」


「まだまだということだね、僕もヤスオも皆もさ。今回レベルが上って中級を名乗れるようになったけど、正直まだまださ、もっと強くならないとね。これからも頼むよ」


「おぉ…! おめでとうノーヴァ君! 此方こそよろしく頼むよ」


 ノーヴァ君が言うには、あの戦いで一気に皆のレベルが上がったらしい。カノンとアリアちゃんも今回で漸く中級レベルになれたそうだ。フィル君やミキもあの戦いでレベルが沢山上がった様だが、ミキの場合はレベルだけ上がった感じなので、後ほどアルスさん達が色々教えてくれるらしい。羨ましいな…それは。


「うん、そんだけ動けりゃ大丈夫だね。俺はちょっと町長の所に行ってくるよ、君のこと心配してたからさ」


「すみません、ご心配おかけしましたと言っておいてもらえますか?」


「あいよ~」


 イクスさんは胃薬を吹かせながら一足先に家を出て行った。

 身体をゆっくりと起こしベッドから起きる、少しふらふらしたが痛み等は無いので単純に寝すぎなのだろう。


「さて…僕もシャワーとか浴びたら広場に向かってみるとするよ。二人はどうするんだい?」


「実はこの後ナッツにヘルプを頼まれててね。資材の運び出しだよまったくこういう時もこき使うんだから」


「あー、ノバちんナッツさんの所に住んでるんだってねぇ」


「ま、どうせ広場に酒とかを持って行くんだろうさ。ナッツ自身楽しみにしてたしね。たまには手伝ってあげないと。それじゃあ二人ともまた夜にでも」 


 軽く手を上げて自宅である雑貨屋に帰っていくノーヴァ君。

 なんというか、こう…僕より大人だよなぁ。


「渋いねぇ、あれで私と同い年だって言うんだからぱねぇっすわ。相棒にいい感じかも…ほんじゃ、ヤスオさんも目覚めたことだし私も行くよ。また夜にね~♪」


「うん、忙しい中ありがとう」


「いやいや、コネ作りっすよ旦那、んじゃね~」


 ぴょこんと飛び跳ねてノーヴァ君に付いて行く様にコリーちゃんも出て行った。


「たくましいなぁ…さぁて! それじゃ広場に行って見るかな!! あ、その前に親方とセレナちゃんに会いに行かないと、怒られるかなぁ…」


 さて、準備を整えよう。



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